1日の終わり
俺は大量に受注した雑用依頼を次々とこなしていくのだった。修理には回復魔法を、掃除では火魔法で対象を焼き尽く風魔法で灰を魔王城方面へ飛ばし、荷物の運搬は依頼主に回復魔法をかけてムキムキにして自分で運ばせ、子供の訓練では洗脳魔法により戦闘訓練を脳内の記憶に埋め込むことで、歴戦の戦士と同じ技量を与えるのだった。依頼をこなすついでにばあさんの病を治したり、アフターケアは忘れない。
こうして日が傾く前にすべての仕事を終えてギルドに戻るのであった。
「お疲れ様です、カイヤさん。依頼のほうはいくつ終わりましたか?」
「全て終わらせてきた。依頼書はこれだ。」
「えっ!?全部サインが入っている!こんな短時間でこれだけの仕事をこなすだなんて、信じられません。」
「信じられなくとも、目の前にある依頼書が答えだ。早速報酬をもらおうか。」
「かしこまりました。ええっと…全部で銀貨45枚と銅貨50枚ですね。」
雑用仕事ならこんなものか。しばらくの宿代にはなるな。もちろんドラゴンの報酬はあるが、そちらは冒険者になる前の報酬だし、いざというときにとっておくことにしよう。
「それとおすすめの宿はあるか?今晩泊まる場所を探したい。」
「それなら「床鍋亭」というところがおすすめですよ。そこの料理がおいしいんです!」
「ふむ、ならばしばらくはその宿に泊まるとしよう。」
俺はそのまま宿屋へと向かった。冒険者ギルドをでて大通りを進み、街の東側の一角にその宿屋があった。2階建てで全部で6室といったところか。年季は感じるが、きちんと掃除されているな。
「すまない。しばらく部屋を借りたいのだが。」
受付には体格のいいおばちゃんがいた。残念ながら女性はムキムキではないらしい。
「宿泊かい。一泊銀貨3枚だよ。食事は一回につき銅貨50枚だよ。」
「それならばまずは10泊、朝食と夕食をもらおうか。」
「なら宿泊料は先払い、食事代はその都度払ってくれ。」
俺は銀貨30枚を払い部屋へと入る。部屋にはベッドが一つと非常に簡素だが、掃除が行き届いており埃は見えない。あらためて火炎魔法で部屋を浄化滅菌する必要はなさそうだ。
「さて、人間としての生活の初日が終わったが、存外良いものだな。」
魔王であったころは何もしなかった。魔力があれば生きていくことができ、何かをするために努力を必要としない。そんな身体であったために退屈であった。唯一関わりのあった生物である勇者はストレスの種でしかなかった。
「しばらくは、雑用をして暮らすか。俺の領域でみすぼらしい姿をさらされるのは不愉快だからな。」
こうしてあわただしい1日が終わったのだった…
いろんな作品を読んでて、この内容で1日ってありえないだろって思うこと多かったんですが、書いてみると1日の情報量増えますね。