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08 拒否権は無い


──シュタッ!!


「おはようギルメン諸君!! 私、団長まいらの帰還だ!!」

白銀の翼をはためかせ華麗に着地するまいら。


「わー、だんちょーさんだ!! きゃはは、おかえりー!!」


『え?……団長? えええ!? まいらさんってこのギルドの団長(リーダー)なんですか?』


「ん? そうだけど、」


「……へ、」


驚愕の末、口があきっぱになるステラ。


「あら、うちのギルドそこそこ有名になってきたと思ってたんだけど、知らない子も居るのね」


「ステラ、うちの団長は私達のいるこのサーバー『聖なる密林(ホーリーラフォーレ)』のトッププレイヤー10に毎回入っちゃうような人だよ? 知らないは流石にネタっスよね?」

かぷちーのがそうステラに質問した。


「はわ、ごめんなさい私毎回ソロで……ランキングとか確認した事なくて……」

すごく申し訳なさそうにするステラ。


「マジか……」


「へへ、ステラー、こう見えてウチらのだんちょーさんはつよつよなんだよー〜」


「あ、でもまいらさん【白銀】のスキル持ちって事は知っていたので、前回のイベント覇者な事は私も分かりました……やっぱりすごい人なんですねまいらさん」


「おい、リゼ。こう見えては余計だぞ」

「なんかステラちゃんに褒められると照れるな、たはは」

ステラの素直な尊敬の意にちょっぴり恥ずかしそうなまいら。


「んで? 団長そんな初心者連れてきてどうしたんスか? まさかこの子をギルドに入れたいとか思って──」


「勿論そのために連れてきたんだよ? 私」

かぷちーのの言わんとする言葉を遮り、まいらは本人の意思を完全に無視したステラのギルド入会の話を勝手に始める。


「え、ちょちょちょ、ちょっとまいらさん私聞いてないですよ!? ギルド(ここ)に遊びに来た事は確かですけど私、ギルドに入るなんて一言も……」


「えー、ステラちゃん私の事好きじゃないの?一緒にイベント行こうってさっき約束したばっかじゃん!!」

そう言ってまいらはステラの良心に漬け込んで謎のあざとムーブ、金髪美少女から送られるその破壊力を宿した上目遣いはなかなかに可愛いものだった、同性だろうがこれにはステラも心をぎゅっと掴まれる。


「確かに言いましたけどぉ……私達、今日会ったばかりですし……」


「ステラ、オレたちの友情に時間なんて関係ないぜ」

まいらが何故か声を低くして色気のある喋り方でそう言ういわゆる『イケボ』と言うやつでステラをギルドにしつこく勧誘する。深夜じゃないのにこんな感じで変なテンションで絡んでくるのが彼女まいらなのである。


「む、むぅ……まいらさん。──イジワルです」


「ははは!!」


今にも泣きそうな表情のステラ、もうあとひと押しかふた押しでギルドに入れと言うまいらの懇願に対し「yes」と答えそうな彼女。


「なんかあの子にベタ惚れね、団長。あの子と何があったのかしら?」


「うー!! リゼもステラ好きだよ!!」


「うん、珍しいっスよね。もしかしてめちゃくちゃ強いとかなのかな? んじゃ、……ボク試してくるね」


「ちょっと、かぷちーの!!」


かぷちーのは副団長のアオの引き止める呼び掛けを無視して、ステラの方へと足を前へ前へと進めていく。


そしてまいらと話しているステラの所まで来ると、不意に己の鉤爪を彼女の首元に突き立て、こう言葉をかける。


──スッ、


「団長は君の事気に入ってるみたいだけどボクはイマイチ、パッとしない君の事がまだ分からない。どうか一体一のPVP戦を希望する、いいえとは言わせないっスよ?」


「ひっ……えっと──ええと……私、」


ブルブルとステラの華奢な身体が恐怖により震え始める。


「ねぇ、かぷちーの私の友達あんまり怖がらせないでよ」

いつもニコニコのまいらが珍しくギルメンに睨みを効かせる。


「──……」


睨まれたかぷちーのは無言でまいらの方を向き、まいらのその瞳を凝視しする。


重苦しい空気が流れる。その時だった。



『「私、──戦います!!」』


まさかの一言だった。


この空気に耐えかねたのか、ステラはかぷちーのと戦う意志を言葉にして告げる。


「きゃはっ!! やっーぱり。ステラはおもしろい!!」


「ふーん? やるんだ、あの子。見た感じ凄く臆病そうだけど大丈夫かしら」


「──ステラちゃん……」

自分のせいでこうなってしまった罪悪感を感じ、まいらはひとり胸を痛めステラの事をまるで自分の事のように心配する。



覚悟を決め勇気の目を宿すステラ、団長が連れてきたとは言え部外者を認めようとしないかぷちーの2人のpvp戦が今、始まろうとしていた。


今日もうまた1話、夜投稿できるかと思います。

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