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「朝じゃぞ」


 和樹はトイドに足で蹴られて起こされた。

 地下というのもあり、朝なのか夜なのかもわからない状態だった。


「姫もさっき起きた。コモナが朝食を作ってくれておる。和樹も上に来るのじゃ」


 階段を上がりドアを開けると確かに外は明るく朝を迎えていた。


「和樹おはよう。なんか私は習慣で勝手に目が覚めちゃった。もうすぐ朝食出来るから待っていてね」


 和樹が椅子に座ると、地下に続く扉が開いた。


「みなさん、おはようございます。髪を整えるのに時間がかかってしまいました」


「おはよう。姫も座るといい。もうすぐコモナが作った朝食が出来るところじゃ」


「わかりました」


「みんなお待たせー。食べましょう」


 和樹は目が覚めてから食事中ですらイメージを浮かべる。

 今回はトイドとエリシスも和樹の様子を見て変に感じた。

 朝食が食べ終わり、いざ外に出て訓練場に向かおうとした時、和樹が口を開いた。


「トイド。魔術の肝心なのはイメージって言ったよな?」


「そうじゃが、それがどうした?」


「ちょっと試したい魔術があるんだけどいいか?」


「それは構わないがここら辺を吹き飛ばすような魔術じゃないじゃろうな?」


「違う。けど失敗するかもしれないからちょっとみんな離れていてくれ」


 和樹はトイドの家とみんなから離れ、イメージした。

 精神エネルギーを脳に集中させ、そのまま両手を前に出した。

 するとその場の空間が歪み始めた。

 和樹はさらにイメージを膨らませ、扉の形をした魔術を出現させた。

 扉の中には別の空間が見えた。

 トイドは驚きを隠しきれなく目を見開いてその場の光景を凝視した。


「これはまさか! 転移魔術!」


「転移魔術? 幾多の魔術師が挑戦したが今まで誰1人成功しなかった、別の場所に移動できるかもしれないという魔術ですか?」


 エリシスも最初はその光景に何が起きているのか理解できていなかったが、トイドの発言により目の前で何が起きているかを理解した。


「たぶん出来た。ちょっと入って見てくる」


 和樹は扉の中に入りその場の光景を見て、3人の元に戻った。


「成功した。3人とも来てくれ」


 和樹が先導して、3人とも扉の中に入った。


「ここは訓練場の中か! これは驚きじゃ」


「嘘みたい。誰1人成功しなかった魔術を昨日言われた事だけで完成させるだなんて……」


「和樹! すごい!」


「寝る前から色々な魔術を考えた。色々試したい」


「これは参った。これはすぐ魔術も和樹に抜かれてしまうな。いいじゃろう。実戦形式で色々やってみよ。お主が足りないのはあとは経験じゃ! 3人で来い!」


 トイドは高ぶる気持ちで3人に戦いを挑ませた。


「2人ともまずは私から行きますよ!」


 エリシスは昨日、和樹に使った爆風を頭上から押し付けトイドの動きを止めようとした。

 しかし、トイドは押し付けられる前に頭上に向けて拳を突き上げた。


「確かにいい魔術じゃがわしレベルになるとまだまだ威力が低い。もっと強いイメージを持つのじゃ!」


 するとコモナが側面からトイドに接近し重い一撃のパンチを繰り出した。

 トイドは右手で受け止めた。

 すかさず、コモナは両腕で勢いよく連打をトイドにぶつけようとした。

 しかし、それをトイドはすべてかわす。


「いい威力の連打じゃが当たらなくては意味がない。もっと早く力強くなるように精神エネルギーを全身に巡らせるのじゃ!」


「コモナ! 横に退け!」


 和樹の大声に反応してコモナは右に瞬時に退いた。

 和樹は両手から雷を放った。

 さすがのトイドも光速の速さを持つ雷は避けきれず、直撃した。


「確かに雷の速さは避けきれぬがその程度の攻撃ではわしは倒れぬぞ!」


 和樹は、今度は巨大な炎の珠を生成しトイドに向けて放った。


「威力は高そうじゃが遅い!」


 横にかわし和樹の方に瞬時に距離を詰めようとした。

 するとトイドの頭上に先ほどの炎の珠が降ってきた。


「なぬ!」


 トイドは炎が直撃して爆発を起こした。


 辺りは爆発により煙でトイドの姿が見えなくなった。

 煙が晴れると、トイドは以前見せた老人とは思えないほどの筋肉で体が大きくなっていた。


「まさか、炎の珠を避けたあと転移魔術で移動させタイミングよく上からまた出現させるとは驚いたぞ。じゃが……」


 トイドは一瞬で和樹の前まで距離を詰めた。


「もし、魔術をイメージする隙すら与えてこない敵が現れたらお主ならどうする?」


 和樹はとっさに距離を取ろうと後ろに跳躍したが、着地予定地点にすでにトイドが先回りしていた。


「甘い!」


 トイドは右手を後ろに引き、目に見えるほどのエネルギーを溜めていた。

 そのわずかな力を溜めている隙に、コモナが側面からトイドの腹部に強打のパンチを食らわせた。

 トイドは壁に向かって吹き飛ばされた。

 そこに追い打ちをかけるように、エリシスが風を纏った剣で多数の斬撃を放った。


 壁に打ち付けられ座り込んでいたトイドだったが、ゆっくりと立ち上がった。


「3人とも容赦ない攻撃じゃな。驚くほど速い成長スピードじゃ。まーそれも当然か。和樹は元々身体能力が高く、コモナは抜群の運動神経、姫はその若さでなかなかの剣技。そこにわしが教えた魔術の基本が加わってコツを掴めばすぐにでも強くなるか。ここまでわしとの戦闘訓練をすれば自分の課題が見えて来るじゃろう。あとは経験とイメージの特訓じゃ。見たところ、和樹はイメージを明確にいかに早く構成して魔術を発動させるかじゃな。コモナはさらに精神エネルギーを集中させ攻撃できるか。しかし戦闘中ずっと精神エネルギーを体中に巡らせていたらすぐに力尽きてしまう。だから必要な個所に必要な分だけ練り上げるのじゃ。姫は風の魔術をいかに剣技に混ぜるかイメージしてみるといい。経験に関してはわしが相手になろう。イメージは自主訓練。わからないことがあれば聞くとよい」


「俺は属性を色々とイメージしてみる」


「私はトイド様に言われた通りイメージしてみます」


「私はどうしようかな……」


「コモナはどちらかというと実戦経験を通して体で覚えるほうがいいじゃろう。わしが相手になろう」


「お願いします!」


 各々訓練が始まった。


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