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襲撃

 村からエルファルトに行くには大森林を抜ける必要があった。


「最近、この辺にも魔族を見かけたって話を聞いたよ」


「俺を探しているのか……」


「警戒して行きましょう」


 朝出発してから歩き続けて、時間がだいぶ経ち辺りも薄暗くなってきた。


「今日はこの辺で野営しましょう。この調子なら明日の昼頃にはエルファルトに着くでしょ」


 火を熾し、コモナのお母さんから貰った、村で取れる木の実を粉末状にして練って作られたパンで数種類の具材を挟んだサンドウィッチのようなものを食べ始める。


 1口2口と食べ進め、あっという間に食べ終わる2人。


「交代で寝ましょう。いつ魔族が襲ってくるかわからないからね。和樹が先に寝ていいわよ」


「……どうやら寝させてはくれないらしい」


 森の奥からガサガサっと音が複数個所から聞こえてくる。

 音はこちらに近づいてくる。

 2人は立ち上がり構えた。

 一瞬の静けさの後、上空から三日月形の斬撃が降ってきた。

 とっさに左右に回避する2人。

 その攻撃を見計らって、森の茂みから魔族が複数体で囲むように襲ってきた。

 魔族は実験室にいた奴らに近い形状をしていた。

 荒れ果てた大地や森で出会った魔族と違い、野性的な攻撃ではなく連携して攻撃をしてくる。


「コモナ! 上に飛べ!」


「わかった!」


 コモナが大きくジャンプするのを確認すると和樹は以前と同様、拳で地面を殴り衝撃波を発生させた。

 魔族は和樹の攻撃で割れた地面に埋まった。しかし、以前とは違いそこから這い上がってきた。

 魔族も反撃を再開する。

 王都に襲ってきた時よりさらに強くなっている。

 和樹のパンチを食らっても立ち上がる魔族。

 体力を消耗する2人に対して、数で圧倒する魔族。

 コモナは攻撃を回避しきれず魔族のパンチを食らってしまった。

 吹き飛ぶコモナは木に叩きつけられた。


「コモナ!」


「……これくらい大丈夫。和樹! 上!」


 咄嗟に和樹は上を見上げると、他の魔族より一回り大きい夜でも光る黄色い瞳に額には1本の角が生えた鬼のような筋肉質の魔族が拳で和樹を殴りつけようとしていた。

 横に飛んだが避けきれずに腕をへし折られた。

 すぐに腕は戻ったが、コモナの言葉がなければ直撃していた。


「ほう。さすがの回復力だな。お前らは下がっていろ。こいつは俺がやる」


 すると取り囲んでいた魔族はそっと暗闇の中に消えた。

 和樹は以前召喚されたときにいた三つ目の魔族と同格の力をこの魔族から感じた。


「コモナ! 逃げろ! こいつは他の奴とは違う!」


「俺の力がわかるか。だが逃がしはしない」


 魔族はコモナの方に猛ダッシュして一気に距離を詰めた。

 そのダッシュの勢いを乗せてパンチをコモナに叩きこもうとしたが、和樹が横から魔族を蹴り飛ばした。


「コモナ! エルファルトの方に早く逃げろ。あいつはこんな程度じゃ倒せない」


「でも和樹は……」


「俺も後から逃げる」


「わかった」


 コモナは必死に走り始めた。


「いい蹴りだがその程度じゃ俺は倒せないぞ。……女には逃げられたか。まーいいか。狙いはお前だ」


「やはり俺か」


「お前はいい体をしている。お前の実験のおかげで俺達魔族は飛躍的に強くなっている。だからまた実験に付き合ってもらおうと思って、いたるところに魔族に探させた。村や国の結界を越えるのは面倒だから、いずれ出てくるのを待っていた」


「悪いがもう実験体になる気はない」


「それは俺が決める」


 2人はお互いにジャンプで一気に距離を詰めて接近戦になった。

 乱打の競り合いが続くが魔族のほうが勝り、和樹は吹き飛んだ。

 倒れ込む和樹に魔族は追い打ちをかけるように上空から足を振り下ろした。

 地面にめり込む和樹。

 魔族は和樹の首を片腕で掴んで持ち上げた。


「任務完了だな」


 すると逃げたはずのコモナが魔族を殴り飛ばした。

 その衝撃で魔族は和樹から手を放した。

 同じく吹き飛ぶ和樹をコモナは抱きかかえて、即座にその場から全力で離脱した。


「……逃げろって言ったのに」


「それは和樹も同じ。逃げる気配が無いから迎えに来た。このままエルファルトに逃げ込むよ」



 夜が明けて朝日が出たころに、エルファルトの門に到着した。

 コモナは和樹をゆっくりと地面に置くと疲労で座り込んだ。

 門が開くと、そこから兵士が数人出てきて2人を門の内側に連れ込んだ。


「お前ら、何があった? ……お前、以前魔族がここに攻め込もうとしたときに1人で立ち向かった奴だな」


「そうだ……。魔族に襲われた。至急、王に会いたい」


「その前にまず回復してからだ。すぐに医療魔術師が来る」


 しばらくして、医療魔術師とエリシスが姿を現した。

 すぐに魔術師は呪文を唱え2人の治療を始めた。


「あなた、あの後無事だったのね。心配したのよ」


「俺のことより、コモナは無事か?」


「大丈夫ですよ。軽い打撲と疲労が溜まっているだけです」


 魔術師の言葉を聞いて和樹は一安心した。


「あなた、喋れるようになったのね。何があったのか私と父に話してもらえる?」


「わかった」


 エリシスに連れられ、和樹とコモナは王城に向かった。


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