音楽
宴が終わった次の日、すぐに和樹は行動に出た。
全知全能の力を使い、この世界に存在する素材で楽器を作成して自分ですら聞いたことのない究極の癒しの音楽を2つ作った。
そしてコモナにも手伝ってもらうことにした。
「コモナ、手伝ってほしいことがあるんだがいいか?」
「何したらいいの?」
「昨日の音楽って聴いただろ? あれにコモナも参加してほしいんだ」
「え? 無理だよ! あんなすごいの私に出来るわけがない!」
コモナは首を激しく横に振った。
「出来ないのはわかっている。だから俺の力を少しコモナに使わせてほしい。……もしかしたら、これをきっかけに世界の皆の心を明るくできて、魔族とも仲良くなれるかもしれないんだ! 頼む!」
少し戸惑うコモナだが和樹の世界のための願いを断ることはしたくなかった。
「わかった。それで何したらいいの?」
「音楽っていうのは昨日の音色だけじゃなくそこに言葉を入れることでさらにいい音楽になる場合があるんだ。その言葉をどうやって出すかは俺の力で少しコモナに力を与えることになるけどいいか? コモナは俺の力に任せてくれればいい」
「わかった!」
「ありがとう」
和樹はコモナが大好きな頭を撫でるのをいっぱいしてあげた。
昨日の広い会場に楽器を並べた。
その一番目立つ所にコモナは立ち、その横に和樹も立っち準備が整った。
前日にお昼ごろは食材採取や仕事や警備を空けておいてほしいと世界中に伝え、すごいものを見せてあげると言い残した。
おそらくそうしないと、下手に手が止まり危険だと和樹は考えた。
多くの人が無限の魔術師の和樹の言葉を楽しみに各々座りながらや、広場で皆を集めてその時を待った。
それを見守る、シュイ、エリシス、トイド、国王。
目の前で見ているものは少ないが、和樹はまた全世界の人や亜人、魔族に映像を出現させて見せた。
「忙しい中、時間を取らせてしまい申し訳ない。今から見せるものは音楽という。これは魔術でもなんでもなく楽器という物を吹いたり叩いたり引いたり、誰でも練習すればできることだ。それを今から披露する。今は楽器を使えるものがいないので俺が魔術で動かすが興味あるものはいずれ自分で動かしてみたらいい ……では始める」
和樹は映像に背を向けて楽器を力で無人で動かし始める。
和樹は指揮者役で全知全能で作り上げた最高の音楽を奏で始めた。
始まった途端、世界中の者は驚愕して映像と音に集中した。
宴の時以上の音楽にその場に居る4人も言葉で表現できないほどの音色に聞き入った。
すでに想像を絶する音色に目を閉じて緊張するコモナがついに口を開き歌声が加わった。
コモナの可愛らしくも透き通った声が加わり、さらに音楽の至高の音楽に到達した。
見た者はまるで女神のお告げを受けたのではないかと思うほど、抗えないほどの清らかな心地よい気分にさせ心を震わせた。
コモナ自身、自分の声がこんなにも美しく聞こえることに驚きながら和樹の力に身を任せた。
和樹自身、心が震えて涙を流した。
世界中の皆、うまく状況を理解できないまま涙を流し魔族も肩の力が抜けてしまった。
演奏を終えると和樹は涙を拭い、振り返った。
「みんなどうだった? これを聞いて少しでも心が明るくなったのなら俺は嬉しい。あとで俺は世界各地に向かう。俺にはこれ以外にも楽しいとか色々なアイディアがいっぱいある。興味ある人は俺が来た時、聞きに来てくれ。それでは見てくれてありがとう」
そこで映像を終わらせた。
その場に和樹を除いた皆、膝をついた。
「皆大丈夫か?」
「か、和樹、ちょっと待ってくれ。本当に神を目にしたかのように腰が抜けてしまった」
「わしもじゃ」
その出来事があった後、世界中の皆がまともに動き出せたのは夕方頃であった。
その日の夕食はまた6人で食べ始めたが、また和樹が動き出そうとしていた。
「ちょっといいか?」
「今度は何をする気じゃ」
皆、和樹の成す偉業のすごさに警戒しつつあった。
「明日、俺の分身をこの王都周辺にある魔族の巣窟とかに行ってみようと思う。一度、魔族と話し合ってくる。それで国王に頼みがある」
「なんだ?」
「もし魔族が話し合いに応じるほど変わり好戦的ではなくなった場合、エルファルト王国を最初の魔族受け入れを許可する国になんてできないか? もちろん土地はもっと俺が大きくする。食糧事情も俺が何とかする」
「和樹の申し出だから私はいいと思うが ……少しその答えは待ってくれ。私1人で決めていい問題ではない。城内の者はもちろん、国民にも聞かないといけない」
「俺が聞いて回ってもいいか?」
「それは助かる」