やっとこさ冒険者登録
説明をさりげなく挟むのって難しい…
「イリュージョン」
「うおっ!急に服が現れやがった!」
幻影魔法により服を着ているように見えているだけなのだが、今はこれでいいだろう。
アイテムボックス空間にドラゴンをしまうと、街の中へと進んでいく。
「ところでここはなんていう街なんだ?」
「ここは最果ての街だ。魔王城に最も近い街で、人間の住む領域の最果てという意味だな。魔王城に近いせいで周辺に現れる魔物も強力でな。強い奴はいつでも大歓迎だ。勇者様が魔王を倒してくれたらこの街も平和になるんだろうけどな…」
あれ?俺倒されたんだけどな?早く帰りすぎたかな?
「魔王はそんなに危険なのか?」
「魔王は魔を統べる者だろ?魔王を倒せば魔物は人わ襲わなくなるのさ。」
そんなことないのにな。確かに魔王は魔物を操れるし、昔の魔王には魔物を使い人間と戦争をすることもあったらしいが、俺はそんな面倒なことはしてない。だが襲うなとも言ってなかったので、昔のまま襲い続けているのだろう。魔王がいなくなれば新しく命令を出す者がいなくなるので、この先もずっと人間を襲い続けるだろう。まぁいざとなればなんとかなるが。
「そうなのか。その勇者はどこにいるんだ?」
「1週間前に街に出たきり帰ってきてないから、魔王城に向ったんじゃないかな。大体片道2週間かかるから、まだしばらくは帰ってこないだろう。」
2週間もかかるのか?
「そんなに魔王城は遠いのか?」
「直線距離で言えば1日で到達できる距離だが、それこそお前の倒したドラゴン等の強力な魔物がうようよしているからな。少しずつ安全を確保しながら進んでいくと、そんだけかかるらしい。」
なるほど、魔物を倒し強くなりながら魔王に挑むということか。
「ついたぞ。ここで冒険者として登録してもらう。それが街に入ることの条件だからな。ここまで来たら嫌とは言わせないぞ。」
門番とそんなこと話してたのか。戦力が必要とか言ってたし、ある意味早く着いて正解だったな。魔王が倒されたと分かっていたら、こんな得体の知れない力だけありそうな奴は街へ入れようとは思わないだろうし。
「元々冒険者志望だ。文句はないさ。」
3階建ての木造建築。スイングドアをくぐると左手には酒を飲んだムキムキな男たち、真ん中奥にはカウンターが広がり人間の女が受付をしていた。右手にはコルクボードに大量の紙が貼られていた。
ガイスはそのままカウンターは向かう。
「リリー、期待の新人連れてきたぞ!こいつの冒険者登録してやってくれ。」
リリーと呼ばれた女性は25歳といったところか、赤い髪に赤い瞳の眼鏡をかけたキャリアウーマンだな。
「急にいなくなったと思ったら、急に戻ってきて、説明して下さい!」
「あぁ、すまんすまん…」
ギルドマスターに意見を言えるってことは、仕事ができるんだろうな。
なんて考えていると説明が終わったようだ。
「ええと、カイナさんでしたね。冒険者登録と言うことで、まずはこの紙に血を垂らして下さい。するとあなたの名前、ステータス等の個人情報が紙に登録されます。この紙は大切に保管して下さい。再発行には銀貨一枚かかります。また登録用紙の写しを一部当ギルドで保管させていただきます。ここまでで質問はありますか?」
ないです。
「ではこのままランクの説明をさせて頂きます。冒険者ランクはG〜Sランクまで。最初はGランクから始まり、比較的安全な薬草採取や街中のお手伝いなどになります。最高ランクであるSランクは現時点では勇者様一人だけとなり、実質的に最高ランクはAランクとなります。ランクの判定基準は同ランク帯の魔物を1人で倒せるかが判断の一つです。cランク以上は昇格条件に面接が含まれます。強い人だからって悪い人を昇格させてしまえばギルドの管理能力を疑われてしまいますので、当然と言えば当然ですね。説明は以上となりますがよろしいでしょうか?」
「あぁ問題ない。」
いや、問題ならあるが、些細な問題だ。この紙は吸った血から相手の魂に刻まれた情報を記録している。つまり偽名が使えない。いや、人間であれば大丈夫なんだろうが、俺の本質は魔物だ。その魂の在り方は人とは違う。何が言いたいかといえば、魔王の名前は魔王なのだ。魔王として生まれてきた者なのだ。しかし名前欄に魔王と出てきたら変な疑いの目を向けられるのは明白。ここは血を介し魔法陣は干渉し名前はカイナと表示されるようにしておこう。
「よし、血を垂らすぞ。」
さりげなく血と魔力を繋ぎ、魔法陣に干渉する。
俺にかかれば朝飯前…あっ…
名前 カイヤ
体力 測定不能
敏捷 測定不能
魔力 測定不能
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軒並み測定不能だが、それより力みすぎてナがヤになってしまった。まぁ他にインパクトあるし、バレないかな。
「なんだこりゃ!全ての項目が測定不能じゃねぇか!どんだけの力を持ってやがるんだ…あとなんで名前が違うんだ?」
「勇者様は力だけは測定不能とでましたが、他はSSSランクでした。勇者様以上の力…あとなんで名前が違うのかしら?」
バレました。
「オラ訛りがあるからだべな。」
「いや、さっきまで普通に喋ってただろうが!まぁ名前なんて自由に表示できるからな。自分の思ってる名前が表示されるから、たまに別れた女の名前が表示されたりするんだ。ちなみに再発行は銀貨一枚な。」
人間だとそんな適当なのか!しかもこれで再発行でも金取るのかよ!
「いえ、俺はカイヤです」
転生初日、名前が変わりました。