First 全ての始まり
「作戦会議を始める」
隊長の声が聞こえた瞬間、部隊は静まりかえる。ここに集められたのは4人の精鋭と隊長。
彼らはある目的を果たすために違う宇宙からやって来た。それは彼らの暮らす惑星を守るためである。そのためのカギが地球の日本列島にあるようだ。このことはこの部隊の隊長しか知らない。隊長が、
「今回の標的は日本である。」
と言ったとき、すべての隊員が納得しなかったのもこのせいだろう。隊員たちの不満が言葉となって会議室を埋め尽くす。
「日本にはまともに使える物資が少ないじゃないか。」
「日本よりアメリカとかロシア、中国を狙ったほうが戦利品は期待できる。また、我々にはそれらの国を圧倒できるほどの科学技術がある。それにも関わらずそうしないのは勿体無いだろう。」
隊長は少し黙り込んだ。そしてこう言った。
「目先の戦利品を期待するならばその考えは正しい。しかし、科学技術による暴力で最初から正面から勝負するのは敵を増やす行為だ。地球だけを攻めるだけならまだしも、私たちはほかの惑星もターゲットにしていることを忘れるな。」
続けてこう言った。
「今回の作戦では地球を半永久的なエネルギー源として利用できるようにするのが目的だ。そのためのカギが日本にある。まずは手がかりを掴むためにドロイドによる現地調査から始めよう。それでいいな?」
すべての隊員は少し疑問が残った様子ではあったが首を縦に振った。
これから一時間後、数千台を超えるドロイドが日本の首都、東京に送り込まれた。隊長はレーダーによる解析で予め東京に狙いを定めていた。ロボットには目標を発見するまで暴れ続けろと指令が下った。ロボットたちはたったの数時間で首都圏を壊滅させた。この出来事こそが2050年1月28日、首都圏侵攻事件である。
少し時間を戻そう。ロボットによる襲撃を受けている東京都にて、一人の少年が彷徨い歩いていた。辺りは夕焼けと戦火により真っ赤に染まり、足元には建物の残骸が転がっているだけである。時折吹く熱風が彼の傷口を掠める。
「これからどうしよう…」
家を失い、両親を失った14歳の少年入江渓人はこの生き地獄とも呼べる場所をひたすら彷徨うだけでこの後どのように生きていこうという当てはなかった。もうどうなったってもいい。早くこの焼け野原を抜ければ誰か助けてくれるかもしれない。助けてもらった人に馬車馬のようにこき使われても構わない。そうじゃなければこの町と一緒に燃え尽きるだけだ。少年の目に光はなく、まるでこの絶望的な状況を体現しているかのようだった。この焼け野原を少年は百歩、千歩、ついには一万歩と歩き続けた。少し足を止めて休もうとしたその時轟音が鳴り響く。がれきが崩れ、向こう側には銀色の装甲と赤い目のようなものを持ち、刀を両手に持った恐ろしい兵器が現れた。それを見たとき彼は死を覚悟したのであろう。まったくと言っていいほど対抗する様子を見せなかった。武器もない。逃げる体力も残っていない。そしてこれからどう生きようというあてもない。この状況なら無理もないだろう。甲高いモーターの動作音が響き、腕のようなものを振り上げる。振り下ろそうとした瞬間、強風が壊滅した都市を駆け抜け、黒光りする刃がその兵器を真っ二つに切断し、鞘のようなものに納まった。どうやらこれは本物のがついている訳ではなく何らかのエネルギーを利用して切断しているようにも見えた。
「大丈夫か?」
刀のようなものを持った青年が声を掛ける。その瞬間、ついに限界が来たのか入江渓人は倒れ込んだ。
そして入江渓人を抱えてある場所に向かった。そして入江渓人をそこにあったベットに横にして去っていった。
2025年1月29日午前7時入江渓人は見知らぬ場所で目を覚ました。そこにはよく知っている人もベットの隣に立っていた。
「なぜここに?」
入江渓人は声を掛けた。
「それは私がここの隊員だから。それより元気そうで良かった。」
彼女の名前は西野愛梨一つ上の先輩だ。学校でも交流がある。
「起きてすぐ申し訳ないけれども君に用がある人がいるからついてきてほしい。」
入江渓人はハッとした。きっとあの時、生き地獄から自分を助けてくれたあの人に違いない。先輩についていき、彼に会うことにした。ベットから立ち上がり、隣の部屋へと向かった。