魔術
トイドは右ポケットから小さな巾着袋を取り出した。
中から水晶のような透明な小さな球体が出てきた。
「これは魔力値、魔法適性を見るものじゃ。魔力値が高いと大きく光り輝く。そして適性属性によって光の色が変わる。炎をなら赤。雷なら黄色といった色の違いが出てくる。中には複数の適性があると色が混ざることもある。炎と雷ならオレンジ色になる。魔法適性があると珠が浮かび上がる。コモナ、この珠を掌に載せて魔力を流してみよ」
「わかったわ」
コモナは掌に珠を載せ、目を閉じて手に力を集中させた。
すると白く輝いた。しかし珠は浮かばなかった。
「なるほど。コモナは無属性じゃが魔力値はそこそこ高い。じゃが魔法適性は全くないようじゃな」
「魔法適性はないのかー。残念」
「安心せい。コモナの戦闘スタイルは間違っていない。無属性は身体強化に向いている。魔法を放つのではなく体にまとうことで力を発揮する属性じゃ。ただ今はせっかくの魔力をあまり身体能力に変換できていない。そこの修行じゃ」
「わかったわ」
「次は姫じゃ」
「わかりました」
コモナと同様に珠を掌に載せて力を注いだ。
珠は緑色に輝き少し浮いた。
「ほう。姫は風属性で魔力値もそこそこ高く魔法適性もある。風は攻撃とスピードを兼ね備えた強い属性じゃ。姫の剣術と組み合わせれば敵を圧倒するスピードですべてを切り裂く剣士になれるじゃろう。さて、次は和樹じゃな……」
エリシスから珠を和樹は受け取ったが魔力の流し方がわからなかった。
「魔力はどうやって流したらいいんだ?」
「そうか。魔力を感じたことが無いのか。ならわしが和樹に魔力を少し流し込んでやろう。その感覚を感じ取って自分の魔力を掌に集めてみるのじゃ」
「わかった」
トイドは和樹の肩に手を当てて魔力を流した。
和樹はその一瞬で自分の体に流れる魔力を感じ取った。
「どうやらわかったようじゃな」
和樹は目を閉じて魔力の流れを掌に集めた。
すると珠は体を覆うほどの黒く光り輝き、珠は和樹の周りをぐるぐると回り始めた。
「これは驚いた。黒く光るのは初めて見たぞ。黒は色々な複属性を扱える証。そして珠は浮かび上がるだけではなかった。和樹は魔術師としての才能がある」
「俺は早く力が欲しい。魔術師になればすぐ力が手に入るか?」
「わしのような体術は長年の鍛錬で身につくもの。いくら身体能力が高いからと言って経験の少ない和樹では純粋な体術の近接戦闘は難しい。それなら魔法適性が高いのを生かして魔術を極めたほうがいいかもしれない」
「わかった。俺は魔術を極める」
「和樹よ。なぜお主はそこまで早く力を求める?」
「俺が原因で魔族が力をつけているから、それに対抗するためにすぐに力が欲しい」
「どういうことじゃ? なぜ魔族の力と和樹が関係している?」
「俺はこちらに不死身の体で転生させられて魔族の実験体にされた。その実験データをもとに魔族が力をつけてしまった。だから俺に責任がある」
「和樹の異常なまでの治癒能力はそういうことじゃったか」
「俺の身体能力は実験でいろいろな薬を投与された結果だと思う」
「……なるほどな。なら和樹には黒魔術が使えるかもしれないな」
「……黒魔術か。マナの本から黒魔術については少し教わった」
「黒魔術は危険です! トイド様、いくら和樹が不死身だからと言って禁忌とされている黒魔術を使うのは反対です」
「確かに姫が言うように黒魔術は禁忌とされている。しかし、和樹とわしの最終目標を達成するには黒魔術を使う可能性が高い」
「最終目標?」
「今は言えぬが決めるのは和樹じゃ。おそらく事情を話せば国王も黒魔術の使用を許可してくれるじゃろう。しかし黒魔術以外にも魔術はある。おのれの精神エネルギーを使う白魔術。精霊の力を借りて放つ精霊魔術」
和樹の気持ちはすでに固まっていた。
「俺は黒魔術を使えるようになりたい」
「和樹! 危険だわ!」
「エリシスは反対しているがコモナはどう思う?」
和樹は心配そうな眼差しでこちらを見つめるコモナに聞いてみた。
「和樹はダメと言ってもきっと黒魔術を使うと思う。訳は教えてくれないけど和樹がお祖母ちゃんの本を読んでから雰囲気がガラッと変わった。何か強い信念を感じる。きっとそれを成し遂げるために力を欲しがっているんだと思う。だから私は和樹が無理しすぎないように支える」
「ありがとう」
「……わかりました。皆さんがそこまでおっしゃるなら私も和樹を支えます。訳は後でちゃんと話してくださいね!」
「わかった」
「決まったようじゃな。とはいってもいきなり黒魔術から入るのではなくまずは白魔術から始める。3人ともいいな?」
「はい!」
3人は声をそろえて本格的な訓練に入り始めた。