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ボイタチさんとフェムネコさん  作者: 中の人
クリスマス編
108/171

【B視点】聖夜だから◆

・sideB


 感度って、体温にももちろん影響する。


 寒い中ほっぺにぴとっとやられたら、ぎゃーやめろーって叫びたくなるよね。

 女子同士のボディータッチって基本、不意打ちじゃん。冬に限ってよくやられた。


 だからああいうのマジ勘弁だったんだけど、あいつと肉体的な接触が増えて気づいた。


 双方あったまってるときに触られるのは、弱いとこでも嫌じゃない。

 同意の上で、触ってほしい人にされてるってのが大きいだろうけどね。


 でもこの季節は、部屋にいても寒い。

 あったまってムードまで火がつくのに時間がかかる。


 てなわけで、あたしはぬくぬくくつろげるお風呂場はどうかと提案した。

 ここならすぐに洗えるし、色々すっきりして出られて気持ちよく眠りにつける。色々。


 二重の意味での濡れ場だね、これ。



「さっき帰ってきたばっかとか言ったけど、あれ嘘。ごめん」

 そう、あたしはちょっと前に帰ってあらかじめシャワーを浴びていた。


 理由は、髪洗うのにめっちゃ時間がかかるから。

 30分以上は要する。乾かす時間とヘアケアも入れると一時間はゆうに。


 そんな長い間待ってもらったら、せっかくのムードも冷めちゃうからね。

 面倒ごとはさっさと済ませてお膳立てしておかないと。


「どうりで体温が高いなと」

 あいつが納得したように頷いた。

 髪も乾かしておかないと風邪引くぞ、とさりげなく指摘される。


 髪は、まあ、またこれから入るわけだから。


 濡れたまま放置してると、頭皮にはよくないんだけどね。

 さすがに乾かすまで待ってもらうとなると、残業長すぎないかと怪しまれるからね。


「てわけで、先入ってきなよ。きりのいいところであたしも入るから」

 裸を見られるのが恥ずかしいってことは聞いてるから、あらかじめ湯浴み着を着ていいよと言ってある。


 ほんとは身体とか洗ってあげたかったけど、そこは全力で拒否られたので。


「わかった。その時は声をかける」

 少しだけ間を置いて、小声で頭あたりだったらいいよと言われた。

 どうやら、洗うポイントを譲歩してくれたらしい。


「あんまり、髪が冷えたままで待たせるわけにもいかないから」

 ああ、そこ気にしてるのか。

 さりげなく気遣ってくれるじゃないの。


「じゃ、ちょっとの間だね」

「すぐ終わると思う」


 脱衣所にあいつが消えていくのを見送って、あたしも準備に取り掛かる。


 何を? 指南書の暗記を。

 風呂場にスマホはあんま持ち込みたくないので。



 注意点、のぼせ防止のためお湯の温度はぬるめに。

 40度前後を。寒くなってきたら追い焚きを。


 汗もかくから、貧血防止に水分補給を。ペットボトルを忘れずに。

 風呂場自体を温めておくこと……はさっきまであたしが入ってたからクリアはしてるか。



 やがて10分くらいで、あいつからどうぞと声がかかった。

 服を脱いで、あたしはある姿で脱衣所へと向かっていった。



「…………」

 風呂場に入ってきたあたしを見て、その格好はどうした? とあいつが聞いてくる。


 や、前温泉行った時に終始どぎまぎしてたじゃん。

 だからあたしなりに隠したつもりだったんだけど。


「なるべく服っぽいやつにしてみた」

 あたしが着ているのは水着だった。

 クリスマスに水着とか、季節外れにもほどがあるよね。


 ひらひらのオフショルダータイプで、ミニスカとへそ出しの露出はあるものの。

 一見すると、バカンスにいそうなギャルにしか見えない。


「これならじっくり見れる?」

 スカートの端をちょっとつまんで上目遣いで見上げると、あいつは微妙に目をそらしつつ感想を述べた。


「……素材がいいから。いいと、思う」

「本音は?」

「素材がいいから、却って色っぽい」


 おい。

 好意的に捉えれば、何着ても似合うってことなんだろうけど。

 いやらしい意味も含めて。


 ま、首ごとそむけないぶんよしとしましょう。

 ぶっちゃけるとあたしも、温泉のときはなんでもなかったのに意識しちゃってるからね。


 むき出しの腕とか、鍛えてんだなあって感じの肩幅とか。

 抱きしめられたいなあ。

 ってなんか本能的に求めてしまいそうになる。



「ちゃんと目はつぶってね」

 屈んで頭を垂れるあいつの背後に周って、あたしはぬるめのシャワーを浴びせていく。


 こうして洗うの、初めてのはずなのに初めてじゃないような気がするんだよ。

 いつかやってあげてたような。

 いつだっけ?


 シャンプーをしっかり泡立てて、もこもこの両手であたしはまんべんなく頭全体になじませていく。


 髪、短いってほんとやりやすいよねえ。

 あたしは髪の量多いから、一回のプッシュじゃ絶対地肌まで届かんし。


「おかゆいところはございませんかー」

 定番の台詞を放って、地肌を揉むように汚れを落としていく。


 シャワーで泡を落としている時に、ふと。あいつが言いづらそうに声を上げた。


「洗ってもらっているところ悪いが」

「なにか」

「……そんなに、密着することか」


 ち、ばれたか。

 あたしは背後から洗っているのをいいことに、背中にべったり張り付くようにしてシャワーを当てていた。


 いやあ、広い背中を見ると飛びつきたくなるもので。


「当てたいのよ、ってやつ?」

 背中にダイブしたいだけでそのつもりはなかったんだけど、服越しでもあいつには分かっちゃうか。


「そんなはしたないことをするんじゃありません」

「そのはしたないことをこれからするんでしょうに」


 体全体で洗ってやるソープ嬢ほどじゃないんだからさー。

 なんかツボってしまったので、あたしはずっと笑いながら頭を洗っていた。



 無事洗いっこ(一方的)は終わったので、ようやく二人で浸かることになった。


 新しめの浴槽ではあるけど、あいつの身長では十分に足を伸ばせるほどの大きさはない。

 つまり、必然的に膝の上にあたしが乗っかる体勢となるわけで。


「重くない?」

「風呂の中であるから、そんなには」

「ちゃんと水分補給はするんだぞー」


 お互い水を飲んで、ふうと息をついたところで腕が回される。

 そのままシートベルトみたいに、お腹あたりにあいつの両手が組まれてきて。


 背中へと伝わる鼓動から、もう待てないんだなあって分かった。


「いいよ」

 静かに、そっとささやくように。

 あたしはタガを外した。


「我慢しないでね」

 腕を取って、自身の頬へと重ねる。

 擦り付けるように。


「合言葉だけ。忘れないように」

「りょーかい」


 言うが早いか、頬に当てた手がすっと動いた。

 顔の輪郭を撫でるように、ゆっくり顎をすべっていく。


「……っ」


 捉えるように。

 首元へと指があてがわれた。

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