念願のアレ
「これで登録は終わりだ。次は持ってきた獲物の納品だな。こっちについてこい。」
ガイスは裏口から出て隣の空き地に進む。そこには屋根だけ設置された広場があり、何人もの職人がテーブルの上で魔物を解体していた。
「おーい、ギルはいるか?」
「ギルドマスターが直接来るとは何の用だ?」
またまたハゲた大男が出てきた。その風貌は山賊といった感じで、ガイスの兄弟と言われても納得できる。というか筋肉多いな。
「ああ、こいつはカイヤという新人冒険者なんだが、とんでもない獲物を持ってきたんだ。おそらくこの中で解体できるのはお前ぐらいだ。」
「ほう、そんな大物なのかい。それで、その獲物はどこにいるんだ?」
「カイヤ、出してやれ。」
俺は広場の隅にドラゴンを出した。
「今どこから!?それにこいつはすげぇな!普通のドラゴンより一回り大きいし、鱗も硬そうだ。それに何より、状態がいい。ほとんど傷がないじゃないか!」
「やはり鮮度が大切だからな!こいつを売りたいんだが、可能か?」
「売ってくれるなら大歓迎だが、これだけの大物となると、金貨1000…いや2000はくだらないぞ。」
「ところで銀貨とか金貨とかってどうなってるんだ?金ということは分かるが、価値がわからん。」
「いや、知らないなら登録の時に聞いてくれよ…って街に来るのが初めての田舎者だったな。まぁいい。貨幣は銅貨、銀貨、金貨の順に価値が高い。銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚だ。ちなみに宿に泊まるなら銀貨2枚程度、飯は大体銀貨1枚弱だな。当然だが金貨とかいっても純金じゃねぇぞ。ただのメッキだ。」
ふむ、ということは大金が手に入るということか。
「よし理解した。金はあって困るものではないと知り合いも言っていたしな。金貨2000枚で売ろう。」
「いや、売ってくれるのはありがたいが、ギルドにそんな現金は…」
「金がないのか。はぁ…仕方ない、つけておいてやる。金貨100枚はまず払ってもらう。残り1900枚は必要になったら請求する。」
「いいのかよ?ぐだぐだ言い訳して払わねぇかもしれないぞ?」
「問題ない。その時はギルドごと潰すだけさ。」
「そ…そうか……そういえるあんたが恐ろしいよ……しかもその実力があると思えるところが恐ろしいぜ。」
見知らぬ男にここまで世話を焼いてくれるやつだ。悪い様にはならないだろう。
金貨のつまった(使いやすい様に銅貨と銀貨も混ぜてくれた)袋を受け取りアイテムバックにしまい、冒険者ギルドへと戻ってきた。
「俺が案内するのはここまでだ。あんたは登録したばかりだからGランクから始まるが、すぐにAランク…いや、Sランクまで届くかもしれないな。ドラゴンは登録前の功績だから評価されないが、強い魔物を持ってくれば、cランクまではすぐあげられるからな。」
「色々と世話になったな。期待していろ。恩義に対しては恩義を返すのが俺の流儀だ。」
こうして冒険者登録と金を手に入れた俺は、待望のアレを買いに行く。
「おい!店主はいるか!」
「いらっしゃいませ。何かご入用でしょうか?」
「うむ、服をあるだけ売ってくれ。」
遂に服を着ることができたのだった!