【B視点】聖夜の過ごし方
「というわけで、クリスマスはごめん。どっかでリスケする」
日が暮れて、あいつに電話をかけた。
今日は遊びに行くことは自重。バイトで疲れてるだろうしね。
『いや、大丈夫だよ。サービス業だしな』
ちなみにあいつはイブに家族と過ごすとのこと。
正月に帰る予定はないため、代わりにクリスマスにしたのだとか。
「え、年末年始帰らないの?」
家族仲はいいみたいだし、お盆は帰省してたんだから正月もそうなるんじゃないかなって思ったんだけど。
『…………』
長い溜息のあと、あいつからはなぜそこは鈍いんだ、と苦笑まじりに返ってきた。
……あ、もしかして。
『クリスマスは無理だと分かっていたから、三が日は一緒に過ごしたいなと』
あー、そっか。そうだよね。
休み重なるの、もうそこくらいしかないもんなあ。
気づかなかったあたしも、我ながらにぶちんだ。
『あ、で、でも。もし家族との予約が入ってたら。もちろんそっち優先でいい。悪い、何も聞かないで勝手に進めて』
さりげなく独占してくれるのは悪いことじゃないと思うよ?
あたしからは親に帰ってこいとはぜんぜん言われてないし。
「うん、いいよ。一緒にだらだらしよう」
あ、そうだ。
どうせ家族と過ごすなら、いいクリスマス会場の提案がある。
「実はうちの店、クリスマスの予約受け付けてるんだけどさ。よかったらどう? 無理にとは言わないけど」
それなら、間接的に会うこともできる。
あいつからはじゃあ行こうかな、と快く返ってきた。
店長からは冷やかされそうだけど、客寄せしてんだしwin-win。
会いたいものは会いたいのだ。
あいつにはまた制服姿を見せたかったし。
……あと、これはたった今思いついた用事だけど。
どうだろう。どんな返事がくるかな。
「あのさ、」
『?』
「親御さんが泊まるのって二日とも?」
『いや。イブだけだが……』
それなら都合がいい。
あたしはしどろもどろになりつつ、切り出した。
「クリスマス。日中は無理だけど、夜なら空いてるから。空けます」
聖夜だからね。うん。
深い意味は、もちろんある。
『…………』
あいつはこんなに早く二回目のお誘いが来るとは思ってなかったのか、しばし照れを噛み殺すように沈黙していた。
『その、次の日は日曜だったか。仕事は』
「休みだよ。いや出てもよかったんだけど、二日連続でフル勤務だから休み入れられた」
そこは、やっぱ店長に感謝しないとなあ。
もしかしたらあいつとの時間を作ってくれたのかもしれないけど。
『分かった。待ってる』
短い一言だけど、力強い言い切り方だ。
期待、してるんだろう。
「ん、いい夜にしましょう」
約束事を交わして、通話を切る。
……思った以上に胸がどきどきしている。誘うって当たり前だけど、気力めっちゃ使うなあ。
あ、年末年始帰らないならあたしもどっかで親に顔を見せておいたほうがいいのか。
じゃあ、高校くらいから行かなくなったあれとかいいかな。
久々に参加するかなあ。
確か来週だったよね。
その日はシフトも入ってなかったはず。
クリスマス当日は予定が入ってる人もいるから、前倒しで毎年開催しているのだ。
どうせならあいつも誘ってみるかーと、あたしはLINEを起動する。
『言い忘れた 来週クリスマス会あるんだけど参加する? 夜から』
『構わないが ホームパーティーか何かか』
クリスマスだからある意味主役の会場なんだけど、日本人はあまり行かない場所だ。
『ううん 教会』




