覚理学 序章 および 第三新聞 号外より
中等教育 覚理学
はじめに ボンナ・セミール
ワールの発現がその身に起ころうと、起こるまいとワールについて知ろうとする意志こそが大切であります。
ワール(凝気能)がこの世界において初めて知覚されたのは、今よりおよそ五千二百年から五千年の間であると伝わっております。
現在では信仰が途絶えているレーム教の一宗派の僧にして医師であった 聖祖オイッグ・ロラク導師 によりワールへの道が開かれたとされております。
聖祖のなした偉業は大きく3点に絞られます。
・パースル(虚未界)の発見
・エルゴ領域の知覚
・ヨルト(意識回路)の開発
この内、例え1つでさえ偉業とされるにふさわしい発見であり、発明であります。それを一生のうちに3つを成し遂げたことこそ、聖祖と讃えられる所以であります。
レーム教の教義について詳しく語ることはこの場では控えることとしますが、その一つに内なる宇宙の知覚、と言うものがございました。己の存在するこの世界を広く深く知覚するにあたり、レーム教は知り得る限界のある外の世界に目を向けるのではなく、無限の可能性を秘めた内なる世界の探究に勤しみました。
脳内に構築される意識回路「ヨルト」の原型は、既にレーム教の高位聖職者の秘儀により代々伝えられた技でした。オイッグ・ロラク導師は、それまで平面的なパターンを描いていたヨルトを、右脳、左脳それぞれに立体的なパターンを描くことで、閉ざされたパースルの門を開いたのです。
エルゴ領域は、深淵なるパースル宇宙に点在する未分化のエネルギー領域であり、内なる意識の深部に立つ、マノン(霊門)を通過することによってのみ到達できる領域であり、意識でのみ到達できる領域です。
意識回路であるヨルトは、与構築者、被構築者の双方によって左脳、右脳のそれぞれに構築されなければならないわけでありますが、聖祖のなした偉業に一つ付け加えるとすれば、ヨルトの構築方法を解明し、他者に伝達し、再構築させることに成功したことでありましょう。
・・・・・メイワール(ワールを使用できない者)が生ずる要因としては、先天的なものと後天的なものとに分けられ・・・・
大型正体不明操甲体 王宮より逃走
第3新聞 号外
昨夜0時頃、グワルパ七国第三国の王宮宝物殿より等級、型式、作銘、いずれも不明の大型操甲兵が逃走。
通報を受けた各城壁は警戒を強めていたが、外壁ジョールー門で発見、交戦となった。しかし、ダープ級4体大破、グロウプ級2体中破の末、不明機を確保するにはいたらなかった。その際の戦闘においては死者はないとの行政府の発表。本日午前8時、国境警備隊西方面部隊は、タマラの森へとつながる簡易的な釣り橋が途中で切断されているのを発見。また、崖下には落下したと思われる、操甲体の残骸を確認した、と部隊より発表があった。逃走操甲体の重量に耐え切れず、橋が切断された末、機体は谷底へ落下したと思われる。現在は落下した機体の捜索を継続中。