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ボイタチさんとフェムネコさん  作者: 中の人
番外編②

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【B視点】おさんぽデート

「ただいま」

「おかえり」

 ひとっ走りしたあいつが帰ってきた。


 朝ラン後はできるだけ30分以内に食事を取ったほうがいいということで、帰るタイミングに合わせてあたしは食卓にご飯を並べ始めていた。


 米かパンか。

 聞いたところ、予想通り前者と返ってきたのできっちりお米も炊いて。


 実家にいたとき以来だなあ。こうしてちゃんとした時間にご飯食べるのって。


「……込んでる」

 あいつが驚きの声を上げた。


 一汁三菜みたいに気合い入れなくてもいいよと言われたけど、毎日ならきついけど、今日は特別だから。うん。


 ご飯。小松菜たっぷりの味噌汁。大根おろし付きの塩ジャケ。おつけもの。

 使っていい食材の中から、朝ごはんっぽいものをセレクトして作ってみた。


 うちでは毎日お母さんがこんな感じのご飯作ってて、あたしはその手間隙も知らずにばくばく食ってたんだよなー。

 今になって親の苦労が身にしみてくる。


 毎日お弁当ありがとうって言いつつ、休日は食事当番を請け負う父さんの気持ちがやっと分かったわ。


「いただきます」

 あいつと向かい合って手を合わせて、箸をつける。

「味の好みとかあったら言ってね」

 味噌汁のお椀に口をつけたあいつを、ちょっとどきどきしながら見つめていると。


「……うん。ちょうどいい」

「いぇい」

 あたしはちょっと大げさに喜びを表した。

 続けて飲んでいるので、お世辞ではないっぽい。出汁パック買っといてよかった。


「実家に戻ったみたいだ」

「あたしもそう思う」

 一人暮らししてからこういうの、しみじみくるんだよねー。


「ご飯のかたさはどや?」

「少し固めのものが好きだから、これでいい」

「よし。一致。気が合うね」

「白状すると、どちらが好きってことはなかったんだが親戚の家で出てくるご飯は柔らかすぎて、その、な」

「わかるわー。年取ると柔らかくないと食べないのかな」


 ちなみに、うちは両親ともども柔らかいご飯が好き。

 たまに粒がくずれたべちゃつき白米とか出ると泣きたくなるけど、好みがあるからしゃーない。

 そういう日はお茶漬けにしてごまかすのだ。


「ごちそうさまでした」

 食べ終わるのを待って、二人で片付け始める。

 空の食器だけが残されると達成感が湧いてくるよね。


 ジャーにはまだご飯が半分以上残ってるけど、こっちは夕飯用。保温にするのを忘れずに。


 洗い物はあいつがやってくれるということで、お言葉に甘える。

 代わりにあたしは洗濯物を干してくることにした。

 あ、下着類は自分でやるからってことで上着とパジャマだけね。


「今日のご予定は?」

 一通りの朝の支度が終わって、歯磨きを終えたあいつへ尋ねると。


「ウォーキング……いや散歩に行くか」

「丸一日ステイホームでもいいけど」

 あたしは横でずっとアプリの漫画読んでるから。おうちデートも嫌いじゃない。


「一緒にどこかへ行きたい気分になった」

「おやおや」

 それでお散歩ってことは、なるべくお金がかからないデートを選んでくれてるのかな。


「じゃ、のんびり行こう。天気もいいしね」



 そんなわけで、いつものジョギングコース周辺を一通りぐるっと歩き周ることにした。


 商店街はもう気が早いものでクリスマスムード一色だけど、河川敷や公園では天然の秋が迎えてくれる。


 桜はもう葉が9割方落ちて、新芽となるぼこぼこがむき出しになった枝が伸びている。

 イチョウは今が見頃。

 真っ黄色に色づいて満開のごとく覆い茂っている様は、通りすがりの人がスマホを構えるほどだ。


 あ、転がった銀杏は踏まないように。

 文字通りの鼻つまみ者になるので。


 公園の花壇には、モ○ゾーの色違いみたいなもふもふに固まった真っ赤な庭木が植えられていた。

 立て札にはコキアと書かれている。

 てか、紅葉前はまじでモ○ゾーじゃんこれ。


 意外なとこでは、ご家庭の柵にツルを絡めて花開く西洋アサガオかな。

 朝顔なのにこの品種は秋に咲くんだね。探すとあちこちで見かけるし。

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