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草原の戦い

 朝がやってきた。

 和樹は日が昇る前から考え込みイメージを重ねていた。


 続々と兵達も動き出し始め、城の中も騒がしくなってきている。

 座り込んでいた和樹も立ち上がり、行動を開始した。


 王城前の広場には昨日の3倍近い兵が集められていた。

 なぜか和樹とコモナとエリシスは見知らぬ騎士の横に立たされた。


「今回の戦いの指揮を任せられた王国騎士団長のレイグスだ。

 今までにない魔族との戦闘が考えられる。

 皆心して戦うように。そして昨日の戦いで大活躍し英雄トイド様の教え子でもある、和樹、コモナ、エリシス姫である。

 特に和樹はトイド様が自分よりも強いと認めた、英雄マナ様以来の逸材だ。

 これ以上の頼れる猛者はいないだろう。

 情報によると魔族の中に魔術を吸収して跳ね返す魔術を使える者がいるらしく、皆はなるべき大きな魔術を控えて近接戦闘で敵を各個撃破していくように。

 以前の魔族と違い治癒力が高いらしく多少の傷は回復してしまう。故に心臓や頭を狙え。

 そして戦場は王都から北西に位置する草原地帯。移動には和樹の転移魔術ですぐに移動できる。

 魔族はまだ草原地帯には達していないという情報が入っている。

 移動しだい陣形を整えよ!

 それでは和樹、転移魔術を頼む」


「わかった」


 転移魔術を展開するとその光景に昨日の兵同様に驚いてその場がざわついた。


「転移魔術の範囲にそろえて列を正せ!」


 兵は転移魔術の大きさに合わせて整列してスムーズに中に入れるように列を直した。


「全軍進軍開始!」


 甲冑のずっしりとした音を鳴らしながら進軍が始まった。

 和樹は全軍が転移魔術を越えたのを見届けると最後の1人として中に入り、転移魔術を解いた。

 すでに陣が整いつつあった。

 大きな盾を構えて待ち構える兵を最前線に置き、その背後に接近戦闘をする騎士。

 そしてその後ろには遠距離攻撃を行う魔術師や弓兵が待ち構えている。

 空には、航空騎士団が戦いに備えている。


 和樹も空に飛び魔族の位置を確認しに行った。

 草原地帯からまだ距離のある荒野の山が黒く染まりつつあるのが見えた。

 あと1時間後に戦闘が開始になるころだろうか。


 和樹は一度地上に降りて、黒魔術を禁忌としている中でザキを出現させるわけにもいかないのでネックレス状態のザキに提案をした。


「ザキ。ネックレスじゃなくて手袋のような形で掌にはザキの口があるような物に変化できるか?」


「何それ? できるとは思うけど……」


「じゃあやってみてくれ」


 ネックレスから手袋に変わった。


「これでいいの? 何をする気?」


和樹は手袋をつけた右手を首に当てた。


「その状態で血は吸えるか?」


「……なるほどそういうことね。できるわ」


 和樹は王国騎士団長がいる作戦本部のある一番後方のテントに向かった。


「ちょっといいか?」


「和樹、どうした?」


「この距離が離れた状態で俺が一度大魔術を魔族にぶつける」


「それは闇魔術あるということでやめた方がいいと言ったのは和樹ではないのか?」


「対策を考えついた。うまくいけば魔族を大量に撃破できる」


「……英雄トイド様が認めた和樹だ。信じる。許可する。全軍に和樹の魔術の衝撃波に備えよと伝えろ」


 1人の騎士がテントから出て行った。


「それじゃあ、俺も行ってくる」


「頼んだぞ」



 和樹は最前線の盾の騎士の上空を飛び越えた。

 今回は以前と違いそこまでの高度は取らない場所で停止した。


「ザキ! 今から俺は自分の手で心臓目掛けて突き刺す。そしたら心臓を食え!」


「わかっていたわ! 任せなさい!」


「ウェルマも準備はいいな!」


「はい」


 和樹は躊躇せずに自分の胸に自らの手で穴をあけた。

 以前とは違い、胸からは血が出て口からも血を吐いた。


「ザキ! 食え!」


 実験されて痛みを感じなくなりコモナのおかげで心を取り戻し痛みは感じるが、以前の実験の影響で痛みに関して苦しい程度の間隔で痛みに恐れは無くなっていた。


「ご馳走様。和樹! 行くわよ!」


和樹に黒魔術が付与され力がみなぎってきた。

 また天空に力の塊を作り出した。

 大きくなり完成したら和樹は手を振り下ろした。

 今回は真下にレーザーを撃つのではなく斜めにすることで魔族の縦の行列を消し去ろうとした。


 間近で和樹の力を目にする騎士たちはその光景に驚愕した。


 和樹もわかってはいたがやはりあの三つ目の魔族が出てきてその攻撃を受け止めた。


 三つ目の魔族も兵が集まっている今、好機と思いその和樹の魔術をこちらに打ち返してきた。


 もちろん和樹はそれを想定済みだった。

 すでに和樹はまた自分の胸に手を入れていた。

 ザキは心臓を食べ終わっており、三つ目の魔族の攻撃を黒魔術で強化された闇属性の魔術で受け止めた。

 

「なに! 同じことをして来るとわ。サルドまた力をよこせ。数はいくらでもいい。 おそらくまたあいつは放ってくるぞ」


 しかし、和樹の黒魔術の闇属性は三つ目の魔族のさらに先に行っていた。

 

 和樹は手から吸収した攻撃を放つのではなく、魔族の一番後方の上空部分から真下に落とした。

 さすがの先頭に立っていた三つ目の魔族も数百メートル離れた一番後方の魔族に対しての攻撃は防ぎようがなかった。

 魔族は約3分の1を消失した。

 衝撃波は和樹の広範囲魔力障壁で味方には影響を与えず、魔族は衝撃波で体勢をくずした状態でこちら側に吹き飛んでくる者が大勢いた。


 それを見た王国騎士団長は好機と思い全兵に告げた。


「全軍攻撃開始!」


 一斉に攻撃が始まった。

 まず遠距離部隊が魔族に魔術や弓で攻撃を開始した。

 次に盾部隊が道を開け騎士部隊が各個魔族を撃破していく。


 体勢を立て直し、前線に居た魔族たちがまた進攻を開始して戦いの激しさが増していく。

 一度騎士部隊を下がらせ、魔族の突進を盾部隊が受け止めた。

 そしてその縦の隙間から槍で魔族の心臓目掛けて突き刺していく。

 空にいる魔族は航空騎士団が迎え撃っている。


 優勢に思えたこちらの兵だったが、状況が一変した。

 交戦中の所に新たに一回り大きな魔族集団がやってきた。

 

 同じように盾で防ごうとしたが、いとも容易く盾を吹き飛ばした。


 心臓に槍を刺しても刃が通らない。


「あれは俺の体で、実験で強化された魔族達か」


和樹はすぐに盾部隊の所に向かった。


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