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ボイタチさんとフェムネコさん  作者: 中の人
文化祭編

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【B視点】文化祭の思い出

 高校の文化祭。

 ぶっちゃけ、あたしは3年間を通してこれに大した思い出はない。


 こういう時だけパリピや意識高い陰キャが張り切りだすのも定番で、うちは妙にスケールがでかいお化け屋敷を2年連続で作らされてた。

 内装にこだわりすぎてめっちゃボンド臭かった。


 1年のときはみんなやる気なくて、休憩所でやり過ごそう言い出して。

 教師がお前らで4クラス目だボケとブチ切れてて、仕方なく謎ポエムや謎作文やお習字の展覧会になったのは黒歴史だったなあ。


 夜遅くまで残って、近くのコンビニまで買い出し行ったっけ。

 他クラスも同じ考えだったのか飲食物ごっそり売り切れてて、災害時かよって友人たちと大爆笑しながら少し先の大型スーパーに出向いたのはやたら印象に残ってる。


 あとはおそろのクラT(税込1500円)作って、デ○ズニーの耳みたいなへんなカチューシャ付け合って、あたしみたいに編み込みができる子は希望する女子の髪をずーっと編んでた。

 女装したごつい男子の髪も編んだ。


 あいつは、1年のときは仕事割り振られず突っ立ってるだけで苦痛って言ってたな。

 2年からは力仕事ができる要員って認知されるようになって、男子に混ざって重い機材や木材運ばされてたけど。


 当日はあのキラキラした謎の一体感に取り込まれたくなかったので、出席取ったらあたしはてきとーにあいつと校舎ぐるぐる回って、隅の階段でずっとだらだらしてた。

 教師主催のステージだけ見に行って、終わったら体育館のパイプ椅子を片付ける名目でクラスの片付けはブッチしていた。


 新任の若い女の先生がノリでうちらの制服を着て、ステージで誰よりも注目浴びてたことはたぶん一生忘れない。

 無理やりつきあわされたおばさんの体育教師も制服着させられてて、あれはあれでウケ狙い抜群だったからより盛り上がってたっけ。


 ちなみに担任が飯おごってくれるので、打ち上げにはちゃっかり参加していた。


 ……あれ、振り返ると意外と思い出あったりする?

 補正かかってるだけかも知れないけど。時間の流れって怖いね。



 そんなわけで、文化祭当日はあっという間にやってきた。


 あいつとは最寄り駅で待ち合わせ。

 ちょうどあいつの駅に向かう路線は、学校に通ってるときに利用していた駅につながっている。

 なので思ったより早く一緒に行動できるのは嬉しかった。


「おはよう」

 集合時刻より5分ほど前にあいつはやってきた。


 二人でおでかけってことを向こうも意識してるのか、家で会うときより服装は凝っている。

 化粧も、ほぼあたしのやり方を完コピできたと褒めたくなるほどにはばっちり決まっていた。


 モノトーンのライダースと足首まで隠れるタイトスカート。

 足元はレザーのショートブーツ。

 ストイックに映りすぎないように、首元をふんわり覆う白インナーを投入したことで柔らかい印象に中和されている。


 背が高い人にしか似合わない服装を難なく着こなしているわけだから、あいつそういう意味でのスタイルはいいと思うんだよね。


「どう、だろう」

「ぐー。です」

 外出着にふさわしいかとおそるおそる訪ねてきたあいつに、あたしはびしっと親指と人差指で丸のかたちを作った。


「……ありがとう、」

 お礼を口にしながら、あいつもあたしにちらちらと注目している。

 ちなみにあたしは、あいつと会うときは甘口系のスカートが多い。

 そりゃ、乙女心と言いますか。可愛いって思われたいので。


 なんだけど、今日は顔見知りの目もあるわけだから媚びた服装はやめてみた。

 あたしにしては珍しく、カジュアルなトータルコーディネートで通してみたわけだ。キャップ被ったの何年ぶりだろ。


 一応、フィット感のあるインナーで女性的なラインを出すことは忘れないようにしてみたけどね。


「……うん、いい。新鮮で」

 そう言って、あいつはあたしの真似をしようとしたのかそっと手を出した。

 体の横にちょこんと。小さく親指を立てて。


「よっしゃ」

 あたしは飛びつきたくなる衝動を必死に押さえた。公衆の面前だしね。

 でも、腕を組むくらいなら。いいよね。


「行こ」

 ひっつくあたしにあいつは一瞬驚いたけど、学校着いたらこんなふうにべたべたはできないってことで大目に見てもらえた。


「階段、のぼれない。これだと」

「ああ、そっか」

 腕組みタイムはすぐに終わった。

 あたしはあいつの後ろに続くように人混みに紛れて、階段を上る。


「…………」

 気付かれないように、服の端をちょっとつまんだ。

 なんなんだ、今日のあたし。寂しがりやにも程がないか。いくら会うの久しぶりだからって。


 甘えたい、でもあまり過剰なスキンシップはできない。

 デートみたいなことをしているのになんとも言えないもどかしさを抱えて、あたしたちは電車に乗った。

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