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●18 未来永劫、銀の魂は。(ゼノヴィス視点)


最終話。


溺愛ヤンデレ悪魔・ゼノヴィス視点。




 魂のない人間は、初めて見たな。


 悪魔と取り引きして魂を捧げる人間は、決まって殺される。悪魔自身に殺されたり、悪魔と取り引きした罪で処刑されたり、魂を渡すのは死後という取り引きだったり。

 理由は様々だが、魂のない人間は基本、野放しにはならない。自分で思考しない抜け殻と化す。


 最後の仕上げは、自分で決めていたとはいえ……。

 ばっちぃもの、触っちゃったなぁ。


 一番の懸念要素は、ディナと同じ転生者であるヒロインが、ディナと同じく死に戻りをすること。

 そんなことされたら、努力が水の泡。キリがない。

 幸い、ヒロインには回帰の記憶はないみたいだし、まだ死に戻りの経験はないようだと推測したオレが選ぶのは。


 ()()()()()()()()()()()()


 なければいいのだ。死に戻る魂なんて。

 オレにとっても、ディナにとっても、害悪の魂だ。


 魂は壊せる代物である。

 利点なんてないが、悪魔にはそれが可能だ。

 だから、壊した。


 ばっちぃな。

 しっかし……特にディナと似た魂というわけでもなかった。普通の魂だったと思うな、あれ。転生者の特徴というものは、存在しないのだろう。



 ディナの魂は、眩しい。

 初夜のムード作りに散りばめた銀華のように綺麗な銀色なのだ。

 ディナの魂を見て、浄化されよう。



 出かける言い訳に利用した探し物をサクッと済ませて、アクアート伯爵邸へ帰る。

 姿は見えなくして廊下を闊歩。

 静まり返っている伯爵邸は、ディナお嬢様が婚約破棄の傷心中だと思って、使用人一同は自粛中。

 ディナの家族であるアクアート伯爵家は、何度かディナの部屋を訪ねたが、オレの分身を務めている使い魔が追い返した。

 食事を受け取っても、オレ以外に心を許していないために、誰も会いたがらない状態。


 まぁ、実際は、オレが抱き潰して、誰にも会えない状態なんだけどね♪


 ディナの部屋の前に、オレの分身が立っている。何重にも設置した結界も問題なし。異変はなかったようだ。


 ディナの部屋に入って、真っ直ぐに寝室に足を踏み入れれば、息を呑む光景。


 銀の魂を持つ眠り姫がいた。


 長い白銀の髪は自由に伸びて、ベッドの上に流れている。その隙間から、色白の背中が見えた。

 赤いキスマークが散っている。オレがつけた証。

 ゴクリと喉を鳴らして、そっとくるまっているシーツをゆっくりと引き下げる。


 そうすれば、顕になるのは、美の女神も裸足で逃げ出す美しい裸体。

 蠱惑な女性のボディライン。目が眩む色白の肌。


 あまりにも魅惑で美しいオレの愛しい人。


 ほう、と息を溢して見惚れた。


「ゼノ……寒い……」

「ん、温めてあげる」


 オレもベッドに入って、シーツで包んでディナを後ろから抱き締めた。

 ちゅっと頬にキスをしてあげたディナはさっきまでの安らかな寝顔から一転、顔色悪い苦しげな表情に変わる。


「ディナ?」

「こし、いた……」

「あ、ごめん。ポーション、飲んで」


 腰が痛いと訴えるディナの痛みを取り除くために、ポーションの小瓶を開けて、飲ませてあげた。

 三日三晩の初夜で、何本飲ませたっけ。

 一度始めると一回や二回では終わらず、想定よりも濃密な初夜になってしまった。

 ちゃんと人間のディナに気を遣って休憩も食事もさせたけれど、それでも情事に耽る時間が圧倒的に多かった。

 肉欲に溺れるとはこういうことかな。もうディナの身体から離れがたい。


 さっきだって、最後の処置が必要なければ、ディナを置いて出掛けたりしなかったのに。


「探し物は見つかった?」


 ディナは寝返りを打つと仰向けで、オレを見上げて尋ねた。

 直接二人のことを訊かれるまで、ヒーローとヒロインの最後の処置をしたことを話さないつもり。


「うん、見つかった。オレが封印されていた館に残ってた」

「何が?」

「オレが作った媚薬」

「びやく……」


 腕枕をしてあげているとディナは呆けた顔をした。可愛い。

 つんつん、と鼻先をつついた。


「えっと……なんで?」

「ディナがオレの性欲についていけないって言うから、媚薬飲んでもらおうと思って」

「ひえぇ……」

「大丈夫、一度タガを外せばいいんだよ」

「大丈夫の要素が理解出来ない」


 すっぽり、シーツを被って隠れてしまうディナ。可愛い。


「そ、そもそも、その媚薬って、100年前のモノじゃないの?」

「そうだよ。100年寝かせたから、お酒のように熟成して美味しくて数倍効く媚薬になってるはずだよ」

「ひえぇっ。媚薬って寝かせるモノだったの……? 飲まないからね!」

「ええー? ……さっきポーションと間違えて飲ませればよかったね」

「やめて!? 私に加減して!! この悪魔!」

「悪魔だもーん」


 ぽこすかと軽い力でオレの胸を拳で叩くディナ。ホント、可愛い。

 100年物の熟成媚薬。どうやって飲んでもらおうかなぁ。頼み込めば、飲んでくれるでしょ。ディナはオレに甘いから♪


「初夜が三日続くとは聞いてない……」

「オレも三日続くとは思わなかった……愛しさが止まらなかったの♡」


 ちゅっと、ディナの頭に口付けを落とす。


「終わるなり、ここでするとも聞いてない」

「一番ディナと過ごした部屋だから。それに最後だし」


 初夜の場所にディナの寝室を選んだのは、他に思いつかなったこともあるけれど、ここも見納めだからだ。


「それもそうだね」


 ディナは黄昏るように自分の部屋を見回す。


 そんなディナの髪を撫でつけて、質問を待っていたけれど、結局あの二人のその後について問うことはなかった。



 ディナはアクアート伯爵家を出て行くことに決めた。

 婚約者とのトラブルの末、婚約破棄を公衆の面前で叩きつけたディナ。

 真っ向からぶつかったが、心の傷は深く、醜聞は避けられないから修道院へ行く。

 アクアート伯爵一家に引き留められても、ディナは従者にトランクを持たせた馬車に乗り込んだ。


 それっきり、アクアート伯爵邸に戻ることはなかった。



 まぁ、修道院には行かないけどね。

 それでアクアート伯爵家との縁を切ったことにしたディナとオレは、冒険者の身分で国を出た。

 ディナは、『ディナ・アクアート伯爵令嬢』の身分を捨てたのだ。


 冒険者としてオレと世界を回る人生を選んでくれたディナ。



 ディナが心機一転で髪を切ると言い出したので、全力で泣きついて止めた。オレは長い髪のディナが好きなの! 綺麗な白銀の髪を切らないで! オレがお手入れするから!

「ごめんて」と謝るディナの髪に、しばらく顔を埋めてひっついた。

 ディナは思いっきりがいいから、ちゃんと見張っておかないとね。




 前にオレが話したことがあった砂漠のオアシスへ案内する冒険をした。


「これ、踊り子の衣装だよね?」

「いや、ここの民族衣装だよ? でもせっかくだから踊って? オレのディナ」


 へそ出しの絹の民族衣装に身を包むディナにデレデレしてしまう。

 ディナはディナでオアシスにルビー色の瞳をキラキラに輝かせるから、オレはそんなディナを眩しく見つめた。




 次は、オーロラの湖が見れる場所に行こうとしたが、その前に使い魔が闇ギルドから情報を受け取ったと知らせてきた。


 抜け殻になったあのヒロインを、解放した元婚約者が迎えに行ったはいいが、身一つで放り出された二人は行く当てもなく、ヒロインはヒロインで抜け殻状態で不気味すぎたのか、お荷物と感じたのか、早々に元婚約者は置いていったそうだ。その後ヒロインは、修道院に引き取られた。元婚約者は、その後、行方知らず。

 運命的に何度も恋したにも関わず、呆気ない終わりだ。

 まぁ、恋する相手に魂がなければそれも難しいよな。抜け殻の女を愛を貫けなかった。ざまぁーない。


「ゼノ?」


 ハッとする。

 愚かな人間の末路を静かに嘲笑っていた顔を、ディナに見られた。

 悪魔らしい加虐な笑みだったと自覚しているから、引かれたかもしれない。今までディナに見せていない顔だ。

 こちらを見つめるディナの顔色は暗い。


「あ、えっと……」

「……ごめん」

「えっ?」


 なんで謝るの? ヒヤッと焦った。


「やっぱりあの二人のその後をゼノだけに任せるのはだめだよね!」

「え? ん?」


 ……ディナが、なんか反省している。多分的外れな何かだ。


「あの二人がどうなってるか、見張ってるのでしょ? ゼノが野放しにするとは思わないし……何か考えがあって見張ってるんでしょ? 私は放置しているのに……。任せっきりでごめん」

「いや、別に……オレが勝手にやってるだけだよ?」


 変な反省をするディナに微笑んで、手を引いて自分の腕の中に収めた。


「一応使い魔置いて見張らせたら、呆気なくヒロインを見捨てて、ヒーローは自分一人で生き抜くつもりで消えたみたいだよ。運命の愛も大したことないねぇ」


 まぁ、ヒーローはヒーローで自分が自分を刺し殺すような悪夢に魘され続けるんだから、自分の世話も出来ないような抜け殻ヒロインの面倒も見れないのだろう。


「あの二人はバッドエンド。それで終わりだよ」

「そう……。ありがとう、ゼノ」


 ちゅっと頬にキスをくれたディナにすりすりと頬擦りをする。

 言おうかな……。今言っちゃおう。


「ディナ。前にオレ、大きな買い物したじゃん?」

「そうだね、何かは聞いてないけど、貯金がごっそり減ってたね。何買ったの?」


 ディナはオレの手を弄び、恋人繋ぎをしてはにぎにぎと握る。


「オーロラの湖の近くにね、使われていない小さな屋敷があるんだって」

「え。それ買ったの?」

「うん。オレ達のハネムーンに買っちゃった♡」


 むちゅっと目を真ん丸にするディナの唇を奪う。


「綺麗にしてもらって住めるように手配済み」


 ちゅっ、ちゅうっとディナの柔らかい唇に吸い付く。


「しばらくは、んっ、冒険するんじゃ……?」

「その前にすることがあるの」


 唇から逸れて、頬に口付けをして、それから右耳に囁く。



「永遠にディナと一緒に居られるように、ディナをオレの悪魔にする」



 どんな反応するかな、とルビー色の瞳を覗き込む。


「……私、悪魔になるの? ゼノと一緒?」

「うん。厳密には、眷属ね。人間が堕落して、悪魔化するの。成長は止まるし、長寿になる。まぁ、ほぼ不老不死ってこと。人間より丈夫だし、魔力操作も格段に上がるはずだよ。……いいでしょ?」


 ひたすら驚いたようにポカンとするディナに、首を傾げて尋ねる。


「あ……えっと……初耳すぎて」

「未来永劫、オレと一緒って約束したのに。どうやって一緒にいる気だったの?」


 クスクスと笑ってしまう。

 そう約束しただけでは、未来永劫いられないよ?

 そりゃあまぁ、悪魔になるって約束ではなかったけれども。


「あー、なんとか寿命を引き延ばす長寿の薬とか飲んで、一緒にいるのかと思って……。え? じゃあ、本当にずっと一緒にいられるんだね? 死ぬこともなく、老いることもなく? このまま時が止まったみたいに、ずっとゼノと添い遂げられる?」


 え。添い遂げるって……可愛いこと言うね。

 ディナも目を潤ませて、見つめてくる。揺れるルビー色の瞳を見て、不安に思っていたのかと気付いた。

 ギュッと片腕で抱き寄せて、口付けをする。


「うん。ずっと永遠に添い遂げられるよ。言ったでしょ。オレはディナを未来永劫、放さないって」

「ゼノ……」


 不安に思っていた分、安心させるために、しっかり抱き締めていたら、ディナに押し倒された。



「私をゼノだけの悪魔にして?」


 潤んだ瞳で甘い声でおねだりしてくれる愛しい人にゾクゾクとする。


「オレだけの悪魔ちゃん」


 もちろんだと愛を交わした。




 オーロラを閉じ込めたような大きな湖の前で、綺麗綺麗だと興奮するディナに、指輪を差し出して人間っぽくプロポーズした。ルビーをゴールドで縁取った対になる指輪。

 大喜びされて飛びつかれたので、抱き上げてクルクルとその場で回った。



 永遠の愛の誓いを交わして、ディナを堕落させて眷属の悪魔に変えた。


 もう手放さない。

 何があっても離れないように魂を結びつかせて――――。



 ああ、綺麗だ、ディナ。


 悪魔になっても、銀の魂が眩しくて美しい。


 オレの愛しい人。未来永劫、放さない。





   【ハッピーエンド】


Rシーンあるなしの甘々溺愛モノシリーズ第二弾!

読んでくださり、ありがとうございました!

欲に忠実な悪魔が、可愛い令嬢を愛おしく美味しくいただきました……!


本編はこれにて完結ですが、番外編を書いたなら、ひたすらイチャラブするだけの話になるでしょう。イチャラブえっちしてくれカップルです……!


新年早々、完結(((o(`・ω・´)o)))

今年も作品ともどもよろしくお願いいたしますね!

最後によかったら、いいねと★でポイント評価をお願いいたします!


2024/01/01

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