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目の保養は大好物ですが、恋愛対象ではありませんっ!  作者: 深月みなも
王立学院、一年生のお話
16/26

これが入学式ですか?part②



この間の夜会ぶりなので、約二ヶ月ぶりの顔ぶれについ話し込んでしまったが、入口で立ちっぱなしでは他の人に迷惑なので(アリエラしだした事だったが)、中へ行こうと五人が室内へと足を踏み入れる。

そこで物足りなさを感じて、なんだろうと考えたアリエラ。あぁ、と声を上げた。


「そういえば、アドルフ様とクレイ様は?」


マリベルと似た瞳を持つ人とその付き人がいないのだと気づく。


「兄達は今年から学院には入りますが、編入生なので入学式は参加出来ないのです。なので先に寮へ行っておりますわ」


なるほど。よく考えれば編入生とは言葉があまり聞き慣れていないだけで、前世でよく聞いていた転校生と同じだ(前世でも編入生という言葉はあったが、単純にアリエラが聞き馴染みがあまりなかっただけ)。

ならば学年の違う編入生が、いくら入学式と同じ日の編入だとしても式に出ないのは当然の事だった。


「なら寮に行ったらご挨拶に伺おうかしら?」

「ありがとうございます。なら一緒に行きましょう?兄もきっと喜びますわ」

「……クレイのことも忘れないであげてね、お嬢様」

「あら、そうでした」


アリエラの提案に嬉しそうに頷いたマリベル。

マリベルも、もしかしたら後で兄の所へ行くつもりだったのかもしれない。

ただヒースにアドルフだけではなくクレイもと言われて、いけないとマリベルはお茶目に笑った。

マリベルは完全にクレイの事を忘れていたようだ。

アリエラははじめからクレイにも挨拶する予定だったので、ヒースと一緒で苦笑してマリベルを見ていた。


学院が提供している生徒用の寮は、男女同じ建物だ。

男子寮、女子寮と別れていない為立ち入り禁止という事もない。

ただ五学年分の生徒となると人数が多いため、とても大きな寮が四棟もあるので、どこへ振り分けられるかは実はアリエラもまだ知らない。

荷物を置きに行ったヴィーは先に入口で確認したら教えてもらえるが、本来なら新入生はこの式のあとの振り分け表を見るまで分からないのだ。

なのでアリエラも自分がどこの寮なのか分からない。

アドルフもクレイも式の参加者では無いので、ヴィーと同じく寮へ行けば教えてもらえるのだろう。

先に寮で休んでいるなら、出入りは自由なので後でどこの寮か係の人に聞いて挨拶に行こうと決めた。


中に入った五人は、待機用に設置されている沢山の木でできた長椅子の空きがないかを探してみる。

既に人が座っているので広い待機室の中から空きを探すのはなかなかに困難で、見た感じ五人分ピッタリ空いているところは流石になさそうだ。

別に座れなくても問題ないのだが、男性陣がせめてアリエラとマリベルはと並んで座れそうな所がないか探してくれている。

アリエラも空きがないか見渡していたら、人の多さで埋もれがちだが、その中に一瞬見えた黒髪にぴたりとその動きを止めた。


「あら?あそこにいるのって…」


アリエラは一人その場を離れ、その黒の見えた方へ向かった。


「やっぱり。アカバネ様、お久しぶりです」


そこに居たのはやはり見覚えのある姿で、この間和の国の装束ではなく制服を見に纏ったコウゲツがいた。

制服ということもあるが、髪型も以前見たハーフアップではなく高い位置で一つに纏めた、所謂ポニーテールになっていて、二度の夜会で会った時とはまた随分違った印象をアリエラに与えた。

それでもすぐに気づいたのは、やはりこの国では珍しい純粋な黒の髪だからだろう。


長椅子の一番端に腰掛けていたコウゲツ。

異国の特徴を備えた彼が物珍しいのか、遠巻きにちらちらと見ている人はいても、遠慮がちに距離を置かれていた。

なのでその席は全ては埋まっていなくて、あと二人ほどならば並んで座れそうだ。

腕組みをしながら目を瞑っていたコウゲツがアリエラの声に目を開けた。


「アリエラか。久しぶりだな」


アリエラを見たコウゲツはその凛々しい顔で笑みを作った。

こちらで生を受けてからは、貴族という家に生まれしまった為、アリエラを呼び捨てでで呼ぶのは家族や家族のような人からぐらいだ。

こちらの国では基本的に貴族同士でも敬称を付けることを徹底しているから、コウゲツに呼び捨てにされて不覚にもドキリとしてしまった。

自分の方がコウゲツよりも年下だし、ここでは立場など関係ないので気軽に呼び捨てで呼び合うことも良しとされているから、何の問題もないが少しだけ照れてしまう。


「はい、お久しぶりです。アカバネ様のその姿はなんだか新鮮ですね」

「自国の服とだいぶ異なるから苦戦したが、何とか着れてよかった」


雰囲気の違うコウゲツにそう話しかければ、今度は苦笑しながらシャツの襟を摘み軽く引っ張った。

確かに着物の様な構造の服の方が着慣れているのであれば、ボタンが多く襟の様に首元に厚みのある服は慣れないだろう。

それでも崩れた様子もなく着こなしているのだから凄い。ネクタイに至っては完璧なフォルムである。

きっと異国から留学してきたのだし、従者も連れてきて整えてもらったのだろう。

そう思って辺りを見渡すが、それらしい人が見当たらない。

和の国から来てるのであれば、コウゲツの様に前世でいう日本人らしい風貌のはずなのだが、当てはまる容姿の人は近くにいないし、従者の制服の者も近くには一人しかおらず、その人は明らかに別の人の従者だった。


「付き添いの方は器用なのですね。とても上手に着れてますよ。その方は何処かに行かれたのですか?」

「ん?付き添い??」


不思議に思って聞けば、軽く顔を傾げられた。


「あれ?もしかしてアカバネ様は単身で入学されるのですか?留学生だったので、てっきり付き添いの方と入学されるのかと思っていたのですが…」

「一応数人自国から共は付いてきているが、学院には一人で入学することにしたんだ。だからこの国で借りている住まいに置いてきた」

「え?でもアカバネ様も寮で暮らすのでは?そちらの家にアカバネ様がいないのに、付いて来られた方はこの五年間どうされるのですか?」


主のいない家で従者だけ取り残されてどうするのだろう。ましてや他国で。

いくら学院に長期休暇があるとはいえ、その休みの為だけに待機するなんて、働く側としてはある意味手間のかからない贅沢な環境のような、でも働きがいのない暇な環境のような。


「流石にこの五年間ただ置くわけにはいかないからな。滞在中はこちらで商売をさせるつもりだ。……一人、修行がしたいと勝手に付いてきた変わり者もいるが」

「しゅ、修行…ですか?」

「武術馬鹿なんだ…留学が決まった際に、文化の違いの話をしたら嬉々として付いてきてしまって。扱う武具や戦闘スタイルの違いと、こちらには魔物と呼ばれるものがいるという所に興味を持ってしまったらしい」


コウゲツの家の滞在中に商売をさせるという発想は然ることながら、その付いてきてしまったという人もなんとも自由な行動だと呆れを通り越して驚いた。


何よりコウゲツの家の懐の広さが凄い。

いくら商売をといっても、それはあくまでどうせやることがないならというような言い方だったので本来からの目的ではないだろう。

ただ他国に行くコウゲツを心配し付き添いが本来の目的のはずだし。


寮に入るのであれば家など借りず付き添いを規約上の人数に絞って入校させてしまう方が五年という期間を考えれば今とっている行動よりは遥かに安く済むし、何よりコウゲツの安全や身の回りの事について家の人達も安心できただろう。

それを他国で家まで借りて、数人の従者を卒業までの五年間連れてくるというのは随分なお金の流出になる。

それをできるのだからコウゲツの家は相当な資産を持っているという事だ。

しかも約一名はただ旅行気分で来てる感が否めない。

自分も家系的に心身を鍛える事の大切さは知ってはいるものの、そこまで熱を上げるほど鍛錬に勤しむとは…知り合いの脳筋おじ様を思わず思い浮かべてしまった。


(修行って…それで五年もこちらにいるというのは完全に仕事ではないのでは?それは許可してもいいものなのかしら…)


そう、脳筋おじ様ことヒューおじ様はあくまで身の回りで済ませるからいいのだ。

後は自国他国の遠征先やらで勝手に戦闘経験を積んでくる。

何より家長としてやるべき仕事をした上での行動なので諫められるほどではない。…約束や決まり事をついうっかり忘れない限りは。


これでコウゲツの付き人のように物足りないと勝手に仕事もせずに家を空けて遠くの他国に行った日には、奥様であるティアナ様でも流石に離婚を口にしかねないほどの逆鱗に触れることだろう。


そんな話を聞いていたら、一体コウゲツとはどんな家で育ち、どのような人なのかとふつふつとした好奇心が生まれてしまった。


そうでなくとも日本と似たところのある和の国の事は聞きたいことも多い。


コウゲツに出会ってからもう一度和の国について本を漁っているが、本の知識だけでは足りない事や想像できないことも、そこで暮らしていたコウゲツならばもっと分かりやすく教えてもらえるだろう。

流石に家庭のことはデリケートなことも多いので不躾に聞いたりは出来ないが、コウゲツから話されるか聞けそうな機会があったら少し聞いてみようと思う。


和の国の事はもう少し打ち解けてきたら是非ガッツリと質問させてもらうつもりだけど!


「そうなんですね。文化の違う異国で過ごすのはとても大変なのに、一人で入学されてたなんて凄いです」

「ある程度知識は叩き込まれているからな。余程のことがなければ大丈夫と判断した」


好奇心にうずうずしながらも、アリエラは呑み込んで平静を装った。

勉強してきたというコウゲツは余裕の笑みを浮かべている。


確かにコウゲツはこちらの国の言葉も使いこなしているし、異国の夜会の場だというのにマナーなども問題なかったように思う。

これだけ落ち着いていられるのだ。

アリエラが考えているよりもコウゲツはクレセアルの事をより詳しく勉強してきたのだろう。

それでもやはり一人で異国の学院に来るのは凄いことだとアリエラは思う。

もしアリエラが逆の立場なら、幾ら知識があってもやはり不安で仕方ない。一人ではなかなか行けないだろう。

今でさえやはりヴィーがいないのは少し心細いし、ジルがいるからまだ何とかなっているだけで、やっぱり不安だと先程改めて感じたばかりだ。

自分の育った国の学校生活でも、今までとの生活の違いにこんな風に感じるのだから、それが他国からならもっと感じてしまうと…アリエラは想像してふるりと小さく体を震わせた。


(絶対……無理だわ)


まず、他国の言葉をマスターしなきゃいけないのが自信がない。


(前世でも英語って苦手だったのよね…というか他の国の言葉の時点で発音とか使い方が難しくて)


あの地獄の時間を思い出した。


授業中は教卓に立つ先生から指名されないようになるべく気配を殺していた。

運悪く指名されてしまい読み上げると、やっぱり発音が上手くいかず何度かやり直させられて友達やクラスメイトに半笑いされていた。

ヒアリングなんて早すぎて何を言っているのか理解する以前に聞き取れていなかった。

なんとも苦々しい記憶達だ。


コウゲツはきっと頭もいいのだろう。本当に凄い。


「それでも凄いです。私に出来ることがあれば遠慮なく言ってくださいね」


少し自分とのスペックの差に落ち込みながらも、本心からアリエラはコウゲツに告げた。


「ああ、助かる。それより、アリエラは座らないのか?私の隣だと嫌だっただろうか?」


実はずっと座らないか聞きたかったけれどタイミングを逃してしまったとコウゲツから謝られ、慌ててアリエラは首を振った。


「あ!そうじゃないんです。実は先程マリベル様達と会いまして、一緒に座れる場所を探していたのです。アカバネ様を見つけてつい私だけ探してる途中にこちらに来てしまって。だからそろそろ戻らないと…」

「ならここに座ればいい。他の場所は殆ど埋まっていただろう?」


全員座れるかは分からないがと言ってコウゲツは立ち上がると、先程まで座っていた場所にアリエラの肩を軽く押して座らせた。

お言葉はありがたいけど何故コウゲツが立ち上がって、しかもその座っていた場所に座らされたのだろう?

アリエラはきょとんと、座ったことでずっと上にあるコウゲツの顔を見上げた。

不思議そうにするアリエラに笑いかけたコウゲツは優しい手つきでアリエラの頭をぽんぽんとする。


「今日もお前の幼馴染と一緒だったか?」

「はい。ジルも一緒に席を探しています」

「そうか、なら……ああ。いたな」


とりわけ背の大きいコウゲツは、辺りを見回すとそう呟いた。


「ジル、こっちだ」


軽く手を振り、コウゲツはジルの名前を呼んだ。

どうやらジルを探してくれていたようだ。


コウゲツに気がついたジルがアリエラも待つ場所までやってくると、二人が軽く互いに挨拶を交わしてこちらを見た。

ちゃっかり座っている事に呆れられられながら、コウゲツからマリベル達も呼んできて欲しいと言われてジルはまた人混みを抜けて消えて行った。


「アカバネ様は身長が高いから、こういう時凄く羨ましいです」


『待ってよう』とまだ立ったままだったコウゲツに言われた時、見上げていたらつい無意識に呟いてしまった。

アリエラは身長が女の子の中でもそう大きい方ではないので、よく人混みなどではすぐに視界が塞がれてしまう。

だから余計に迷子になるのだ。


どうやったらそんなに大きくなれるのだろう…なんて羨ましく思っていたら口から漏れてしまっていた。


アリエラが漏らした言葉にコウゲツはワンテンポ遅れてくすりと笑うと、その大きな身を屈めて『私はそのままで十分可愛いと思うぞ』と慰めの言葉をくれた。

身長が欲しい理由は可愛さとかではないのだけど、その美貌と大人の魅力を持ち合わせるコウゲツに覗き込むように言われてしまい、アリエラはぽうっとなりながらありがとうを告げた。


(やっぱり、アカバネ様も癒される容姿だわ)


和の要素が強いその顔立ちは、いくら馴染みがあろうともそこら中に転がっている容姿ではない。


理想はこんな至近距離ではなくもう少し距離を持って観察をしたいが。


観察を趣味としてるアリエラなりのこだわりには違反していても癒されるものは癒される。

よって、せっかくだから拝んでおこうと至近距離でのコウゲツを少しの間楽しんだアリエラ。

コウゲツもジルを待っている間はそのままの状態でいたので、二人でまた他愛のない話をしながらジルがマリベル達を連れてくるまでアリエラはその後尊顔を楽しめました。


(眼福………)


その後はジルが案内したマリベル達と、マリベル達が探している時に出会ったとキリアンも合流して夜会出会った同学年メンバーが揃った。


「アリエラ嬢、アカバネ様、お久しぶりです」

「キリアン様、お久しぶりです」

「久しぶりだな」


皆が来たので一度席を立ったアリエラの元に、キリアンが近づいてきて挨拶をする。

互いに挨拶を終えると、アリエラがキリアンに話しかける。


「お母様とカミュー、セレナは元気でいらっしゃいますか?」

「とても元気ですよ。母も体調がすっかり良くなったので、あの後から皆で観光したり楽しんでました。ただ、今日から学院が始まるから出る時に二人が相当ごねてましたけど……」

「大好きなお兄様に暫く会えないのが悲しかったのね」


うちのウィルもそうだったし。

まだ幼いあの二人なら、何とか引き止めたくて泣いてしまったのかもしれない。

引き止められる側としてはとても嬉しくもあるのだが、困ってしまうのも分かる。


「大泣きで引き止められて、何とか説得出来たと思ったんですけど…母が言った一言で、今度はずるいと怒り始めてしまって。お陰で予定よりもだいぶ来るのが遅くなりました」

「お母様はなんて??」


やっぱり大泣きしたらしい。予想通りで、キリアンの苦労を思えば笑ってはいけないけれど、つい顔には笑みが浮かんでしまった。

それにしても泣いていたのに今度は怒るとは一体何が?


「アリエラ嬢に宜しくと。それを聞いて、アリエラ嬢と僕だけ会えるのがずるいと怒られました」


参ったと頭に片手を当て項垂れているキリアン。

こないだといい、あの二人の中で私の位置づけが随分と高くなってやしないか?と思った。

見た目のチャラさとは反して、弟妹想いのキリアンにどうやら自分のせいでも朝から苦労させたようでちょっと申し訳ない。


「なんだかすみません…」

「ああ、アリエラ嬢は何も悪くありませんから。ちょっとあの二人がアリエラ嬢のファンすぎるだけです。ただ、このままだと口も聞いてくれなくなりそうなので、学院の休暇の際など時間があればで構わないのであの二人にも会ってやってもらえますか?」


キリアンはそう苦笑して答えてくれた。


「勿論です。是非遊びに行かせてください」

「ありがとうございます。アリエラ嬢が来て下さればわあの二人の機嫌もすぐに治ります」


ほっと息をつく姿は本当に優しいお兄ちゃんの姿だった。

チャラそうな見た目なのに…ギャップだなと見た目でばかり判断しては駄目だが、何度目かのそのギャップにそれはそれで女子的にあり!とアリエラは心の中で頷いた。


席にはアリエラとマリベル、嫌がっていたがエルマーの三人が座らせてもらい、残りのコウゲツ、ジル、ヒース、キリアンの四人は席を譲ってくれていた。

アリエラがコウゲツにここは元々コウゲツが座っていたのに座れないと自分が立とうとしたのだが、いいからとそっと手で制された。


「アリエラが座ってくれ。式もそれなりに長くなるだろうから、今の内に座って休んでおけ」


せっかくの行為を無下にも出来ず、何度目かでアリエラはお言葉に甘えて腰掛ける事にした。

ジルもそうだがコウゲツもかなり紳士的なようだ。


ちなみに『僕も…』と立とうとしていたエルマーは、ヒースから『席がないなら立たせるけど、あるなら別』と強制的に座らされていた。

納得いかないとエルマーは顔でも訴えていたが、ヒースに年功序列と言われて『年上の言葉には従え』とそれ以上取り合ってもらえなかった。

ヒースの言うように、確かにこの中で一番年下なのはエルマーだ。

逆らうなと言われてしまったエルマーからは不機嫌さがだだ漏れだ。


「全く、ラッキーぐらいに思っとけよ〜。俺だったら喜んで座ってたけどね?」

「じゃあヒースが座ればいい」

「俺にも一応年上で先輩なプライドがあるんです〜」

「何それ」


その様子を見てヒースが軽口を叩く。雰囲気を和らげようとしてのことだろう。

エルマーもエルマーで、不機嫌ながらもヒースと言葉のやり取りを交わしている。

その様子を傍から見ているとどうしたって二人は仲良しにしか見えなかった。

兄弟のような親しさのお陰で変な空気にはならず、ひやひやすることもなく安心して見ていられる。


「あの二人は昔からあんな感じなのです」

「素敵な関係ですね」


マリベルがこっそりとアリエラに耳打ちし、二人でぷっと小さく吹き出した。



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