3.名前は
暴れる2匹がいなくなったことでなんとかひと段落して落ち着いてきた。
(とりあえず扉しめよう)
開けっ放しだと厄介ごとが次々と入り込んできそうで落ち着かない。
「キィーーー、バタン!」
「ギャ・・・・」
扉が閉まる音に反応し、中央の窪みの中から声が聞こえる。視線を向けるがそれは、
(あっ、ひどい傷!どうにかしないと!)
傷だけではなく衰弱もひどく、扉の閉まる音に反応したものの、結局うずくまったままで今にも死に絶えそうな状態だった。
□ □ □ □ □
名前 1720233
種族 ゴブリン
状態 出血(重症) 疲労 空腹
レベル 1
HP 2/20
スキル 魔族言語LV3
人族言語LV2
□ □ □ □ □
(なにか、なにかできないのかな)
私の思いに反応するように視界中央にその文字が現れた。
『《癒しの力》を使用することで対象の<出血(重症)><疲労>状態を解除し、HPを全回復できます』
『合計で63GP消費します。よろしいですか?』
(よくわからないけどそれでこの子が助かるのなら!)
そう思った瞬間視界の右上の方に色々と文字と数字が表れその中のGP100と書かれたところの数字が減っていき
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名前 Noname
耐久度 897/1000
清潔度 43%
環境 やや不快
GP 100>37
特殊機能 無し
△ △ △ △ △
数字の減少が止まった瞬間、体が青い光に包まれる。
「グギャ?」
しばらくすると光は収まり、そして怪我がすべて直り、表情も活気が戻った。
(よ、よかったぁ)
しばらく自分の体を見たり、動かしたり、周りをきょろきょろ見渡したりした後、私の視線の真下の台のところまで来て、
「ギャ・・」
台に向かってお辞儀した。
(おお!すごく礼儀正しい子!)
その後窓から外を眺めたり藁葺の天井を珍しそうに眺めたりとまったりと過ごしてくれている。
3日間孤独だったのも影響して家に迷い込んだかわいい子猫や子犬のように一瞬で愛着がわいた。
(そういえばこの子怪我以外に何かあったような)
ふと気になり、じーっと、観察するように見つめる。白い枠が付き、
□ □ □ □ □
名前 1720233
種族 ゴブリン
状態 空腹
レベル 1
HP 20/20
スキル 魔族言語LV3
人族言語LV2
□ □ □ □ □
(そうそう、空腹。お腹が空いてるんだね)
確認して、さて、よし!と思ったが、
(んー、何かできるのかな?食べ物を出したりとか)
と、心でつぶやくと
『《食糧》を使用します。《食材》を指定してください』
(あ!やった!どうにかなりそう!)
怪我を直したときの文字が再び視界中央に出てくる。
(好きな食べ物とかあるのかな。嫌いなものとか食べ物ってわかってもらえないものとかだと問題)
迷った結果、シンプルに行くことにする。
(おむすび、でお願いします)
『《食糧》<おむすび(小)(塩)(海苔巻き)>を使用します。場所を指定してください』
中央に小さめの青い枠が現れ、視線を動かすと青い枠も一緒についてくる。とりあえず台の上に、と思ったが
(このままだと、台の上に直接おむすびでちゃうのかな?お皿とかついてなさそう)
台も地面同様、土製でとてもじゃないけど食べ物を直接置くなんて不衛生すぎる。と考えてると再び文字が現れる。
『《食器》<皿>を使用します。《材質》《質量》を指定してください』
現れてくれたのはいいけどいろいろ手間がかかりそうな内容。
(う・・・おまかせで!とか無理かな?)
『《食糧》<おむすび(小)(塩)(海苔巻き)> 《食器》<木の皿(小)>を使用します』
丸投げしてみたらうまくいきました。
『合計で13GP消費します。よろしいですか?』
(はい。お願いします)
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名前 Noname
耐久度 896/1000
清潔度 43%
環境 やや不快
GP 37>24
特殊機能 無し
△ △ △ △ △
緑の光の中から木皿に乗ったおむすびが現れる。
(小さい・・・たぶん足りないよね。後2個追加でお願いします)
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
名前 Noname
耐久度 896/1000
清潔度 43%
環境 やや不快
GP 24>18
特殊機能 無し
△ △ △ △ △
木皿の上にさらに2個おむすびが乗せられる。
「ギャ?」
台の上で光ったりするのに気が付き寄ってくる。おむすびを見た瞬間、目を見開いた。しかしすぐには手を出さず、見つめている。
(おお!待てができてる!賢い子!食べてもいいんだよ!)
私は食べてもらいたく、おむすびを前に押し出す。実際手はないので押して出すことはできないけど念じた事で木皿が動いてくれた。
「ギャ」
台に向かってお辞儀をした後、おむすびを手に取って食べてくれた。一口含んだ瞬間一瞬固まり、その後ものすごい勢いで食べ始める。若干涙ぐみながら。
(よほどお腹が空いてたんだね。何日か何も食べてなかったのかな。おむすび出してよかった)
食べっぷりをしばらく眺めていると、あっという間に全部食べ切った。そして深々と何度もお辞儀してくる。
その後、何とか恩を返そうと思ったのか投げ込まれた石などを窓から捨てて掃除を始めた。
そうこうしているうちに日が暮れやがて夜になった。掃除もあらかた終わったらしく、そのまま壁際で横になり眠り出す。
(初めは見た目怖かったけど礼儀正しいし、見慣れると寝顔もなかなかかわいらしい)
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名前 1720233
種族 ゴブリン
状態 平常 睡眠
レベル 1
HP 20/20
スキル 魔族言語LV3
人族言語LV2
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(そういえば何で名前が数字なんだろう?呼びにくい)
文字を眺めていく。
(うん、名前を付けちゃおう。種族ゴブリン、犬とか猫とかいう意味だよね。ポチ、タマ、だら・・・・
ゴブ?ギャ?・・・・・うん、全然かわいくない)
しばらくいろいろ考え、
(ゴブリーナ、ゴブレオン、ゴブコフスキー、ゴブエモン、ミッキーゴブス)
長考し、迷走し、
(ゴブ助、君の名前はゴブ助)
シンプルに収まりました。
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名前 ゴブ助
種族 ゴブリン
状態 平常 睡眠
レベル 1
HP 20/20
スキル 魔族言語LV3
人族言語LV2
□ □ □ □ □
私が決定すると名前の方が勝手に書き換えられた。
(私が名づけの親。頑張って守っていこう)