街へ行こう
転生はうまくいった。魔王城の秘密の部屋に置いていたため勇者には見つからなかった。若い16歳頃の黒髪黒目の男性だ。勇者を参考にさせてもらった。顔立ちはエルフを参考に整った顔にした。やはり元魔王である以上、美しさは必要だ。そして魔王の魂の器とする以上、その力に耐えうる強さが必要だった。といっても最低限の強さしかない。ほんの勇者100人分だ。足りない部分は技術で補えばいい。
「よし、まずは一番近くの街に向かうか」
魔王城から南に数十km進んだ場所に街があったはずだ。そこで冒険者に登録し、魔物を倒して路銀を得る。完璧なプランだ。
「ゴアァァァァーーー!!!」
大きな叫び声を聞いて外に出ると、ドラゴンが暴れ魔王城を攻撃していた。恐らく魔王がいなくなったため、本能のまま破壊をしているのだろう。
「ふむ。俺の最初の仕事にしては少し物足りないが、まぁいいだろう。冒険者登録の際の手土産にしよう。フリーズ!」
氷結魔法フリーズ。周囲の気温を下げて相手の動きを阻害する魔法だが、出力を上げれば絶対零度を作りその姿のまま凍らせることも可能だ。
「新鮮なドラゴンだ。またドラゴン料理でも食べたいものだ。アイテムボックス」
空間魔法でドラゴンをしまい、南の街へと向かう。
テレポートで一気に移動しても良いが、今の俺は人間。なのでゆっくり走ることにした。まぁ走ってもほんの数十分程度だ。
魔王城周辺は木々も育たぬ荒野となっており、ドラゴンをはじめそれこそ勇者のような一部の強者しか倒せぬ強力無比な魔物が闊歩しているが、全て無視して走り抜ける。
走ること20分。徐々に草木が生えはじめ、出てくる魔物も弱いものになってきた。さらに草原を走ること20分。遂に城壁に囲まれた街が見えて来た。
「これが人間の街か…まぁ千里眼で覗いてはいたが、やはり随分と小さいな。数十頭ドラゴンを放飼したら街が一杯になってしまうではないか。」
そんな感想を感じながら、街へと歩いていくと、門が見えた。あそこから入れそうだ。
「おいお前、街に入りたいのだから、ここから入れば良いのか?」
「!?貴様何者だ!なぜ服を着ていない!」
すっかり忘れていた。魔王である時は何も言われなかったが、今の俺は人間だ。人間は服を着ていた。ううむ、何か言い訳を考えなければ…
「ドラゴンに燃やされてしまってな、俺の体は頑丈なので効かぬが、服は燃やされたのだ。証拠もある。このドラゴンを見よ。」
アイテムボックスからドラゴンを取り出す。
「これは!勇者しか扱えぬと聞く空間魔法に伝説に聞くエンシェントドラゴンだと!!少し待っていろ…て下さい…今上の者に確認をしてきますので…」
ふむ、空間魔法とドラゴンにより何やら上手くいきそうだ。しかし全裸のままで待っていて良いのだろうか…
こんな雰囲気でいこうと思います。