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遺志の正体

 和樹は自分の力不足をまた感じながらトイドの家に帰る。

 家に入るとすでに机には料理が並んで3人とも座って待っていた。


「和樹遅いわよ! コモナが和樹が帰ってくるのが遅いから心配していたわよ」


「私はそんな心配だなんてしてないよ」


「外を気にしてそわそわしていたくせに」


「ちょっとザキと色々話していた」


「まーまー。その辺にして夕食にしよう」


 コモナとエリシスはトイドの言葉で落ち着き、和樹も椅子に座り食事が始まった。

 食事中も和樹は考え込んでいた。

 その姿をコモナは心配そうに見つめていた。


「ご馳走様。コモナはなかなか料理がうまいのう」


「よく家でお母さんの料理の手伝いしてるからかもしれません」


「姫はやはり料理はしたことないといった感じじゃったな」


「食器を洗うくらいならできますわ。後片付けは私に任せてください!」


「今日は客人なのにすまぬな。お言葉に甘えて頼もうかのう。和樹よ。少し外で話そう」


「わかった」


 すると椅子に座っていたコモナが急に立ち上がった。


「私もその話に混ぜてもらえませんか?」


 コモナの真剣な顔を見た和樹とトイドは座りながら目を合わせて、和樹は頷いた。


「よかろう。姫も一緒に話そう。後片付けはわしが後でやっておく」


「わかりました」


 エリシスもただならぬ雰囲気を感じ取り片付けを中断した。

 コモナとエリシスはまた椅子に座ると話が始まった。


「コモナ、姫。今から話すことはここに居る者と国王以外には他言無用じゃ。よいな?」


 2人とも頷いた。


「いずれ2人にも遅かれ早かれ話す必要があることかもしない。どこから話したらよいのか…… わしとコモナの祖母、マナが英雄と言われるようになった由縁は知っておるな? 世界を脅かした魔族の長、魔王を倒した功績として英雄と言われるようになった。じゃがな、実は完全に倒せたわけではないのじゃ」


「え? トイド様、どういうことですか?」


「実際には完全に倒すことができずに今は封印された状態で未だにこの世界に魔王は存在しておる。そして、魔王が封印されている場所こそ王都エルファルトなのじゃ」


コモナとエリシス驚いた顔をしたが、そのままトイドの話を聞き続ける。


「このことを知っているのはわしと国王、今は亡きマナと和樹だけじゃ。

 こんなことが国民に知れ渡ったら大混乱を招きかねない。

 しかし、見知らぬところに封印しておくのは逆に他の魔族が手を出したい放題で危険と考え、3人で封印した場所に国を作り魔族から魔王復活をさせぬように考えた。

 もちろんこれは危険と隣り合わせ。

 もし魔王が今後復活するようなことがあったら王都は壊滅するだろう。

 だからマナとわしで封印された状態の魔王を消滅させようとしたのじゃが、生半可な攻撃じゃ封印を解くだけになってしまう。

 そこで黒魔術を使い強力な大魔術で消滅させようと考えた。

 悪魔を召喚したがわしでは何を対価にしても消滅できないと言われた。

 しかし、わしより強いマナには消滅できる可能性があると言われた。

 しかしその対価は他者の命。

 心優しいマナにとってその対価は自分の命以上にあまりにも重い対価だった。

 悪魔にすらその対価に必要な人数はわからないと言われた。

 それはつまり、最悪の場合、自分を除いたすべての他者の命の可能性もあった。

 わし1人で済むなら望んで命をささげたじゃろう。しかし、マナには1人であろうとそんなことができなかった。

 そしてわしら3人は未来に賭けた。

 この世界の者では魔王は倒せない。神の加護を受けた転生者がいずれまたこの世界に現れ、マナ以上の強者であることを願うことにした。

 マナは自分の力をすべて使い王都を守る結界を作って現役を引退し家庭を築きながらいずれ来るかもしれない転生者にしか読めない本を作った。

 わしは念のため王都で魔族の襲撃に備えている。

 そしてようやくわしらが待ち望んだ転生者である和樹がやってきて、マナの本を読みわしのところまでやってきた。

 これがマナの遺志の正体じゃ」


「確かにそんな重大なことが国民に知れ渡ったら大変なことになり魔族も押し寄せてくる可能性も出てくるかもしれませんね……」


「だから和樹はお祖母ちゃんの本を読んでから顔つきが変わったのね。最近の雰囲気があまりにも違うから心配だったの」


「だから俺は強くならなくちゃいけない。けどトイド聞いてくれ。さっきザキと話しをしたが今の俺じゃ魔王は倒せないと言われた」


「当り前じゃ! 今のお主はわしよりも弱い。黒魔術を使えばわしより強いかもしれない。しかし、最低限黒魔術を使わずにわしを越えなければ魔王なんて到底無理じゃ。魔王を倒すには黒魔術を使える、使いこなせないの問題ではない。自分の力量をどこまで上げられるかが肝心なんじゃ。今黒魔術を教えているのは目の前の問題の魔族を倒すためじゃ。魔王はそれからじゃ」


「どうしたらもっと強くなれる?」


「和樹は身体能力に関してはわしと同等かそれ以上じゃろう。

 だから肉体的強化はいらない。

 あとは魔術と経験を積むことじゃ。

 特に和樹の魔術の才能は無限の可能性を秘めていると思う。

 おそらくほとんどの属性を使えるかもしれない。

 修行を始めたころの珠のことを覚えているか? 

 マナも不思議な珠の色をしていて七色に輝く虹色じゃった。

 色々な属性を使えたのじゃが、和樹は色が多すぎて濁り黒く輝く珠になった。

 つまりマナ以上の魔術の可能性を秘めている。

 おそらく魔族が和樹の体で度重なる実験をしたせいじゃろう。

 普通の人間なら人体実験をした時点で肉体が耐え切れず死んでいたじゃろう。

 しかし、和樹は不死の体。

 魔族は自分たちを強化するつもりかもしれぬが今後の和樹しだいで逆に自分たちの首を絞めることになるじゃろう。

 和樹は言ったな。

 考え悩むことが得意と。

 考えすぎや悩むことは息苦しく感じる事があるじゃろう。

 しかしじゃ、逆にそれを活かしてみよ。

 考え悩み自分にしかできない魔術でも作ってみよ。

 魔術で肝心なのはイメージ。

 和樹にぴったりじゃ」


「新たな魔術か……」


「まー今日はゆっくり休め。3人とも、地下に部屋がある。そこで寝るといい」


トイドがいくつかある扉の中から、左奥にある扉を開けると地下に続く階段があった。

 階段を降りるとドーム型の広い空間があり壁にはいくつかまた扉があった。

 トイドの指定した部屋で3人は寝ることになった。

 和樹は目をつぶり頭の中で色々なイメージをしながら眠りについた。


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