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調査

「和樹、コモナ、トイド、よく来たな。トイドよ。私の娘をよく鍛えぬいてくれた。感謝する」


 王はトイドに軽くお辞儀した。

 その場には護衛兵もいなく王1人だけ居た。


「感謝されるようなことではない。これもまたマナのためじゃ。そして、おそらくこの3人ならこの世界をよく導いてくれると思ったからでもある」


「エリシスから話は聞いている。聞かれてはまずいこともあると思って護衛兵は、今は席を外してもらっている。和樹よ。ザキは呼び出せるか?」


「なにかしら?」


「そのネックレスに変化しているのがザキという悪魔か。率直に聞く。今の和樹に黒魔術で魔王を滅ぼすことはできるか?」


「……できる。ただし対価は他者の命」


「マナと同じか……」


 トイド俯き、和樹は膝をついた。


「俺はマナの遺志を継ぎ、いずれ来るかもしれない魔王の復活を阻止して皆を守ろうというのにその守るべき存在を対価にしろというのか……」


「和樹よ。まだあきらめるな。お主はまだ若いし不死の体じゃ。まだ成長する見込みはある」


「……そうだな。あ。思い出した。ここに来たもう1つの目的。今すぐの話ではないのだが、いずれ不死の体ではなくなりたいと思っている。俺は皆の別れを永遠に見るのではなく皆と共に生きにいずれ皆と同じように死にたいと思っている。なにか解決策はないか?」



「それは黒魔術でも難しいのう。その力は神の力じゃ。黒魔術でも直せないだろう」


「そうか……」



「これから3人はどうするのじゃ?」


「まだ決めてない」


「わたしも」


「わたしもです」


 すると国王から話を切り出してきた。


「それなら王都周辺の調査に行ってもらえないか? 最近魔族の動きが怪しいという情報が入った。そして調査に出た騎士が北西にある深遠の谷という人間も生き物も寄り付かぬ荒野と深い谷があるところに魔族が大量に集結しつつあるという報告を受けた。魔族は何かをしようとしているのかもしれない。王都にいる軍を動かしたいところだが魔族が何を企んでいるかわからない以上、最悪のことを想定して魔王復活を企んでいるのかもしれない。故に王都の軍とトイドで守りつつ3人には調査に魔族が何を企んでいるか調べてもらいたい。トイドの訓練を終え、和樹はトイド以上に強くなったと聞く。多少の魔族に遭遇しても大丈夫だろう。しかし、危険と判断した場合は引いて構わない。頼まれてはもらえないか?」


 魔族に関しては、和樹は特に責任を感じており断る気は全くなかった。


「わかった」


「王よ。この和樹を魔王のもとに連れて行ってもよいか? 和樹には転移魔術が使える。何かあった時すぐに魔王のもとに行けるように連れて行っておきたいのじゃ」


「そういうことならいいだろう。コモナとエリシスは旅の準備をしていなさい」


 和樹はトイドの後ろについていき、階段をいくつか降りて王城の地下に向かった。

 トイドが止まった先には大き目なとても頑丈そうな何かの金属でできたような扉に手を当てた。

 魔力をしばらく流すと、扉が自動的にゴゴゴゴゴと重さが伝わる音を立てながら開いた。

 先に進むとそこには小さな部屋と大きな石像が立っていただけだった。

 石像の下に手形があり、そこにトイドは手を当てはめた。

 するとまた石像が自動的に動き出し、その下から更なる扉が現れた。


「この部屋の扉と石像には多重の鍵がかかっており、わしとマナと国王しか入れないようになっている。魔王はこの下の扉を開けてさらに階段を下りた先じゃ」


 扉を開けて階段を下りていくと両サイドにあるロウソクが徐々に灯されていく。

 しばらく降りると大きな広場に出た。

 その最奥部にとてつもなく大きな扉がまたあった。


「この先は鍵もかかっているのじゃが力あるものしか入ってはならない決まりじゃ。故にここから先はマナとわししか昔は入れなかった」


 扉が開くと、和樹は以前トイドとの訓練で感じた威圧感以上のものを感じて寒気がした。


 入ってすぐに他の魔族より数倍大きい巨大な体で手足には鋭い赤い爪が生え、長い尻尾に大きな翼、顔は鋭い牙をむき出しにして角が多数生えた者が大きなクリスタルのようなものの中に封印されていた。


「これが魔王じゃ。このクリスタルも封印魔術を施した強固なクリスタルで出来ている。魔王をこの状態で滅ぼすとなると魔王と硬いクリスタルを一撃で壊せるほどの力が必要になる」


「これが魔王……」


「では戻るとしよう。2人が待っておる」


 和樹の転移魔術で王城の入り口につなげて魔王の姿を目に焼き付けその場を去った。



 転移魔術から2人が出ると入り口にはコモナとエリシスが待っていた。


「和樹待っていたよ。深遠の谷までどうやって行く?」


「父に頼んで馬車か航空騎士団から力を借りて空から行けるように用意してもらいましょうか?」


「エリシスは深遠の谷の場所はわかるか?」


「わかりますよ」


「それなら3人で空中から行く」


「え? どうやって?」


 和樹は重魔術で自分と2人を浮かせた。そこにさらに引魔術を用いて飛行魔術をやって見せた。


「相変わらず、和樹の魔術はすごいのう。まさか飛行魔術まで使うとはな。よし! 行ってまいれ」


「行ってくる。エリシス方角的にはどっちだ?」


「えーと。あっちですよ」


 エリシスが指をさす方角を確認すると和樹はものすごい勢いで空を飛び始めた。

 あまりにもスピードが速いため、3人に魔力障壁を展開して風を防ぎながら移動し始めた。


移動するにつれて上から見る下の景色が変わり始める。

最初は王都から出たらすぐ森の景色だったが次に草原の景色に変わり、徐々に草が少ない景色に変わり荒野に変わった。

一度、3人は荒野に着陸した。


「まさか、ここまで来るのにこんなにも早く着くなんて思いませんでした」


 エリシスは驚いているが、和樹は少し疲れを感じていた。


「エリシス。深遠の谷まであとどれくらいだ?」


「この荒野をさらに進んだところにあります。このペースならすぐにでも到着します」


「なら今日はこの辺で休憩しよう。外も薄暗くなり始めたし、魔族との戦闘も考えて今のうちに休んで、明日の朝に向かおう」


「わかりました」


「和樹大丈夫?」


「大丈夫だ」



 早めに王都で持たされた携帯食料を食べて、魔族を警戒して火も炊かずに交代で寝ながら起きているものが辺りを警戒するようにしてその日の夜を越した。


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