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奇襲攻撃

 和樹は深遠の谷の近くの荒野の遥か上空で黒魔術を使う準備を始めた。


「ザキ、ウェルマ! 力を貸してくれ」


「仕方がないわね」


「悪魔と協力するのは不本意ですが致し方ありません」


 ザキはウェルマを睨むが口からは何も出さなかった。


「ザキ! 俺の心臓を対価で使える最大限の谷全体を攻撃する力をくれ!」


「わかったわ」


 すると、ザキは和樹の胸に手を当てると黒い光を出しながら体に手が入って行く。

 そして和樹の体の中から心臓を取り出した。

 傷跡は一切なかったが一瞬和樹は気を失った。

 ウェルマが和樹を支えると、すぐに和樹は意識を取り戻した。


「それが俺の心臓か……」

 心臓からは血が噴き出し、ザキの手は血まみれだった。


「そうよ。それでは頂きます」


 ザキは一口二口と美味しそうに食べ進めていく。

 食べ終わるとザキから黒いオーラが漏れ出してきた。


「美味しかったわ。受け取りなさい。これがあなたの心臓の対価の力よ!」


 ザキから漏れ出ていた黒いオーラは和樹に移った。


「クッ。なんて凄まじい感覚だ。力に飲み込まれそうだ…… ウェルマ武器になれるか?」


「わかりました」


 杖に変わり、握りしめながら杖を上に両手で掲げた。

 和樹はイメージした。

 シンプルに天空から力の塊をこの深遠の谷だけに止めるようにレーザーをイメージして、体中の黒魔術の力を杖を通し和樹たちより遥かに高い宇宙にでも届きそうなくらい高い位置に力の塊を作り出した。

 塊はみるみる大きくなった。

 そして和樹は勢いよく杖を垂直に振り下ろした。

 それと同時に、塊からレーザーのように深遠の谷に向けて放射された。

 雲は吹き飛び、まるで天からの裁きのごとく絶大な力が天空から降りそそいだ。

 その威力は凄まじく、着弾と同時に周囲一帯に衝撃波を発生させ深遠の谷から荒野を越え草原、森林まで届き王城から森の木々がざわつくのが見え、白い柱が地上から空に立っているように見えた。


 和樹たちは魔力障壁で何とか衝撃波を受け切り遥か上空から深遠の谷に降りていくと和樹たちは驚愕した。


「そんな、馬鹿な! 深遠の谷が無傷だと?」


 あの攻撃にもかかわらず、深遠の谷は崩れるどころか無傷であった。

 しかし、深い谷の少し上空に翼を生やした魔族が見えた。


「ザキ、念のためネックレスに戻れ」


「わ、わかった」


 ザキがネックレスに戻ると和樹はさらに地上目掛けて降りて行った。

 そこにいたのは、転生させられてすぐに出くわした三つ目の魔族だった。


「お前か。あんな攻撃をしたのわ」


「あの時の魔族か! どうやってあの攻撃を止めた?」


「お前と同じだよ。黒魔術さ。あんな魔力の塊は黒魔術以外ではありえないし、あんな力の塊を察知できないほうがおかしい」


 和樹は魔族を侮っていた。

 察知できても防ぎようのない攻撃だと思えるほどの威力だった。


「こんな攻撃で先手を打たれるとは計算外だったよ。まー計画に支障はないレベルか」


「計画って魔王復活のことか?」


「ほう。そこまで知っているのか。なら隠す必要はないな。その通り。魔王様の復活が目的だ。計画を早め、もう王都に出撃するとしよう。全員王都に向けて侵攻を開始せよ」


 すると深い谷から這い上がってくる者や翼で飛んでくるものが数えきれないほどの魔族が出てきて、すぐにその場は魔族で埋め尽くされた。


「行かせるか! ザキ! もう一回だ」


 三つ目の魔族が瞬時に和樹との距離をトイド並みの速さで詰めた。


「やらせるか!」


 三つ目の魔族は素早く蹴りを入れた。

 和樹はとっさの判断で体全体に魔力障壁を展開して蹴りを防いだ。


「この蹴りに素早く判断して魔力障壁を張るか。なかなか面白い。サルド! 今度は身体強化の黒魔術をよこせ! 数はいくらでも構わない!」


 三つ目の魔族は黒いオーラを纏いながら体を一回り大きくして、今度は和樹に殴りつけた。

 その攻撃は魔力障壁を壊し、和樹は両腕でガードするが受け止めきれず横に吹き飛ばされた。

 腕の骨は砕け散った。

 和樹は引魔術と風魔術で吹き飛ばされるのを途中で止めた。

 すぐに腕は元に戻ったが先ほどの蹴りとは桁違いな威力であった。


 和樹も反撃に出た。

引魔術と重魔術と風魔術の3つの属性を使い、三つ目の魔族を地面に叩きつけた。

そして和樹は自分の首元を手で切った。


「ザキ! ネックレスのまま俺の血を吸って、身体強化を頼む。おそらく大魔術を使わせる隙なんてこいつはくれない」


「わかった!」


 和樹も黒いオーラを纏った。

 その状態で動きを鈍らせている三つ目の魔族に黒い稲妻を落とした。


「ウォォォォー」


 多少ダメージが入った様だが膝をつく様子すらなかった。

 すると三つ目の魔族は和樹に右手の掌を出し、闇魔術の渦を出した。


「まさか!」


「本当はあの力は別で使いたいところだが、お前はここで殺すべきと判断した」


 和樹は転移魔術を発動せたと同時に、三つ目の魔術は空に浮かぶ和樹に向けて先ほど和樹が使った天空からの攻撃を手から解き放った。



 和樹は王城の広間に飛び込むように転移魔術を使ってギリギリ逃げた。


そこにはみんないた。

 和樹の慌てた姿を皆心配そうに見ている。


「和樹何があった?」


 和樹はハーハーと息を切らし焦りを隠しきれない。

 少し落ち着くと何があったか状況を説明しだした。


「作戦は失敗です。俺を以前実験させた魔族が俺の攻撃を闇魔術で受け止め、打ち返してきたので危ないと判断して転移してきました」


「なんじゃと? ここからもお主の攻撃が見えるほどのものじゃったがあれは闇魔術でだけで止められる代物ではない。きっと黒魔術を使ったのじゃろう」


「何のことだかわからないが悪魔に対して数はいくらでもいいと言って身体強化の黒魔術も使ってきた」


「何を対価にしているのじゃろう……」


「そして、深遠の谷を埋め尽くすほどの魔族はここに向かってきています」


「何! すぐに軍を動かす。エリシスは和樹に着いていてやれ」


「わかりました」


 国王は王広間から慌てて出て行った。


「和樹、大丈夫? ひどい汗だよ?」


 コモナは和樹を支えた。


「まさかあの攻撃を俺に向けられるとは思わなくて焦った」


「和樹の実験で強化された上に黒魔術を使ってくる魔族か…… これはさすがにやばいのう……」


 すぐに王都の軍の指揮官などが集められて緊急会議が始まった。


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