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ボイタチさんとフェムネコさん  作者: 中の人
文化祭編・その後

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【B視点】農家って金持ち

「いちお出前は取るけど、お酒や乾き物は出ないから欲しい人はそこのコンビニで買ってってねー」


 ぞろぞろと男女を引き連れた委員長が呼びかける。

 さっきピ○ーラとく○寿司にTELもしてたな。

 特に前者は直接店舗まで取りに行くと1枚無料になるから、この中から何人か連れていくっぽいし。


 会費は一人500円。

 これなら、飲み屋行くよりは安上がりで済むから宅飲み万歳だよ。

 や、あたしはあいつに釘刺されてるからソフトドリンクだけどね。


「何にした?」

 コンビニから、やたら大きな袋を持って出てきたあいつに聞いてみる。

 ちなみにあたしは飲み物以外買ってない。ちょっと今はお財布の紐を固めないといけない時期なので。

 あと焼きそば食ったから今あんまり空いてないし。


「紙コップと割り箸、紙皿。あとウェットティッシュ」

 飲食物じゃないのか。でもそこまで頭回らなかった。

「女子力たけー」

「……別に。私のところで集まるときに、いつも持ってきてくれていた子がいたから」


 そうだったっけ? ごめんよ記憶から細やかな気遣いが抜けていて。

 委員長に見せたところ、すごく感謝してくれたのと準備不足だったことを謝られて全額返してもらったらしい。


 それからあたしたちは、委員長を先頭にご自宅まで談笑しつつ歩いていた。

 誰かが決めたわけではないけど、男子は男子、女子は女子で前後に固まっている。

 あたしは友人ヅラモードで、あいつや横の女子とキャンパスライフについてべらべらくっちゃべっていたんだけど。



「うんうん、わかるわかるー」


 あたしらの後ろ、男子の列にひとりだけ混ざる女子の甲高い声が響いてくる。

 で、そのたびにぐわっと立ち上る他女子の空気読めオーラがマジ怖い。


 あいつなんかは女子のギスギスに耐性ないから、胃痛を訴えてそうな顔でずっとあたしのほうを向いていた。

 今も無意識に腕組んでるね君。


 や、そういう目的の人も一人はいるかーって思ってたけどね。

 その子もなかなか可愛いし、ファッションはひらひらでめっちゃフェミニンコーデだし。

 自分に興味持ってくれる美人が嫌いな男子は少ないから、この場を利用してアピっちゃうのもわかる。

 出会いは基本大学中に作っとくもんだしね。


 男子も男子で、やっぱ構ってくれることに悪い気はしないからか会話はそこそこ盛り上がってる。

 同性から見るとあざてーって思うけど、あの子は基本的にトークが上手いんだよね。


 相手の求められてるポイントを即座に押さえて、心の隙間をお埋めにかかってる。

 人間観察に長けていて、少し大げさなリアクションで褒めるのもうまい。


 だから同性でも話してて気分が良い。

 話術で相手を落とすのも立派な戦略だから、あんまり咎める気にはならない。

 でも、他の女子の前で堂々とがっつくのはなんからしくないなあ。

 まるで姫だ。


「…………」

 そのうち、輪から外れたっぽい一人の男子生徒が歩を早めた。

 そのままこっちに混ざってくる。

 誰だっけ。米○玄師ばりに長い前髪で顔隠してるから浮かんでこない。


「どったん」

 あたしの隣にいた女子が、並んできた男子に声をかける。


「あぶれた」

 男子は背後をチラ見しつつ、大げさに息を吐いた。

 後ろの男子連中は完全に姫を囲む会になっており、一人だけ外れてる現状に誰も言ってこない。


「つまんねー女いれてんじゃねえよ。こっちは馬鹿話したいってのに」

 容赦のない一言を小声でつぶやく。

 どうやら、話し相手を姫に取られておかんむりらしい。


「まあ、こういった集まりも出会いの場ではあるからさ……」

 飲む前からあんまり波風立てたくないのか女子がフォローするけど、男子の愚痴は止まらない。


「ダチで固まってるとこに割り込むって。もうそれクラッシャーなんよ。あいつらも気を引きたいからちやほやしようとする。何とかして面白い話ひねり出して、楽しませんのが趣旨になっちまう。クラス会と合コンを履き違えてんじゃねえ」


 ……うーん、運が悪かったとしか言いようがないなあ。


 そりゃ、特殊な関係にあるあたしたちはともかくとして。

 大抵の人は同世代の男女で集まる以上、多かれ少なかれ下心はあるはずだ。

 で、もちろんこの男子やあいつみたいに、みんなでワイワイを楽しみたいって層もいる。


 会場についたら普通に飲み食いしてワイワイするだろうけど、今この場でハブられたのはきっついだろうなあ。


「いいよ。この場でどんどん吐き出してしまえばいい」

 意外なことに、ここであいつが横から口を挟んできた。


 確かに、今はそれがいいかもね。

 うちらは男友達ではないから求めている話し相手には叶わないだろうけど、愚痴を受け止めることはできる。


 やな例えだけど『姫ちょっとうざい』っていう利害が一致してるせいか、周りの女子も男子とそれなりに仲よさげに話していた。


 あいつとも、根底の性質が似通ってるのかそこそこ会話のラリーが続いていることにあたしはほっとしていた。


 ……なんだけど、あたしには一言もかけてこない。

 口を挟むことはあっても、一対一で話す機会が一向にやってこない。



 んー、あたしなんかしたかなあ。苦手なタイプなんだろうか。

 別にいいけど。



 やがて砂利で敷き詰められたでっけー庭と、でっけー屋敷と、おそらく収入源らしきでっけー打ちっぱなしが見えてきた。


 農家の財力すごい。

 委員長からは8LDKあると聞かされてあたしはたまげていた。



 さて、どうか楽しく行きましょうや。


 当たり前のように鍵のかかっていない戸を開け放つ委員長にまたたまげつつ、あたしたちは広間型の古民家へとお邪魔した。

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