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精霊召喚

「さて、昨日は各自訓練をしたわけじゃが、前にも話はしたが体術は長年の鍛錬によって身に着く。

 姫の剣術も同じじゃ。

 幼いころから習ってきたからこそ剣が振るえる。

 しかし魔術は違う。

 一度コツを覚えれば人によってはあっという間に強くなる。

 一種の才能じゃ。

 昨日、見ていた限り早くも次の訓練に行くにあたいすると判断した。

 それは3人の知っている白魔術と黒魔術、そして3つ目の精霊魔術の訓練に入る。

 なぜ白魔術から訓練を始めたか。

 そして精霊魔術を後回しに訓練するか。

 前にも話したが精霊魔術は精霊の力を借りて行う魔術。

 精霊は召喚者の性質にひかれて召喚される。

 しかし精霊は自分より弱者の者には従わず、召喚しても帰ってしまう。

 だから、白魔術から始めて己の力を鍛え始めた。

 そして、わしが昨日の3人を見てその段階まで来たと判断したということじゃ。

 今から陣を描くから少し待っておれ」


 トイドはザキを召喚した時と同じ模様の召喚陣を地面に描いた。


「さて誰から始める?」


「トイド、1ついいか?」


「どうした和樹」


 和樹はトイドが召喚陣を描いている間、何か1人で考え事をしていた。


「俺にはザキがいる。ザキから悪魔のことは聞いたり色々見てきた。ここにさらに精霊を召喚するのもいいのかもしれないが、精霊しだいでは、ザキはその精霊と仲を悪くする可能性が高く思える。これから頼ることになるかもしれないザキの前で召喚した精霊とばかり戦闘をしているのはザキから見ていい気分がしないと思う」


「和樹…… 私のことそんな心配してくれるだなんて……」


 ネックレスからザキの声が漏れ出た。


「なるほどな。確かに和樹は精霊を必要とせずとも黒魔術で補えるかもしれない。では和樹は精霊は召喚しないということか?」


「それも違う」


「どういうことじゃ。和樹、何を考えてる?」


「出来るかわからない話なんだが、俺の口から言うのもおかしな話だが、俺は理不尽な存在だと思う。そこでザキを悪魔の力も使えて精霊の力も使える理不尽な存在にできないかなって考えた」


「なんじゃと?」


「悪魔のことはザキから聞いた。悪魔は与える力はあっても自分自身には力がないと言った。それはつまり自分自身のことを守るすべがないし、自分の意思で戦い他者を守ることもできないということ」


「和樹ほど悪魔に目を向けた者は今までいなかったじゃろう。だからこその発想か。もし和樹の考えができるとしたらそれこそ黒魔術を使わないと無理だ。それにザキ自身の意思もある。ザキはどう思う?」


 ザキはネックレスから元の姿に戻った。


「そんな事を急に言われても……」


 ザキは宙に浮かびながら悩み込む。


「ザキ。ちなみにその対価はなんじゃ? もはや転生に近い。対価は生半可じゃないか、もはや不可能かもしれない」


「対価は…… 無い。不可能よ」


「やはりか」


 和樹はうつむいてしまった。


「和樹。気持ちだけ受け取っておくわ。私のことは気にせずに精霊呼び出しなさい。なるべく仲良くするから安心しな! そして私のことは和樹が守りなさい!」


「わかった」


「話はまとまったな。では和樹から始めよう。ザキの時と同様、陣の上に立つのじゃ。前と違うのは血ではなく魔力を陣に流してみよ」


 和樹はゆっくりと陣の中心に向かっていく。

 たどり着くと立ち止まり、地面に手を当て魔力を流し込んだ。


 すると、陣が神々しく輝き下からではなく上から精霊が大きな白い翼を生やし、羽を舞わせながらザキと正反対の真っ白な髪で神々ししい姿をした美女が現れた。


「まさか…… 精霊の中でも最高位に分類に入る天使!」


 トイドの言葉を耳に入れながら、4人ともその神々しさから目を離せなかった。


「私を呼ばれたのはあなた様ですね。力と心にひかれて参りました、ウェルマと申します。お名前を伺ってもよろしいですか?」


「……和樹」


「和樹様ですね。私を和樹様の精霊としてどうかお仕えさせてください」


 ウェルマは和樹の前で片膝をつき頭を下げた。


「トイド。どうしたらいい?」


「精霊の頭に触れることで契約成立じゃ」


 和樹は真っ白な髪に触れた。


「ありがとうございます」


 ウェルマは立ち上がりザキを睨みつけた。


「それで和樹様。そこにいる黒い醜い悪魔はいったいなぜこのような所に居るのでしょうか?」


 ザキも目つきが変わった。


「和樹。悪いが前言撤回だ。こいつとは仲良くなれる気がしない」


 2人は言い争いを始めてしまった。


「ウェルマ。この悪魔は俺のもう1人の契約している悪魔のザキだ。なるべく仲良く頼む」


「和樹様がそうおっしゃるなら仕方がありません」


「気に食わない奴!」


 何とかいい争いが収まり和樹は3人のもとに戻った。


「和樹には驚かされてばかりだな。さて次はどちらが行く?」


「和樹の精霊見た後だと行きづらいわね」


「じゃあ私が行くわ」


 コモナが歩き出した。

 その顔には緊張が見えた。

 陣の中心に立ち手を当て魔力を流した。

 すると下から光る穴が出現してそこから赤い巨大なイグアナに似た精霊が出てきた。


「ほほう。これもすごい。ドラゴン種の中の翼をもたずに強固な鱗と鋭い爪をもつ精霊か。ドラゴン種は獰猛でなかなか契約しないがどうじゃろうな」


「我はグレス。名前を聞いてもいいか?」


「私はコモナ」


「コモナか。悪いが試させてもらう。我の強固な鱗を纏った体にお主の全力の拳を我にぶつけてみよ」


「……わかった」


 コモナは右手を引き魔力を溜め、自分の体より大きなグレスの顔に目掛けて拳を全力でたたき込んだ。

 グレスは自分の鋭い爪で床に突き刺し、必死にコモナの攻撃に抵抗した。

 しかし、コモナの攻撃が勝りグレスは壁に向かって吹き飛んだ。


「グレス! 大丈夫?」


 心配そうにグレスを見つめるコモナはすぐに駆け寄ったが、グレスはすぐに立ち上がった。


「なかなかいいパンチだ。我はコモナを契約者と認め仕える」


 グレスは頭を下げた。

 コモナはグレスの硬い鱗に覆われた頭に手を当てた。



「さて、最後は姫じゃな」


「……わかりました」


 コモナ以上に緊張しているエリシスだが陣の中心に立つと覚悟を決めて手を当て魔力を流した。


 すると下から光を発しながら、体の周囲に剣を漂わせた全身甲冑をまとった騎士が現れた。


「私はセレヌ。幾多の刃を操る精霊だ。見ただけでわかる。あなた剣術の鋭さに。是非私と契約を結んでほしい」


 セレヌは膝をついた。

 全身鎧でわからなかったが声からして女性の精霊だった。

 エリシスはセレヌの頭に手を当てた。


「私はエリシス。セレヌ。これからよろしくお願いします」



「これで無事3人精霊魔術師になれたな。では最終訓練と行こう」


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