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2話


何故か初夜はあった。白い結婚であれば王族だとしても離縁が認められる。

それを阻止したかったのか…それとも一応の夫婦の義務を果たしただけなのか…この男の考える事などわかる筈がない。


しかし、その日から、再び私と殿下が肌を重ねる事は2度となかったが。


そして、殿下は直ぐに側室を娶った。


彼女の名は『エレーヌ・スカーレット伯爵令嬢』

殿下の学園時代からの恋人だ。


元は男爵令嬢だったのを、側室にする為に、わざわざスカーレット伯爵の養女にした。

そうまでして手にいれた女性。それがエレーヌ様だ。


エレーヌ様は美しい金髪にピンク色の瞳。それはそれは可愛らしい女性だ。殿下が惚れるのも頷ける。


ちなみに私アッシュブロンドの髪にグレイッシュブルーの瞳。なんとなくきつめの雰囲気だ。

…ちなみに、美人ではあると思うが可愛らしくはない。



エレーヌ様は殿下の寵愛を一身に受けているが、子を成す気配はまだない。


側室としての役割は子を成す事なのだから、思う存分励んでいただきたい。私には逆立ちしても無理な事なので。





人払いをした部屋に、私と殿下の2人きりとなった。

気まずい…。2人きりなんて…初夜のあの日以来だ。思い出したくもない。


「で、お話とは何ですか?」

私は極力冷たく聞こえるように言った。

好き好んでこの男と話をしていると思われたくない。


婚約した当初、お茶会で気を使って話しかける私に、

『僕の気を引きたいの?そんな風にされても、僕はお前みたいに、人形のような女の子好きにならないよ。諦めたら?』

と、この男は言ったのだ。


私はそれから、こいつに話しかけるのをやめた。

気を引きたいなんて思われたくないからだ。

自惚れるのもいい加減にしろと言いたい。


「これから俺が話す事は信じられない話だと思うけど、聞いて欲しい」


…真面目な顔をしているこの男に違和感を感じる。


今、この人『俺』って言った?

いつもは、『私』と言ってなかったっけ?

子どもの頃は『僕』と言っていたと思うけど…『俺』と言うのは聞いた事がなかった。



私が返事をするより先に、殿下は話し始めた。



「俺は、この世界の人間じゃない」




「は?」


…この男…頭がおかしくなったのかしら?これってお医者様に診せた方が…


「大丈夫、俺の頭はおかしくない。

俺は気づいたら、この男の体に入っていた。

簡単に言うと、この男の魂と俺の魂が入れ替わったんだと思う。所謂「入れ替わり転生』だ」


簡単に言うとって言われても、全然話が理解できない。

………やっぱりお医者様に診てもらおう。こんな所で私と話している場合じゃない。…重症のようだ。


「殿下。何を訳のわからない事を…。

お疲れなのですか?それとも…頭を強く打ちました?」

と私がわざとらしく肩を竦めて見せれば、


「そう言うのも理解できる。俺だって、この自分の状況を受け入れるのに、1週間かかったんだから」


…1週間…そう言えば、この1週間、殿下は執務室に現れなかったと聞いた。


私はどうせエレーヌ様とイチャイチャするのに忙しくてサボっているのだと思っていた。


今までだって、朝起きれずに執務をサボる事もあった、大体がエレーヌ様絡みで。

なので、私も大して気にしていなかったのだが…1週間も休むのは初めてだと宰相も言っていたっけ。


「1週間、執務をサボっていたのは…」


「サボったんじゃなくて、受け入れられなかったんだ!目覚めたら知らない場所、知らない人、知らない自分…。俺だって自分の頭がおかしくなったって思ったよ!」

と額を押さえて項垂れる殿下。


というか、こんな風に話をするのも初めてなので、今私が感じている違和感が何なのかが説明出来ない。

私より、彼に詳しい人に話をした方が、信じてもらえるのではないか?

私はそう思い、


「私なんかより、エレーヌ様を頼ってはいかがです?私よりずっと…」

と私が言いかけると、それを遮るように、


「あの女はダメだ!」

と大きな声で、殿下は遮った。


そして、


「エレーヌこそが、俺を殺そうとしている張本人だからだ」

と驚きの事実を口にしたのだった。



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