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37話

「お帰りなさいませ!ご主人様!」

私が元気よく挨拶すると、ハヤトは固まった。




あの後私は結局、店長のお友達のお部屋へと引っ越しをした。

ハヤトは大学生。勉学が本分だ。

私と暮らす事でハヤトの邪魔をしたくない。

ハヤトは随分と渋っていたが、チアキから、

『一緒に暮らすより、カレカノとして待ち合わせデートしたり、会えない時間にお互いを想ったり、寝落ち通話したり……そんな付き合いの方がいつまでも新鮮で良いんじゃない?』

と言われ、『いや、何十年も離れてたけど?』と文句を言いながらも、

『結婚したら嫌でも一緒に居れるんだから』というチアキに押しきられて最後は頷いてくれた。



私とハヤトは晴れて恋人になった。

しかし…恋人って何をしたら良いのか……私には全く想像もつかなかった。


恋……はハヤトを好きだと思う気持ちなので理解出来た。

しかし、私は今までデートもした事なければ、誰かとお付き合いするという経験も初めてだ。

チアキからは、

『お兄ちゃんもそんなに経験なさそうだから、堅苦しく考えなくて良いんじゃない?』と笑われた。

どうにもこうにも埒があかず、相談した店長には、

『マイラちゃんが、したい事をしたい様にしたら良いんだよ。会いたいな…と思えばそれを伝えたら良いし、声が聞きたいなって思えば、連絡を取れば良い。相手がいる事だから、全部が全部、自分の意見を押し通す事は出来ないけど、そのもどかしさすら、愛しいと思えるようになるから』

と言われ、少しだけ気分が楽になった。


私とハヤトは『夫婦』から『恋人』へ。

普通は逆だと思うけど、私達は元々の出会いが普通ではない。そう思えば、これで合っている様にも思う。


メイド姿の私を見て、ハヤトは少し顔を赤くしながら


「か……かわいい」

と小さく呟いた。


今日は私の働いているお店にハヤトが来る日。

1度私の働く姿を見て欲しいという私の願いを叶えてくれた。


私はいつもの様にハヤトへも接客をする。

もちろんそこには他のお客様もいらっしゃる訳で、


「河合様、今日もありがとうございます」


「マイラちゃん、今日も可愛いね。今日は……そうだなぁ、やっぱりオムライスにしよう」


「はい!今日は何の絵にしますか?」


「この前ウサギを描いてもらったし……今日はでっかいハートにして貰おうかな?」


「では、私から河合様への感謝を込めて大きなハートを描かせていただきますね!」


そんなやり取りをジッと見つめる視線が痛い。

振り返らなくても分かる。……ハヤトだろう。


私がオムライスを運んで、大きなハートをケチャップで描いていると、河合様が小さな声で、


「何か、めちゃくちゃ俺を見てくるお客さんがいるんだけど……」

と私に尋ねてきた。……ハヤト……河合様に穴が開いちゃうわ。


「あの方、このお店初めてなんです。慣れないせいで少し緊張なさっているようで……」

と私が笑顔で誤魔化せば、河合様は、


「そっか……緊張……」

とどこか腑に落ちない様な表情で頷いた。


仕事が終わりスマホを見ると、

『少し先のカフェで待ってるから、一緒に帰ろう』

というハヤトからのメッセージ。


私は着替えて、急いでハヤトの待つカフェへと向かった。



「お待たせしました」

私がハヤトの元へと駆け寄ると、ハヤトは軽く手をあげた。


私はハヤトの向かいの席に座る。


「何か飲む?それとも何か食べる?俺もお腹空いたし」

と言うハヤトに、私も同意した。今日はお店が忙しく、お腹もペコペコだ。


2人でパスタを頬張る。そういえば……


「あれ?ハヤトはオムライス食べてませんでしたっけ?」

私は疑問を口にした。すると、ハヤトは


「緊張し過ぎて、どこに入ったかわかんなかったんだよ」

と苦笑した。


「お店……どうでしたか?」


「うーん。やっぱりさ、他の男にニコニコしてたり、チヤホヤされてるのを見るのは正直もやっとしたかな」


「……そうですか」

私はまたバイトに反対されるのかと、少し俯いてしまった。


「でも……さ。マイラが楽しそうにしてたから、なんか…もう反対は出来ないかなって」

そうハヤトに言われて、私は顔を上げた。


「本当ですか?じゃあ、バイト続けても……」


「うん。まぁ、いいよ。でもその代わりに条件があるんだ」


「条件?」


「うん」

と言ったきりハヤトは少し黙ってしまった。条件って何なのだろうか?


ハヤトはパスタを食べていた手を止めて、フォークを置いた。


すると、ポケットからゴソゴソと小さな箱を出して私の前に置く。私がハヤトの顔を見ると小さく頷くので、これは私に、という事なのだろう。


私はその小さな箱を手に取り、蓋を開くとそこには小さな赤い石の付いた細い指輪が入っていた。


「指輪ですか?これ……私に?」

と不思議そうな私にハヤトは少し頬を染めて、


「うん。良かったら付けてくれる?」

と微笑んだ。



「プレゼントですか?!ありがとうございます!」

と私が喜んで指輪を箱から摘まむ。それを何故かハヤトは焦った様子で、


「ちょっ!ちょっと待って!何でそんな普通なの?……こう……ほら、もうちょっとさぁ……何かない?」


ハヤトが何を言いたいのか分からない。


私が不思議そうにしていると、


「もしかして……意味、通じてない感じ?」

とハヤトは少しがっかりしたような表情になった。

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