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緊急事態

 王城に戻るとすでに皆寝静まっている時間帯。

 いきなり国王の部屋に入るわけも行かず、先にエリシスの部屋に向かった。

 大きくノックをしてエリシスをたたき起こそうとする和樹。

 少し経つとドアが開いた。


「……何事ですか?」


 眠たそうにしているエリシスだが和樹は緊急事態のため声を張って喋り始めた。


「魔族が動き出した! 詳しいことは王広間で話すから国王と騎士達を起こしてくれ! 俺はコモナとトイドを呼んでくる」


 和樹の焦った顔を見たエリシスは眠気が吹き飛び、すぐに着替えて動き出した。



 数十分後、王広間で真夜中に緊急会議が始まった。


「それで和樹。エリシスから魔族が動き出したと聞いたがそれは確かなのか?」


「確かだ。それにただ動き出したのではなく地中からこちらに進行している。そして、おそらくどの魔族も強化された魔族だ」


「なんだと!」


 王を含め、王広間は驚きを隠せなく騒めいた。


「今は恐らく荒野の中心に近づいているころだろう」


「どうする。上から魔術で地面を崩壊させるというのはどうだ?」


「おそらく無理じゃろう。魔力障壁や強化された魔族なら多少崩れた程度では復活してまた進行する。かといって和樹の魔術を使って大規模に攻撃すると闇属性で吸収される危険性もある」


「国王。魔族を地上に出す手段は思いついているのだがこの国には精霊魔術師もしくはそれと同等の猛者はどの程度いる?」


「100人程度だと思う。どうしてだ?」


「おそらく引きずり出しても普通の騎士では強化された魔族には対抗できない。草原の戦いのとき、容易く密集した騎士の盾を吹き飛ばし武器も効いていなかった。いくら先の戦いで魔族の数を減らしたとは言え、それに対し相手はこちらが100ならおそらく十倍近くもの魔族が押し寄せてきている…… その中には幹部も混ざっているだろう」


「国王よ。わしに策があるのじゃが和樹の魔術について皆に口外していいか?」


「……緊急事態だ。許可する」


「ありがとう。皆、よく聞け。これはここに居る軍の指揮官や騎士団長、国を支える役人。その他のこの場に居る者のみに口外する。そして、今から喋ることは他のものには他言しないように。よいな」


 その場にいる皆が真剣な眼差しでトイドを見つめながらうなずいた。


「この和樹は多少の黒魔術ならほぼ対価なく発動できる特異体質なんじゃ。

身体強化や大魔術が例じゃ。

そしてその黒魔術を使い全兵に強化魔術を使ってみてはどうじゃろうか? 

相手に和樹が攻撃するのではなく見方を強化する分には闇属性の魔術も使えないだろう。

 相手も強化されているうえ数も多い以上、こちらもそれぐらいしないと対抗できない。

この中には禁忌がどうこう言いたい者もいるじゃろう。しかし、今はそれどころじゃない。

和樹は己のために黒魔術を使うのではなく他者のために黒魔術を使う心優しい奴じゃ。

安心せい。

それと和樹は黒魔術を使わなくてもわしよりも強い。

黒魔術が使えるからわしより強いわけではないから、その辺を勘違いしないように!」


 和樹は様々な視線を感じるが今はそんなことを気にしている場合ではなかった。


「トイドの作戦はなかなかいい策かもしれないが和樹の作戦はなんだ? どうやって地中に居る魔族達を上に引きずり出す?」


「もう隠す必要はないから言うが、黒魔術で魔族の位置を把握したうえで、その魔族のいる洞窟事引属性で持ち上げる。直接魔族を持ち上げるのではなく周りを持ち上げることで闇属性も干渉できないだろう」


「なるほど。……それではその作戦で行こう! 夜明けと同時に出撃する。 皆、あまり睡眠をとれていないかもしれないが準備を頼む。解散!」


 皆が慌ただしく解散する中、和樹も動き出そうとするとコモナが和樹の腕を掴んだ。


「和樹何する気?」


「もちろんまた監視をしに行く」


「和樹は寝たの?」


「そんなこと言っている場合じゃない」


「やっぱり寝てないんだ…… 和樹は寝ないとダメだよ。頑張りすぎだよ」


 コモナはさらに心配そうに和樹の腕をギュッと握りしめた。


「これは俺にしかできないことでもあるし、何より皆を守るためだ」


「コモナの言う通りかもしれない。わしらは和樹に頼りすぎている。少しでも休めるときは休め」


「……わかった」


 気を張っていた和樹は落ち着きを取り戻し、部屋に戻った。

 本当は心配で仕方がないが、これは明日の戦いに備えるためと心に言い聞かせて今は眠りについた。




 夜明けがやってきた。

 和樹はほんの少しの仮眠で目を覚ましてすぐに偵察に向かった。

 魔族達は草原地帯の近くの荒野まで来ていた。


 和樹は場所を確認すると一度王城広場に戻った。

 すでに兵は整列して準備が整っていた。


「王国騎士団長。魔族の場所を把握した。その場所より手前に転移魔術を出現させて準備を整える。それでいいか?」


「よろしく頼む。……全軍、和樹の転移魔術発動と同時に進軍し到着しだい陣を築け! 作戦は事前に話した通りだ。和樹が我々に強化魔術を付与した後、さらに和樹が地中に居る魔族を丸ごと引き釣り出す。出てきたら攻撃開始だ!」


 王国騎士団長の気迫のある掛け声で兵達は気が引き締まった。



転移魔術を発動させ進軍が始まった。

続々と進んでいく。

最後に和樹とコモナとエリシスが中に入り転移魔術を解いた。



戦う地形は以前の草原の戦いと同じ場所にした。

兵達は魔族からまだ距離のある位置で陣を構え待ち構える。


 和樹はまず黒魔術を使い通常では数人しかできない強化魔術をコモナ、エリシスを含めた兵達全員に付与した。

 

 そして和樹は所定の位置に着いた。

 さらに黒魔術で森属性の魔術の範囲を横に広げ魔族を待ち構える。


 和樹は森属性の根に集中した。

 根にかすかな揺れを感じ始める。

 その揺れは徐々に近づいてくる。

 そして揺れが大きくなり地面をくずして洞窟を作り、魔族に触れるのを感じ取ると手から根を折り、胸にザキの手袋をつけた右手を突き刺し心臓を食わせた。



 和樹は草原に差し掛かる前の荒野を広範囲で深く魔族と土もすべて持ち上げ始めた。


 地は揺れ大地にひびが入り、轟音とともに巨大な荒野の塊が浮かび上がった。

 そしてその魔術を解きさらに重魔術と上空からの風魔術で落下ダメージを上げた。

 

 すっぽりと抜けた地面に衝突した瞬間、爆音と砂ぼこりを辺り一面に広がった。

 すかさず角笛が鳴り響き、全軍陥没した荒野に突撃した。


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