第3話
「ボス、例のガキが出てきたみたいですよ!」
「何!本当か!?」
盗賊の首領が、部下からの報告を受けてアイの姿を見つけようと、双眼鏡で辺りを見渡した。しばらく見渡すと、こちらに向かって走ってくる少女の姿が見えた。
「お前か、アイ・ローレンスは」
「そ、そうです……」
「これ以上町に被害が出ないように、自分から出てきたってわけか」
「はい、だからこれ以上は……」
「ダメだね」
「なっ!?」
首領がアーマノイドに攻撃の合図を出して、再び町を攻撃し始めた。 そして、アーマノイドの攻撃と同時に、銃を手にした盗賊たちや装甲車が町になだれ込み、略奪を始めたのだ。
「そんな、なんで!?」
「奪えるもんは何でも奪う、それが俺様のやり方よ!」
「今すぐやめてください、そんなやり方!」
「うるせぇ! てめえはそこで事が終わるまで大人しくしてろ! おい、お前ら、そいつを抑えとけ!」
首領の命令で、手下たちがアイを押さえつけようと近づいた。すると、どこからか銃声が聞こえた。
そして……
「ぎゃあ!!」
手下たちが体に大穴を開け、絶命した。
「何だ!?」
銃声のした方を見ると、銃を構えたアルティマが盗賊たちに銃口を向けて立っていた。
「あ、あの男は……あいつ、あいつですよ! この前仲間を殺しまくって邪魔してきた野郎は!」
前回の襲撃でアルティマと遭遇し、生き残った盗賊がアルティマを見て、悲鳴を上げている。
「そうか、あいつが……おい、てめえ! 俺の仲間が世話になったようだな!」
「その子を離してこの町から出ていけ、素直に従えば殺しはしない」
「お前、アーマノイドを見たのは今日が初めてか?生身の人間がどうこうできる代物じゃないぜ?自分の置かれた状況が分かんねえのか? この間抜け!」
アルティマの周りをアーマノイドたちが取り囲んだ、アーマノイドは監視者たちに対抗するために作られた兵器だが、対人用としても絶大な威力を発揮する。生身の人間が相手をするのは自殺行為だ。
アーマノイドたちはアルティマに一斉に砲撃を行った。一瞬で爆炎が立ち上り、アルティマの姿が見えなくなった。
「アルティマさん!」
「へっ、バカ野郎が」
「俺はここだ」
「なにっ!?」
跡形もなく散ったと思われたアルティマは、アイのすぐそばに立っていた。そして、アイを抱えると、人間では到底不可能な高さで跳び、盗賊から離れたところに着地してアイを下した。
「お前はここでじっとしていろ、俺はあいつらを殺してくる」
「アルティマさん、あなたいったい……」
アルティマはアイを残して、再び盗賊たちのいる方へジャンプした。すると、空中でアルティマの体から光があふれ出し、辺りが真っ白になるほどの強力な光が辺りを包み込んだ。
「な、なんだ!? 何が起きてやがる……あれは!?」
光が収まると、そこにいたのは巨人だった。錆びた鎧を思わせる装甲を身に着けた、巨大な人の形をした謎の生物。その大きさは盗賊たちが使っているアーマノイドよりも大きかった。
「おい、盗賊ども」
「その声、まさかてめぇは……」
巨人は、言葉を発した。そしてその声はアルティマのものだった。
「これ以上攻撃をするというのなら……」
「なめるな、化け物野郎!野郎ども、あいつをぶっ殺せ!」
「馬鹿な奴らだ……」
装甲車や歩兵たちは機銃をアルティマに向け、アーマノイドは銃を構えた。
今、アルティマと盗賊たちの戦いが始まろうとしていた。