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RPG風の世界で、色々みなさん頑張ってる物語

食卓の錬金術師 ? -”呪われました”の6作目-

作者: 茶屋ノ壽

大きな地下空間に作られた講堂?で、講義が開始されます


 ”怪物”を倒すとそこにはおよそレベルに応じた大きさ、性質に応じた色の”水晶”が残ります。その水晶はスキルを使って様々なものに加工する材料に変化させることができます。

 材料に変化させるスキルの名称は”錬金術”とも言いますが、名称自体はどうでもよろしいのです、つまるところ、”水晶”を素材に転換させることができれば名称なんて”調律”でも”元素転換”でもなにも問題はありません。大切なのは、中身なのです。

 大きな建物くらいの巨体、黒色の竜の人、(名前はヤミさんといいます)が黒板に”見えない手”で動かした白墨で板書していきます。生徒は10歳くらいの少女で、机と椅子がセットになった所に座ってノートを取っています。講義は続きます。

 そもそも”水晶”というのは、可能性の視覚化されたものなのです。この世にある物は、全て小さな粒を単位として構成されています。それは、目に見えないどころか、可能性として存在するとしか定義できない程の粒です。その粒の組み合わせで、物はできているのです。

 ”水晶”はその可能性でしか論じることができない粒を、視て操るようにできるよう、整えられた素材なのです。もちろん視て操るにはコツが必要ですが、そもそも人の能力では直接操作することが不可能であった最小単位を、限定ではありますが干渉できるようにした、現象なのです。

 この”水晶”の成り立ちは不明です。とある”システム”の結果とも、”自然界の物理法則”とも言えますが、なぜそうなるのかは、解明できていません。私たちは現象を利用しているだけなのです。

 さて、”水晶”から各種材料を作るといいましたが、その過程を飛ばして、”水晶”から完成品を作ることも出来ます。ただし、要求される想像力が材料を作りだすそれと比べて桁違いなので、そちらを選択する作業者は少ないです。

 また、一度材料、つまり加工しやすい形に変化させておくと、”スキル”を使わなくとも、工作が出来ますので、便利という側面もあります。

 では、実際に”水晶”から材料へと変化させてみましょう。


 大きな竜の大きな手、子供の身長くらいある手です、の上に黒色の水晶が浮かんでいます。ポンという乾いた音とともに、それが直方体の金属塊に変化します。


 これが、”スキル”を使った材料化です。ある程度自動化されているので、特定の方向性を持つ”水晶”を一定の材料に変化させることが簡単にできます。まあ本当の意味では可能性を視て操作しているわけではないですね。そのへんは”スキル”が自動的に処理しているのです。これを、”水晶”をちゃんと視て、変化させるとこんな風になります。

 続けて変化させた”水晶”は最初のとは色が変わっていました。少し銀色になっています。

 このように、含有させる成分を調節して、特定の”スキル”による画一的な材料ではない物を作ることができます。慣れてくれば、その材料を作るには向いていない”水晶”も無理矢理調整することで、目的の材料をつくることもできます、例えば金属を作るのに向いた”水晶”で、木材を作るとかですね、ただ、疲れるのであまりしませんし、目的にあった可能性を示す”水晶”を手に入れるほうが楽なので、滅多にやりません。

 これらを、加工して、製品を作るわけです。製品を作るには、”スキル”を使って形成したり、そううじゃなくて、一般的に工作を行って、作成したりします。材料と製作するものによって使用する”スキル”が違いますが、まあ、認識の違いと、自動化する内容が違うだけで、基本は同じです。

 

 それで、これが、”水晶”から直接完成品を作る見本です。基本的に、製品に必要な材料を生成しやすい可能性をもつ”水晶”を複数用意します。そして、それを組み合わせて、視てやって、出来上がりを想像して、同時に操作していきます。

 十数回呼吸をする間、竜のヤミさんは集中します。

 はい、できました。

 そこには、小さな金属でできた人形が出来上がっていました。

 間接も動くよ、切れ目もないし。それで、このスイッチを押すと目が光り、音がなります。

 がおーんとか、びかびかーとか擬音が聞こえてきます。無駄にクオリティが高いギミックが満載です。

 それでは、シルフィさんいっしょにやっていきましょうか?


***


「ただいまです」シルフィさんは自分と、”銃”の師匠であるビリーさんという青年と住む、”お山”の住居へ帰宅しました。

 シルフィさんはとある事情(呪いでした)によって死にかけていた所を”銃”の名手であるビリー師匠に助けられ、そのまま弟子入りして、この山で修業をしています。

 ”お山”には定期的に”怪物”が湧いて出てくるので、それを倒して修業をしています。そして、手に入れた”水晶”を山の鍛冶師である巨大黒竜のヤミさんに色々と加工してもらって、各種生活物資を手に入れて暮らしています。 

「おかえりシルフィ、鍛冶屋のおやじに変なことはされなかったか?」

「いえ、別に。講義の後に一緒に”異世界映像映写機”を見てたりはしましたけど」

「……それはそれで、趣味が偏りそうだなぁ」

「それでですね、その映像で美味しそうな料理がありましたので、今晩はそれを再現してみようかと思うのです」と、言いながら帰りがけに仕入れた食材、の”水晶”をごろごろと机の上に出したのでした。


 大切なのはイメージ、想像力です。映写機で見た映像と味の解説を思い浮かべます。コミカルにデフォルメされてはいるものの、材料の描写もしっかりとしていました。いけますね、とシルフィは確信します。

 シルフィにはとある理由(呪い)によって”スキル”は使えませんが、これもとある理由(呪いの副作用?)によってあり余っている、知覚や演算能力に裏打ちされた想像力が、直接可能性の粒子を認識して、可能性の方向性にそって押し進め、創造していきます。

 呼吸を百と少し繰り返す間集中したのち、複数の”水晶”が輝きを増して、変化します。そして輝きが収まった時にそこには……

  陶器で作られた子供の頭ほどの蓋つきの容器で、青いストライプの模様が入っているものが2つ、テーブルの上に鎮座していました。

「さて、容器は完ぺきですね、では中身を確認しましょうか?」

「どれどれ、と、おお!!」

ビリー青年が蓋を何気なく開けると、その容器の中から周囲に向かって光があふれ出て、部屋の中を満たします。同時に甘辛そうな香りがします。

「エフェクトも完ぺきですね」満足そうなシルフィさんです。どうやら、”水晶”を使用して、無駄に視聴した映像を再現したようです。

「料理って光るもんなんだなー」そして、間違った認識をもってしまったビリー青年です。

 中身には、白い粒状の穀物を炊いたものに、黄金色の衣を付けたお肉と、千切りにされた葉物野菜が乗っていて、それに濃い黒に近い茶色のソースがたっぷりとかかっています。

「この白いのは『ご飯』だな、初代のところで食べたことがある」と、”お山”の”神社”の神主さんがごちそうしてくれた、『ぶぶづけ』を思い出すビリーさん。そして、『おてもと』とかかれた袋にしまってある、木製の棒(これも同時に”水晶”から変化しています)を取り出し、縦に裂くように半分に割り、2本にする小柄な青年さん。おなじように、慣れた手つきで木製の棒を割るシルフィさん。

「この食べ物は、お肉と同時に『ご飯』をかっこむように食べるべしという注釈がありました」とシルフィさんは言いました。

「では、遠慮なく」いただきます、と言って、はぐっと、食べやすいサイズに切ってある肉と共に、『ご飯』を口に含むビリーさん。すると、なんと、その口からまた光線が吐き出されていきます!

「よしです!”映像”どおりの効果なのです」喜ぶシルフィさんです。「光るだけで効果の無い”光りの息吹”ですね!」じつは”死に損ない”など穢れがあるものを瞬時に祓うことのできる”聖なる息吹”であることに、気がつく人はここにはいませんでした。

「美味しいですね」

「美味しいな」

その後、ばくばくと食べていく青年と少女さん。食べるたびに口から光りが漏れていきますが、いくらか意識で加減できるようで、すぐに問題ない光量に押さえることができています。肝心の味自体はかなり美味しくできているようです。

「ごちそうさまでした」ほとんど無言で食べ切った二人でした。

「これよいな」ビリーさんが褒めます。

「おそまつさまでした」シルフィさんが照れて言います。「レパートリーが増えました」

「どんどん料理も上手になるな、女の子ってのはすげーな」笑う青年、ビリーさん。

 これを料理というのか?とか、女の子だからって納得するのか?とか、色々なつっこみをいれてくれるような常識をもつ者は残念ながらここには存在しませんでした。


***


シルフィさんの料理レシピメモ


材料


 適当な素材の”水晶”を”怪物”を狩って用意します


 素材としては、最高級の食品へ加工できる種類の”水晶”(適切に変化させると、重病人でも一瞬で健康体になれる薬が製作できるものです)が、お肉用、ご飯用、野菜用、ソース用に各種。

 陶器製の器を製作できる”水晶”(軽くて、強く、熱を通さない……鎧に加工すれば、岩が溶ける温度でも平気なものが製作できます)。

 光り輝くエフェクト用の”水晶”(小型の都市くらいの範囲なら、穢れを高いレベルで祓うことのできるくらいの、”聖なる呪文”の”スキル”の触媒が製作できます)


作り方

 

 こう、ぐわーと、して、がんとして、ざくざくのぱりぱりの、びかびか〜であつあつなのです。それで、あまあまのからからで、ちょいすっぱい!ほくほくのあったかの、しあわせなのですよね。

(シルフィさんのイメージの言語化です……いえもうかんべんしてください)


***


 ”水晶”から各種の、非常識な、格段に高い効果をもつ”アイテム(item)”を、材料の”水晶”の入手の制限のみという縛りで、製作できるようになっているシルフィさん、という事実がそこにはありました。(もちろん、教授してくれた竜の鍛冶師ヤミさんも同じことができます)

 しかし、”お山”に住む住人達は全て、規格外の能力の持ち主であるので、やはりそこ(非常識さ)を指摘することはありません、ので、


 世界は未だに平和でいられるのでした





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