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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
弐章 勇者様の憂鬱─囚われの幼なじみの救い方─
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二十六話 勇者との別れ

 ***


 デュグライム邸崩壊事件から三日経つ。


 私はルドベキアの宿で荷物をまとめつつ、ここ三日のことを思い返していた。

 本当に色々では片付けられないくらい、色々とあったわ。


 逃げ出すまでは良かった。

 でも、そのあとが大変だった。

 ドラゴンを見た街の人たちがパニックになったり、パニックになりながらもみんなで力を合わせて消火活動したり、デュグライム邸に生えていた花が良くないもので引火してその煙を吸った人がおかしくなっちゃったり。


 まあ、その辺はあの天使様や魔王陛下がいい感じに権力を発動させて有耶無耶にしたり、対処してくれたおかげで、事態は収束した。

 一応、魔王も魔王だったらしい。


 さて、デュグライムの悪事が暴かれたかというと、全てが分かるまでは時間がかかるそうだ。

 無理もない。

 証拠らしい証拠のほとんどが燃えてしまったり、瓦礫の下に今も埋まっているのだから。

 とはいえ、逃げ出した人の証言や、私たちが撮った写真があるから、ひとまず、人身売買と誘拐の罪を問うことはできるらしい。

 燃えた花のこともあるし、他の悪事もおそらくたんまりとあるはずだ。

 証拠が見つかり次第、裁かれることになっている。


 因みに、私はカメラと謎の小瓶、持ち出せた書類を天使様に預けた。

 天使様は持ち前の笑顔で受け取ると、「これで少なくともあと2つか3つくらいデュグライムの罪が増えそうですね」と言っていた。


 うん。

 これで暫くデュグライムも牢獄から出てこれなさそう。

 ジェスカちゃんの身も安全ね。


 そうそう。

 フローラちゃんとラウラちゃんは母親と再会して、父方の親戚であるドラゴンたちと住むことになったと昨日、挨拶に来てくれた。


 他の逃げ出した人たちも家族の元に帰ったらしい。

 これを機に隔離地域は閉鎖になり、帝国に戻った家族も多いとか。

 売られてしまった人たちはデュグライムの屋敷が壊れてしまったことによってなかなか全員探すことができていないけど、教皇庁と帝国で力を合わせて探すことになっている。

 おおよその決着はついた。


 では、事の発端となった勇者様たちの方はどうなったか。

 実は、今日、ジェスカちゃんとのお別れの日だったりする。


 扉をノックする音がした。

 ジェスカちゃんたちだ。


 私は二人を迎え入れた。


「お姉様、ありがとうございました」


「世話になったな」


 リザルトも、ジェスカちゃんも、二人とも自分の村に帰るらしい。

 暫くしたら、天使様から呼び出しがあるそうなのだが、天使様のやることが多すぎて時間がかかりそうだということで、帰ることにしたというのだ。


「そういえば、その剣はどうするの?」


「あ、なんかもらっちゃいました」

 ジェスカちゃんはいい笑顔でそう言った。


「この剣、条件が厳しいみたいで、高度な魔法が使える人間の女性じゃないと使えないんだよ。伝説の勇者とやらが、女で魔法使いだったから。しかも、これ、剣じゃなくて杖なんだって。剣としては使えないんだって。通りでみんな抜けないわけだよ」

 リザルトは項垂れる。

 そうよね。

 頑張って抜こうとしていた剣が、剣じゃなくて杖だったなんてちょっと気の毒だ。


 しかし、さすがリザルトさん。

 欲しいときに適切な解説をしてくれるわ。

 ヘタレだけど嫌いじゃないわ。


「すごい杖なんですよ! これを持つようになってから無詠唱で細かいところまでイメージ通り魔法が使えるようになりました。せっかくですし、これからどんどん使わせていただきますわ」

 ジェスカちゃん、ちゃっかりしてるわ。


「あのさ、スクルドはこの後どうすんの?」


 おい、年上を呼び捨てにするのはやめようか、リザルト。

 私は少し苛立ちながら、「冷静に」と頭の中で呟く。


「もしもよかったら、ワタクシたちの村に来ませんか? お礼もできてないですし」

 お礼なんて気にしなくていいのに。


「ありがとう。でも、今回は遠慮しておくわ。私は魔王についていこうと思うの」


 ジェスカちゃんたちが生まれ育った村は気になる。

 行ったらきっと楽しいだろう。


 でも、私にはずっと気になることがあった。

 魔王が私に隠していること。

 両親を殺した犯人のことだ。

 魔王と同じ顔のあの男。

 魔王は犯人に心当たりがあると言っていた。

 こうやって騒ぎが落ち着いてみると、そのことばかり考えてしまう。


 それを聞くまでは魔王から離れられない。

 こうなったら嫌がられても何が何でも魔王について行くしかない。


 魔王以外の復讐相手がいるのなら私はそいつに復讐してやりたい。

 それが、それだけが今の私の希望だ。


「そうですか。じゃあ、お手紙を書きますね」

 ジェスカちゃんは残念そうだったが、すぐに笑顔になる。

 そして、白い封筒を渡してくれた。


「これは?」


「住所が書いてあります。お姉様もお手紙書いてくださいね」


 そう言ってジェスカちゃんと笑顔で別れたのだった。


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