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3話


「まさか!そんな筈はありませんわ。だって彼女は殿下の…」

と言う私の言葉を遮るように、


「あいつはハロルドの手の者だ!」

と叫んだ。


…ハロルド・ロードスター公爵。

現在の国王、ルイス・ジョルジュ陛下の弟君で、王族を離れロードスター公爵となった方だ。



「何故、ハロルド様が?」


私の疑問は尤もだろう。

だってこう言っては何だが、国王陛下よりも人格者で、ハロルド様の方が王に相応しいという声が多く聞かれた事も事実。


そんなハロルド様が?


「マイラ、君も彼に騙されてるんだ。いや、国民全員が騙されていると言っても間違いない。

奴は自分の息子である、リオンを国王にしたいと…そう願ってるんだ」


「そんな…まさか。ハロルド様と同様、リオン様も軍人ではありませんか。この国の軍部を一手に纏め挙げるロードスター公爵家が、何故?」


ハロルド様もリオン様もそれは立派な騎士だ。

まぁ、しかし、こいつに比べれば、リオン様の方が立派な国王になれるだろうが。


「まぁ、信じられないのも無理はない。

奴は外面が良いからな。…といってもリオンはきっと、俺の命は元より、王太子の座も狙ってはいない。元凶はハロルドだ」


断言するけど…それはなんの証拠があるのか。


今のところ、私としては、全くこの男の話を信用する根拠がない。


…頭がおかしくなってしまったのだとしか思えないのだ。


「確かに…リオン様は王位継承権第2位を持っています。

リオン様を国王にする為には…殿下が邪魔な事も理解出来ました。

ですが、その話を信じろと言うのですか?私には到底無理です。

…そもそも何処にそんな荒唐無稽な話を頭から信じる者がいるというのです」

と私が言えば、


「わかってる。そう言われるのは。だがな、これから言う話を聞けば、君も気持ちが変わるかもしれない」


「まだ他に私にお話が?」


「あぁ。言っとくが、俺が殺されたら…その犯人として処刑されるのは……君だよ、マイラ」


は?!へ?!さっきエレーヌ様が犯人だって言ってなかった?



「どうして私が殿下を殺さなければならないのです!

確かに、私は貴方が大嫌いですが、そこまで愚かではありません!」

と私が怒って椅子から立ち上がると、


「シーッ!!声が大きい。とにかく、座って。

マイラ、君はエレーヌに嵌められて、私を殺した罪に問われる事になる。…所謂『冤罪』ってやつだ」


「冤罪…」

私は椅子に再び腰を下ろした。


…エレーヌ様が私に罪を擦り付けると言うのだろうか…。


「あぁ。ハロルドは幼い頃から自分の方が兄のルイスより国王に相応しいと思っていた」


…確かに。ルイス陛下は気が弱くて、国王としては、些か頼りない。

現に王妃に良いように使われている様子が周りからも見てとれる。


それに引き換えハロルド様はなんというか…カリスマ性を備えているし、人望も厚い。

周りの誰もがハロルド様が立太子されるべきだと進言したのにも関わらず、前国王…フェルナンド殿下のお祖父様はルイス陛下を王太子に指名したのだった。


「その昔、ルイス陛下を立太子するのに反対した者も多く居たと聞いた事もあります。

しかし、ハロルド様は自ら王族を退き、公爵として、また、この国の軍部を司る者として陛下をお支えになる決意をされたのではないのですか?」


「表向きはそうだ。だが、それにはマチルダ王妃が絡んでる」


…自分の母親を『マチルダ王妃』?いつもなら、『母上』と言うのを私が『妃陛下』と呼ぶように訂正していたのに?


「では…ハロルド様のご意志ではなかったと?」


「あぁ。ハロルドは聖人君子みたいな顔をしているが…無類の女好きだ。

リオンは…ハロルドの正妻の子ではない。愛人に生ませた子だ。その情報をどこからか仕入れた王妃はハロルドを王族から抜けさせた」


「…脅した…という訳ですの?」


「あぁ。そうだ。ハロルドの正妻はこの国の宰相の妹だからな。バレたら大事だろ?」


…頭が痛くなってきた。

この話…最後まで聞いたら取り返しのつかない事になるんじゃないかしら?


「では…ハロルド様は自分が成し得なかった事…国王になるという夢を息子に託したと?」


「まぁ、そう言う事だ。本当なら自分がなりたかったのだろうけどな」


「で…エレーヌ様とハロルド様のご関係は?」


「エレーヌはハロルドの愛人だよ」


ちょっと 待って?王太子の側室が、王弟の愛人?!





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