77ステラのG稼ぎ⑤〜連続七回スイング。ナナ転び、七起き〜
「さ、そうとなればこいぬ装備を変えてみようか。」
「は、はい!!」
──……。
半透明の操作用コンフィングを起動し、装備一覧からステラから貰った武器を装備するこいぬ。
ステラはそのタジタジした様子のこいぬを見守りながら、何やらそっとスマホデバイスをスワイプする。
「え、これって。……ステラさん……、いいんですか?」
「もちろんだよ!」
──……フィオオオン。
不意に送られたプレゼントボックスをタッチし開いてみると、そこには近接戦闘専用の身軽でこいぬの好みにピタリとハマる衣装が画面に映し出されていた、キラキラと光るその美しい衣装にこいぬは身を包み、新たな姿へ様変わりする。
「ほほう。これは……ステラの新しいビルドの提案、何かと期待していたがこれは予想外だね、面白い。」
「へへーん! 私だって今会ったばかりですけど、こいぬちゃんの素養はちゃーんと、見抜いてますよ〜!!」
「って、……ひゃあああああ!!! 何ですかこれ!? しっ、下の方が!!!」
妖精の様なその煌びやかな衣装、だがしかし。こいぬの言う通り、恥ずかしがり屋の彼女にとって最大の問題がそこにはあった。
「ろ、露出度が!!高!!い!!!」
ダダダとミサキが高速でダッシュし、ジロジロとその軽装な衣装を瞳でねっとりと舐め尽くした。
「ぎゃーー〜!!! ミサキさん! やめてください!! 見つめないでください!!!」
「何言ってるんだ、こいぬくん。これは君の着こなしに対するリスペクトなんだ、見つめない方が失礼というものだよ。」
「あはは、ステラ……ちょっと、PKいいかな?」
「うひぃ……。」
PVPではどんなピンチにも感情的にならず冷静な判断を行ってきた、アーテルから一転した黒雲立ち込めたその暗黒な表情、その恐ろしさは決して、とても形容できたものではない。
「あーー!!! あははー!!! はーやーくー。私達のギルドハウス作りたいなー!! なーーんて。」
咄嗟にあたふたした感じでトラブルめきそうな空気感を中和するステラ。
今までの彼女からは考えられない行動力。
エンオンでの生活が彼女の人間関係の構築力を格段に上げたのだろう。
「……いぎぎ。」
──……スポッ。
「ありゃ……。行っちゃった……。うう、」
ミサキの完全で強固なホールドから抜け出したこいぬはステラの方へ駆け出していき、こう続ける。
「はい!! ステラさん! 是非、ビシバシ私に斧スキルを叩き込んで下さい!!」
──かわいい。とてもシンプルで素直な感情がステラの心の中へ駆け巡った。
新しい出会い、それに人のギルドメンバーであれ慕ってくれる人懐っこいゲームの後輩。そんな要素がステラを激しく襲った。
「い、行こっか……こいぬ、ちゃん?」
ゆったりと潤んだ瞳、耳障り心地良い愛犬を撫でるような声でこいぬを近くへと誘った。
「いぎ!?」
「……!?」
ミサキ、アーテルは見たこともないステラの表情に驚嘆する。
二人は開いた口が塞がらないと言った表情で、お互いを見つめる。そして焦りながら二人はステラとこいぬの背中を追って駆け出す。
──……グギャー!!!
「そな事、言ってるうちにいーとこにモンスター!! こいぬちゃんやっちゃって!!」
「は、はい!! この新しく入れたスキルスロットのえいっ!! これをっ!!!」
──……ジャイアントタイフーン
選んだスキルか発動、身体より大きい大型の斧がグルグルと回転。その回数は数にして7回、そのために溜めた遠心力でモンスターを一撃で破壊する。
「す、すごい力です……!」
斧スキルのプレビュー欄の効果にこう書いてあった、遠心力を貯めその回数に応じてATKの上昇値を加算する……──ただし。
「あふっ!!」
……べふん!
気の抜けた声とともに子犬がしりもちをつく、ごっそり体力を持ってかれるようで遠心力を回したぶん倒れてヘトヘトである。
「う、ううぅ……す、すごいハードなビルド……。ステラさん……私向いてますでしょうかこれ……。」
「わー、!! 初めてなのに連続7回!! 凄いよ!すごい!! こいぬちゃん!! 向いてるって!」
「んんんっ……!」
「す、ステラさん、!! あ、あの!! 」
「……ふふ、なあに? こいぬちゃん。」
「 大斧ビルドめちゃくちゃっっったのしいです!!!」
──……1日限り?の新しいパーティとまた熱くなってきそうなこの世界での一日がまた始まった。




