交流
次の日からの和樹の行動の速さはまさに神速だった。
世界各地に分身を作り出し、その情報は本体の和樹や分身たちにも共有させ世界を導き始めた。
エリシスは国王から政治や次期女王としてどう国を治めるか勉強に勤しんだ。
トイドは魔術師育成の教室を作った。
世界中で最も認知度の高くなった和樹を鍛えた英雄トイドの教室とあって各地から人が押し寄せ、トイドも忙しい日々を送るようになった。
そこには和樹がたまにシュイを連れて行きトイドにも魔術を教わった。
魔族と国民の説得には和樹の頑張りと認知度のおかげで3年で魔族と人間や亜人の和解することの出来た。
色々な場所に居る魔族は最初は逃げ出すものが多く、中には恐れるあまり逆に攻撃してきたものもいたが今の和樹に魔族が太刀打ちできるはずがなく攻撃を受け止めながら和樹は声をかけ続けた。
そんな中、音楽に心動かされた魔族は自ら近寄ってきて、自分達にもあんなことができるのかと聞いてくる者がいた。
そこから徐々に魔族は和樹に歩み寄り、話に応じるようになってきた。
魔族の好戦的な本能に近いものは、現実世界のスポーツや闘技場を作りそこでルールに則って勝つ快感や報酬で喜びを味合わせようとした。
穏やかな魔族がその身体能力を活かして和樹も付き添い人間の力仕事を手伝うようになり、徐々に魔族に抵抗があった人も亜人も魔族に心を開き始めた。
魔族のスポーツ見て人間や亜人にもはやり、お互いの力を称えあった。
そういった施設を王都に作るため森の木をどうにかしなくてはならなかったが和樹は木を切るのではなく木を荒野など荒れ果てた土地に移し替え大地の環境にも目を向けた。
音楽や娯楽に関しては世界各地に分身を向かわせると皆和樹の訪問を楽しみにしていて、その国の国王と話したり楽器の制作方法や素材の調達場所を教え、楽器が出来たらそれを扱えるようにする練習。
中には音楽を作りたいという者もいて作曲のやりかたを教えた。
音楽に関しては魔族以上に時間がかかったが、異世界特有の魔術を使った音楽も生まれた。
和樹は地球でこちらでも使えそうなスポーツや音楽などの色々な物を異世界に取り入れることで、世界の皆は生きる楽しさを覚え始めた。
もちろん地球に似たような犯罪も起きることはあったが、そこは国や本人に任せ、自らを改心できるように和樹は見守った。
和樹はいつしか神の代行者と、あの神の言われた通りの呼び名が付き全世界の皆から慕われ敬意を表された。
そんな目まぐるしく変わる世界で本体の和樹はコモナとシュイと3人でコモナの村に生き、シュイに以前約束していた食材取りをコモナに教わりながら楽しく過ごし、少しずつ魔術について教え始めた。
シュイは魔術に訓練に対して積極的に取り組み、子供ながら大人顔負けの魔術師に成長していった。
家はコモナの村の湖の近くに木製の2階建てでみんなが来てもいいように大きめに家を作った。
シュイは釣りや泳ぐのが好きになりすぐに村を気に入ってくれた。
シュイにも心について和樹とコモナで色々教えてあげた。
魔王だったとは思えないほど成長していき、和樹の背中を見てきたシュイは和樹を師匠と呼び尊敬とあこがれを持つようになった。
しばらくすると子供もできたが、子供に和樹の薬に侵された体が移らないようにそこだけは力を使った。
元気な女の子が生まれた。
名前はカナ。
カナにもコモナに似て尻尾と耳が生えていたが髪色は和樹に似て黒い毛並みだった。
カナをみんな可愛がってくれて、すくすくと大きくなっていく。
特にお母さんにはとても助けてもらった。
最初の頃はどうやってあやしたらいいかわからなく2人で戸惑っていると、お母さんが優しく抱きかかえ泣き止ませてくれた。
王都や他国やその他の亜人種との交流も増し、この村には旅人や癒しを与える村として訪れる人も多くなった。
しかし、この村の自然とともに生きるは変わらずなるべく食べ物は自給自足で生活して、その他の衣類などは流通されるようになった。
他の国は目まぐるしく国の形や建物が大きく変わる中、この村は相変わらず森を大切にして、緑豊かな美しいままだった。
和樹はそんなところでコモナとシュイ、そしてカナと過ごしたかった。
和樹にとってこの村はコモナと出会うきっかけの村でもあり、美しい青白い花畑で心を取り戻し改心させてくれるきっかけを作ってくれた大切で思い出深い場所。
分身は世界各地に居るが、本体の和樹はここで過ごしたかった。
カナとシュイが大きくなるのを見ていると嬉しくなる和樹だがそれと同時に着実に死ぬまでの時間が近づいていることも感じた。
コモナも同じことを考えているがカナとシュイの前で急に泣くわけもいかずに必死にこらえていつも笑顔でいてくれる。
8年目以降、徐々に体調にも変化が出てきた。
和樹の最初の尽力と魔術によって目まぐるしい発展を遂げて、皆に教えるときや作るときもなるべく、どやって作るか、どういう原理か、本質を教え自らイメージすることを大事にしろと口うるさく教えてきた。
それは、和樹に頼るのではなく自らの手で出来るようにするためであった。
和樹はきっかけを作ったに過ぎない。
途中からは自主的にやらせて見ているだけであった。
分身は8年目の体調の変化に合わせて皆にお別れを言い、消した。
最初は体にだるさを感じるだけであった。
次は咳が出始めた
そこからだるさに重みが増し、立っているのが辛くなり始める。
咳にも血が混じり始めた。