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始まりと旅立ち

   「私」を探して――

私が何者なのか、それを知りたい。


  【プロローグ】




 時は明治時代。異国から開国を迫られ、国内では開国派と鎖国派で意見が対立していた。しかし、開国派が無理やり国を開いた事により、鎖国派は日本の西側を「和の国」と名付け、独立国として日本の西側だけ鎖国したままとなった。

 一方、開国派も日本の東側を「洋の国」と名付け、異国の国と盛んに交流をし、日本の伝統的な文化と異国の文化を混ぜ合わせた独自の文化が発展していった。

 日本の西と東で溝深めたまま時が過ぎ、二三○○年。

 西と東の間にある愛知県、長野県、岐阜県。この三つの県が連合し第三の国「中立国」と名乗りだし、西と東の緩衝地となり、ここで異文化交流が行われるようになっていたがまだまだ西と東には深い溝が残っていた。

 古来から日本人を悩まさせられている謎の生命体、「ヴァンプ」は人間に危害を加え、時には呪いをもたらし、また、ある時には死をもたらす、厄災だった。

 和の国と洋の国、中立国は協定を結び、「お互いの国に大厄災が発生した場合、不干渉条約を無効化し、戦力を惜しみなく派遣させる。」と取り決められた。

 しかし、十年前の二二九○年。和の国の首都、京都で大厄災が発生したが、洋の国からの援軍は無く、甚大な被害が出てしまった。

 これにより、和の国と洋の国は決裂し、中立国は仲を取り持とうとしたが、より一層仲を悪くさせるだけで、両国から嫌悪の念を向けられることになってしまった。


 これは、日本という国が三つに分断され、ある一家が目まぐるしく変わる世界に翻弄され、自分の存在を探す物語。




[用語集]




【和の国】


 日本の西側にある国。首都は京都都。和の国と言うだけあって、平屋が多く、木造建築が広がっている。首都には大きなお城が建っており、その城から和の国を見渡せるそう。和の国の者の多くが、保守的で、余所者には厳しい。家柄や血筋を重んじるため、生まれた家でその子の将来が決まってしまう。ヴァンプを退治できるのは、呪力を持つ、呪術師の家系に生まれた者のみ。




【洋の国】


 日本の東側にある国。首都は東京都。洋の国は木造建築とレンガ造りの建物があちこちに散見され、二、三階建ての建物が多い。首都には大きなガラスのビルが建っている。洋の国の者の多くは、革新的で、新しいもの好き。基本的には、余所者にも優しいが、敵にまわすと和の国の者よりも恐ろしい。実力主義で、家や血に頓着しない。ヴァンプ(霊)を退治するためには、フィメールが作った特別な武器を用いて、誰でも退治することが可能。




【中立国】


 愛知県、岐阜県、長野県の三県からなる国。首都は愛知県。和の国の者と洋の国の者が多く存在するため、混血の子が出来てしまい、和の国と洋の国の火種の元となってしまう。中立国の多くは、空気を読むのが上手く、引っ込み思案が多い。ヴァンプを退治するためには、和の国の呪術師に退治してもらうか、洋の国の者に退治してもらうことのみ。




【霊•ヴァンプ】


 謎の生命体。人間に厄災をもたらし、最悪死に至らしめることも。昼夜問わず、人間界に発生し、民間人を襲う。和の国では霊と呼び、洋の国ではヴァンプと呼んでいる。




【大厄災】


 十年前、和の国の首都で起き、霊が大量発生し甚大なる被害をもたらした。死者は十万にものぼり、建物も大破した。呪術師の名家の一族が全滅しかけた。




【不干渉条約】


 三つの国が結んだ条約。この条約にはヴァンプが発生した場合三国が力を合わせて解決すること。中立国を介して、和の国と洋の国の会談をするなど、様々な条約が書かれている。








【第一章 一話】 始まりと旅立ち


 「この世界は、生まれた場所、家柄で、その人間の人生が決まってしまう。不平等な世界だ」


 『三国の歴史』という誰が書いたかもわからないような、古びた本にこう書かれていた。

 部屋の隅でこの本を読んでいる白髪の少女は、この一文が深く心に刺さった。

 日本という国が三つに分裂してから数百年。

和の国、洋の国、中立国と日本国内でそれぞれ独立し、法律も文化も違う中で珍しく三国共通しているものがあった。それは、忌み子の特徴である。

 忌み子とは、不幸をもたらす者のことで、生まれてきたときに、両目の色が違い、白髪を持つ者は、国に終焉をもたらすと呼ばれており、生まれてきたらすぐに処分するのが決まりだった。

 しかし、この少女――大岩アリスは忌み子の特徴である、白髪に淡い青の瞳と灰色の瞳を持つ忌み子であったが、すぐに処分されず、十五年この世にあり続けている。

 理由は分からなかった。アリスの母、大岩櫻に理由を尋ねても「もう少し大きくなってから話す」とはぐらかされて聞けずにいた。父、エドワール・リンドン(旧名)は十二年前に不慮の事故で亡くなったらしい。姉のリリアナにも尋ねるが、当の本人であるアリスに聞かされていないのだから、リリアナが知っているわけがなかった。

 外に出れば、後ろ指を指され、石を投げつけられたり、罵詈雑言を浴びせられたりするのはよくあることだった。

 アリス一家が住んでいる中立国は、特に忌み子に対して厳しい眼で見られることが多く、アリスは『三国の歴史』に書かれた一文が自分の事を言われているようで、全くその通りだ。と納得してしまうのだった。

 アリスのせいで姉や母を悪く言う人も多く、アリスは自分がいるせいでこの家に不幸をもたらしているのだと自分に言い聞かせ、学校にも通わず、姉が使い終わった教科書や母が買い与えてくれる書物を読み込んで、学校教育で教わる内容は全て頭に入っていた。

 だから、アリスと同じ歳の子たちと学力に差はなく、寧ろ、学年トップレベルの頭脳を持ち合わせているが、人と接する機会が少なく、コミュニケーション能力は同じ年の子に比べて劣っていた。

「私は…忌み子…」

 口癖になっている言葉を声に出す。

姉のリリアナにこの言葉を呟くな。と叱られたことがあるが、つい、嫌な気持ちになると出てしまう。呪いのような言葉だ。

 リリアナはまだ学校にいる時間だ。だから、この言葉をつぶやいても、咎める者は誰一人としていなかった。

「アリスー」

 下の階から母が呼ぶ。

「何?」と大きな声で聞き返すと、部屋から出てきてリビングに来て欲しいとのことだった。   私は仕方なく、開いていた本を閉じ、面倒くさそうにのろのろと階段を降り、リビングへと向かう。

「来たわね、アリス」

 リビングに繋がる扉を開く音に気付いた母は、私を見て嬉しそうに笑った。

母の横には母と同じ歳ぐらいの、黒髪の女性が立っていた。

「香住さん」

 私は母の横にいる女性にぺこりと頭を下げる。

彼女は大岩香住と言って、母の出身地である和の国から逃げるようにして中立国へやって来た際に、色々な手引きをしてくれた人で、母が幼いころから仕えていたらしい。

 詳しい事情は知らないが、母の家は和の国でもかなり有名な家だったらしく、香住さんの一族は母の実家に仕える家系だったそう。母がこの国に来てから、自分の姓を捨て、香住さんの姓である大岩を名乗っているのだと昔、盗み聞きしたことがある。

「アリスちゃん。久しぶりね、今日はあなたに渡したい物があって来たの」

「渡したい物?」

 香住さんが後ろに隠している物を私の目の前に突き出した。本だ。

タイトルは『和の国の歴史』と書かれている。

「アリスちゃん、前に『洋の国の歴史』を読んでいたでしょう? きっと、この本にも興味があるのかもしれないと思って、持ってきたの」

 どう? と自信無さ気に私を伺うようにして見ている。

私は新しい知識が増えることに幸福を感じた。

「嬉しい…ありがとう、香住さん」

 口元が緩むと、香住さんは「そっか」と言って安心した表情で笑った。

 香住さんは私の好みを良く知っている。家から出られない私が唯一、外の世界を安全に連れ出してくれる物が本だった。私にない知識を飽きることなく与えてくれる文章たちは、私に生きる希望をもたらしてくれる。そして、読書をしている時間だけが、忌み子だということを忘れさせてくれる。

「ありがとうね、香住。この子には不自由ばっかさせちゃってて……」

 不甲斐ないと母は落ち込む。

香住さんは首を横に振って、母の手を取った。

「ううん。櫻ちゃんはやれるだけのことをしているよ。それに、これは私がしたくてしていることだから、自分を責めたりしないで」

「ありがとう、香住」

「私は和の国を出たあの日から決めていたことだから、気にしないで」

 香住さんはそう言って、仕事があるからと足早に出て行ってしまった。

香住さんがいなくなった後、本を読もうと階段に足をかけた時、母が止めて、リビングでおやつでも食べないか。と誘ってきた。

 特に断る理由もないので、コクリと頷いて、リビングへ戻った。

香住さんは私にくれた本だけではなく、他にも色んなものを置いて行ったようで、母が出してきたおやつには、和の国の伝統菓子であるもみじ饅頭が並べられていた。

「ねぇ、アリス」

 気まずそうに、母は声をかける。

アリスは母のぎこちない様子に、不安を感じつつも平静を装い「何?」と少し震えた声で答える。

「実は――」

 玄関先から扉の開く音がした。

きっと、姉が学校から帰宅してきたのだろう。なんて、タイミングの悪いと思ったが、姉に罪はないので、考えることを止めた。

「ただいま。あれ、アリス珍しいね。この時間リビングにいるなんて」

 珍しそうに姉は言った。

「さっきまで、香住がここに来ていたからね」

 母が答えると、リリアナは悔しそうにもう少し早く帰ってこればよかった。と机に並べられているもみじ饅頭を手に取り、口に含みながら話した。

「そうだ、アリス。良い物を持ってきたんだ!」

「いいもの?」

 放り投げられた通学カバンから、透き通った緑色の石が出てきた。

魔石だ。とすぐにアリスは気づいた。

 魔石とは、この世界にあふれるエネルギーが結晶化された石のことで、元来人間に備わっている魔力を引き出したり、魔石に籠められた魔力を吸うことで魔法が使えるようになるのだ。魔石にもいくつか種類があり、色によって込められているエネルギーは違う。リリアナが拾ってきた緑色の魔石は、風魔法(和の国では呪力と呼ぶが中立国、洋の国では魔法と呼んでいる)に特化した魔石だ。

「アリスずっと探していたよね? 授業の実習中にこっそり拾って来たんだ」

 得意気に語ると、母はいい顔をしなかった。

「授業中に何しているのよ。いつも赤点ばっかり取っているのに、また、授業も聞かずに、魔石探しをしていたでしょう?」

「いやー、ちょーっと気になっちゃって…あはは」

 まずいとリリアナは笑って誤魔化すと、母は呆れたとため息をつく。

「お姉ちゃん、ありがとう。探してくれて」

「いいよー、それよりも、この魔石。何に使うの?」

「魔石から魔力を吸い取って、風の魔法を強化しようと思って」

「へぇー。そんなことできるんだ」

 リリアナは感心したように聞くと、母は深いため息をついた。

アリスもリリアナの発言に驚いたが、姉の事だからなぁ。と思うと、リリアナは何やらこの空気を察したようで、「もしかして馬鹿発言した感じ?」とアリスに耳打ちをする。

「お姉ちゃん。これ、小学生が習う内容だけど……」

「え、あちゃー! アリス私に分かるよう、解説してもらってもいい?」

 姉と妹の立場が怪しくなるが、こういったことはよくあることなので、もう。と呆れながらもアリスはリリアナに分かりやすく解説を始める。

「いい? まず、魔石は人に魔力を補給させたり、眠っている力を解放させるために用いられる物。まぁ、他にも、家電製品などで電力替わりに使うこともあるけども……私の場合、魔力を貯める所が人より多いから、魔石からエネルギー、つまり、魔力を吸い上げることによって強力魔法が使えるようになるの。どうして、そういうことをするか? っていうのはお姉ちゃん、わかる?」

「えーっと…なんでだっけ?」

 気まずそうにこちらを見て、早く答えを言えと言わんばかりの目でアリスを見た。

「近所の人から、魔法で攻撃されるのを防ぐためよ。家全体に防御魔法を張らないと、家がボロボロになっちゃうからね」

 リリアナはなるほど。と手を叩く。

アリスは分かった? とリリアナに尋ねると、良く理解出来たと無邪気に答えた。

小学生でもわかるような内容を三つ年上の姉に教えるなんて。とアリスは頭を抱えた。

「あれ」

 リリアナが不思議そうに言う。

どうしたのかとリリアナに聞くとさっきまでいたはずの、母の姿が見当たらないとリリアナは言い出した。そんなことは無いだろうとアリスは、くだらなさそうに答えるが、部屋を見渡すと、確かに母の姿はなかった。

 異変に気付いた二人はリビングから離れて、父の遺影が置いてある和室、洗面所、トイレ、二階に上がって、母の部屋、アリスの部屋、リリアナの部屋と順々に周って見るが母の姿はどこにもない。

まだ確認していない部屋は亡き父、エドワールの書斎だけだが、十二年前に帰らぬ人となってからは、悲しくなって誰も部屋に入ろうとはしなかった。だから、母がこの部屋に入ることは無いだろうと思いつつも、確認するだけだから。とリリアナとアリスはそっと扉を開いた。

 もう、暮れ方ということもあって部屋は薄暗かった。部屋に入ってすぐの所にこの部屋の明かりのスイッチがあるので、リリアナはスイッチを押すと、本に囲まれた部屋の中央で母は倒れていた。

 二人は急いで母のもとに駆け寄ると、すでに意識はなく、身体が冷たかった。

「どういう…こと」

 アリスはパニック状態で足に力が入らず、床に座り込んで母を見下ろすことしかできなかった。リリアナは、母の首元に手を当てて脈を計ると、悔しそうな、残念そうな、顔をしながら、目をつむって、力なくだらんとした母をぎゅっと抱きしめた。

「お、お姉ちゃん…お母さんは、生きてるんだよね……ねぇ、そうだよね…?!」

 腕の力でリリアナのもとまで行き、リリアナの肩を揺すって縋り付くようにあふれそうな涙を堪えながら必死に問う。しかし、リリアナは振り返ることもなく、ただ首を横に振るだけだった。

 いつも明るく元気な姉が、小刻みに肩を震わせながら母を大事そうに抱きしめる姿は、言葉が無くても分かってしまう。

「……アリス、香住さんを呼んで」

 重い沈黙の中、ようやく発したリリアナの言葉はか弱く、冷静だった。

 動けずにいたアリスの方へ視線を送って「お願い」と付け足すと、アリスは動かなかったはずの足が勝手に動き出し、自分の部屋に置いてあった携帯電話を取り、香住さんの携帯電話へ電話をかけていた。

 仕事中だった香住さんがアリスの電話を受け、殊の大きさに気づき、仕事を放り投げて大岩家の中に急いで入り、母の生存確認をした後、香住さんは無言で警察や救急車などを呼び、その後の処理を香住さん一人に任せてしまった。

 香住さんが来てから、時の流れは水が流れるようにあっさりと過ぎてしまい、母は小さな白い箱へと納められていた。

 姉は三日間ほどふさぎ込んではいたものの、いつもの元気さを取り戻し、香住さんと話をしていたけれど、私は立ち直ることが出来なかった。

「私は…忌み子…」

 不幸を呼ぶ存在だから、母が死んでしまったのだと自分を恨むことしかできなかった。持病もない母が突然死だなんてありえない。父も母も他界してしまった今、肉親は姉しかいない。もし、姉も母のように突然死してしまったら、自分を恨んでも恨み切れないほど、自分という存在を嫌ってしまうだろう。と嫌な想像ばかり部屋の隅で小さくなって考えていた。

 部屋の扉の奥からノック音が聞こえる。

「ねぇ…アリス。話があるの。だから、部屋から出てきて、お願い」

 リリアナが扉越しから語りかけてくる。

アリスは何も答えず、ただ部屋の隅で縮こまっているだけだった。

「お母さんが死んでから、もう一週間が過ぎたんだよ。ずっと部屋に閉じこもってばかりで、私はアリスのことが心配だよ」

 一週間何も食べず、やつれているアリスを心配しての言葉だった。

しかし、アリスはリリアナの言葉に耳を傾けようとはしない。

「香住さんも心配してるよ、アリスのこと。きっと、自分のせいだって言ってふさぎ込んでるだろうって…お母さんが死んだのは、アリスのせいじゃないよ。だから…」

「じゃあ、どうしてお母さんは死んじゃったの」

 冷たい口調で扉の向こうに立っているリリアナに尋ねた。

すぐには言葉がかえって来ず、やはり自分のせいじゃないか。とアリスは小声で呟いた。

「聞いて、アリス。お母さんが死んだ原因は呪いらしい。誰がお母さんに呪いをかけたのか、色んな人が調べてくれたんだけど分からないって…でも、和の国の人なんだって」

 和の国、母の出身地か。

きっと、母は逃げるようにして中立国へやって来たのだから、母の実家と関係があるのではないかと考えたが、もしかすると、無意識のうちに、自分が母へ呪いをかけてしまっていたら…? と思い至ってしまい、ますます自分という存在が嫌になってしまう。

「私ね、お母さんの死因を探しに、和の国に行こうと思ってるんだ。アリスはどうする? ここにいる、それとも、一緒についてくる?」

 リリアナは優しく問いかける。

明日出発する予定だからと言って、リリアナは部屋に無理やり部屋に入ってくることは無く、アリスの部屋の前から遠のいてしまった。

(お姉ちゃんはもう、前を向いているのに私は……!)

何もできない無力な自分が情けなく感じてしまい、グッと奥歯を噛んだ。




 翌日の早朝。リリアナはパンパンになったリュックを背負って、静かに家を出た。

長いこと家を空けることになるだろうと思い、家を見上げる。今まで過ごしてきた、楽しい家族との時間を思い出して、涙がこぼれそうになったが、頬を二回パンパンと叩いて、気合を入れる。

 家は香住さんが守ってくれるということになったので、家の心配はない。しかし、アリスだけが気がかりだった。あのままでは衰弱して、倒れてしまうのではないかと気がかりだった。いくら姉妹とはいえ、彼女には彼女なりの思いがあるからと、強く出ることが出来なかったリリアナは、やりきれない思いのまま、和の国へ繋がる列車の駅まで向かおうと、歩き出す。

「お姉ちゃん!」

 後ろを振り返ると、荷物を持ったアリスの姿があった。

「アリス…!? どうして」

「どうしてって、私もお母さんがどうして死んじゃったのか原因を知りたいの…! 外に出るのは怖いけど…それでも、向き合わなきゃって思って……」

「アリス…」

 妹の成長に喜びを感じたリリアナは、アリスの頭をぐしゃぐしゃに撫でて、

「じゃあ、行こう」

「うん」

 少しやつれた顔から安心した表情が見え、ホッとしたリリアナは、二人仲良く並んで、和の国へ続く列車に乗り込み、和の国へと向かうのだった。

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