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アポトーシスで永遠を  作者: 烏川 ハル


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4/4

第4話

   

 霊能遺伝子関連はマスコミでも騒がれるため、専門家は慎重になり、他の研究以上に非公開の情報も多くなっているようだ。そんな中、一部の研究者の間では「霊能遺伝子ホモログ」という言葉も出回っているらしい。

 我々研究者が一般的に論文などの読み書きで使うのは英語だから、そちらで表記するならば、Psychic Occult Gene Homologs 。「 Homologs 」の部分だけは、日本語でもそのままカタカナで「ホモログ」としてしまったが、辞書を引いたらおそらく「相同性が云々」みたいな、かえってわかりにくい説明が載っているに違いない。

 俺も厳密な直訳というよりニュアンスで理解しているが、俺たちが使う場合には「別の生物が持っている遺伝子だけれど、同じ機能に相当する遺伝子」みたいな意味合いだ。

 今回の霊能遺伝子群の話で言えば、霊能遺伝子群は霊能力者云々に関わる遺伝子なので当然、元々ヒトで発見されている。しかし実は似たような遺伝子が動物の脳内にも存在するという話であり、これが Psychic Occult Gene Homologs ――霊能遺伝子ホモログ――と呼ばれているのだった。


「これが同定されたら、今以上に研究人口も増えるはずだ。動物実験も容易になるからね」


 確かに、ヒトだけが持つ遺伝子ならば、培養細胞レベルの基礎研究は簡単だとしても、実際の生体を用いる実験は人体実験となり、なかなか許可も下りないはず。研究を進めるには、大きな困難を伴うが……。

 一方、霊能遺伝子群に相当するものを動物も持っているならば、その動物を実験動物として扱える。その場合、研究は飛躍的に発展するだろう。

 しかし「飛躍的に発展」してからでは遅い。今のうちに霊能遺伝子ホモログで動物実験を始めておけば、霊能遺伝子ホモログの同定が正式に発表された時点ですぐに、こちらはそれを用いた研究論文も報告できるはず。

 ヒトの霊能遺伝子群の研究では乗り遅れた感もあるが、同じ轍は二度と踏みたくないに違いない。そんな思いが、ボスの言葉からは感じられるのだった。



 こうして、霊能遺伝子に関する俺の研究が始まった。

 まずは、これまでの研究論文を色々読んでいくと……。


 先ほども述べた通り、霊能遺伝子群―― Psychic Occult Genes ――というのは、霊能力の高い人々の間で特異的に活性化されている遺伝子の総称。だから実は、色々な遺伝子が含まれている。その中でも多くの研究者が注目しているのが、九番目に報告された遺伝子であるPOG9だった。

 例えばウイルスに感染すると生体側ではウイルス排除のために免疫活動が活発になるけれど、だからといって感染細胞内で活性化された遺伝子の全てが免疫に関与しているとは限らない。副作用的に活性化されただけ、という場合もあり得るのだ。

 それと同じで「霊能力の高い人々の間で特異的に活性化」という条件を満たすが故に霊能遺伝子群として扱われているものの「これは霊力上昇とは無関係ではないか?」と考えられるような遺伝子も存在する。

 逆に「これが霊力上昇に関与しているらしい」と示唆するデータが数多く出てきたのがPOG9であり、だからこのPOG9に関する研究が進んでいる。

 それがこの研究分野の現状だった。

   

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