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我、異世界には神越えなる技があると知る。

「何なのだ何なのだ何なのだアレはっっ!!」

何事も無かったかの様に、てこてこと前を行く女の肩を些か乱暴に掴み振り向かせると同時に我の口から出る疑問。さぁ答えろ馬鹿女、ちょっと眠りについてた間に現世に何があった!?


「煩いなぁ、何処にでもある人間の『普通で☆平和な♪朝市のヒトコマ☆』ってヤツじゃん。」

「見た事も聞いた事も無いわぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!」

思わず頭を抱えて絶叫。

「を、初体験か。良かったな、その年齢で大人の階段登りまくりじゃーん。」


ホレ林檎やるから元気だせー☆とぶつけられる瑞々しい林檎、…林檎に罪は無いが肩掴む位の至近距離で顔にぶつけるのは嫌がらせ満々だろ馬鹿女。食うけども。


結局ギルドマスターが女店主に吹っ飛ばされた時の爆風と馬鹿女の手持ちの煙玉で何とかその場を離脱する事が出来、這う這うの体で逃げた砂埃でボロボロな我と何故か無傷なほくほくの笑みの馬鹿女。

馬鹿女に至っては胸元に抱えた香辛料が入った小袋を覗いては「今日は状態が良いのがあった♪」と鼻歌まで飛び出す始末である。小袋を開ける度に鼻先を香りが掠めて行くのが今の我には心底鬱陶しい。


「…本気で理解出来ん。」


林檎の芯をその辺の野良犬へ放り、野菜が入った紙袋を抱え直し馬鹿女の旋毛を見下ろしながら独り言。

あの者達が本気で野菜一つにあれだけ命懸けで買い求めているのは何故だ?争わず順番に買えば時間も労力も命も無事だろうに。そうすれば『朝市秩序順守隊』とやらももっと少人数で済むだろう。そんな無駄が出来る程この国に余裕があるとは見えぬ。


「まぁ、ぶっちゃけ原因は聖女様。要は食料問題やら何やらにテコ入れ?して聖女ショックが起きた訳だわー。」


「また聖女か、我の知る聖女は無駄に気取った騎士だの王子だのの横で光魔法か教会の奥に引っ込んでの祈りでの浄化か位のが主流だったがな。たまに毛色の違う破天荒なのが現れるが大概は貴族の高位に嫁いで歴史の波に埋もれていく者達だったが。」


その言葉にニヤリと笑い、帰り道すがら良い機会だから話してやろうーと馬鹿女。あーなんだか不快とっても不快、殴りたいがこの身長差だと絶対我が悪者になるよなコンチクショウ。


馬鹿女曰く、まぁ10数年程前この国の大暗黒期に召喚した聖女が()()()()大当たりだったと。


大雨突風雷湿気過多の清々しい日に、王族・貴族・神官長級に魔術師団で行った聖女召喚の儀で現れる一人の女。黒目黒髪象牙色の肌は黒曜石の精霊と言っても過言では無い程神秘的で『激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム』の気を纏い『なんばしよっとかきさんらぼてくりこかすぞどこちゅうだこら』の威圧で召喚の間を過重力空間に変えーー…


「待てぃ馬鹿女、それ本当に聖女か?」

「ボロボロになった女神様掴んでたから間違いない。」

「確かに異世界からの召喚者はまず担当女神との接見があるが…ボロボロ?」


なんでも女神の『私の十八番、『くしゃみ1発☆うっかりミスって天罰ミンチ肉プレス』でもう貴女の還る身体は無いから私の管轄する世界に行くしか無いの♪えへへっ☆

それでね、ちょっと世界を救うお手伝いして欲しいなっ♪』の説明でブチキレたそうだ。片手に女神様の髪の毛つかんで引き摺ってのご登場は記録に残る歴代聖女様召喚の儀では無かった事で歴史資料館にその瞬間の絵画が天井画として残されていると…。


「…ここの国教の女神って天上界でもそこそこの地位だぞ。それをゴミクズ扱いの上に絵に残すとはな…。」

「『永遠に笑われろ』と聖女様からのお達しでな、女神様顔中からあらゆる汁出して泣いてた。」


で、まずは神官長からの説明『世界を巡礼し魔族に汚された地の浄化を、そしてゆくゆくは王子の后として我等の子孫で地に栄えを。』『…王子って彼処の縦巻きロールカボチャパンツ白タイツ男か、アイツ存在自体がだっせぇから嫌。』で王子自尊心へし折られる。

「あの王子(ぼんぼん)帝王学習ってからと言うもの『王道復古素晴らしい主に初夜権とか☆』ってかなり都合のいい昔のしきたりだけに拘りだしてたからなー、バッサリ断られた後の隠しきれない周りのクスクス笑いに涙目で愉快愉快。」

「ぼんぼんって…一応忠誠を誓った国の次代だろう。貴族らも忠誠とかさぁ…。」


で、王へ質問と言う名の尋問「尋問…」「襟首掴んでメンチ切ってたからなー、王公貴族が『ハイッ、スビバセン説明サセテイタダキバスゥゥッ(泣)』って噛みまくりで喋るの初めて見た。」「聖女半端無いな。」


それでも王妃は果敢にもしたり顔で『いけません聖女様、憎しみからは何もー』なんて説得しようとして『少なくともお前の鼻も指を()()して()()すると私の気は晴れるが?』と、王妃の鼻の前で両人指し指を差し込んで引きちぎる様な動作をされたら黙って部屋の隅まで下がって2度と口を挟まなかったと。

「何処にでも居るんだよなー、要らん口を突っ込んでくる第三者。」

「だからお前の遣える主君だろうが。…まぁその類いは少なくとも良い方向に転がった試しは無いな。」



で、事情を粗方把握して「わかった。諸国を放浪して揉め事に首を突っ込んだ挙げ句、悪者を万民の前で吊し上げ国家権力でトドメをさす隠居爺と愉快な仲間達の真似事をすればいいんだな予算まるっとそっち持ちで。」と使えそうな人物見繕って聖女は早速旅立ったー死屍累々なお偉いさんを尻目に。


「使えそうな?」

「主に召喚の間の警備してた騎士団だの魔術師だな、「法だの秩序だのの対策用」とかで宰相の跡継ぎも選ばれてたなー。そこに下心と出世欲と虚栄心アリアリで『私も貴女のお側で世界を救うお手伝いをしたいのです。』とか言って目の前にひざまずいて来た貴族の次代連中には『良い位置だ!』とか言いながら顔面を狙って膝蹴りしてた。両手を掴まれてた時は相手の両手首を掴み返して逃げられない状態でヒザを叩き込んでたなー。因みに『閃光魔術』と『神越え』と言う技らしい。」

「閃光魔術…?神…越え?」


えーとつまり異世界の民は神すら敵に回す程の荒廃した世界だと言うのか…八百万の神と?しかも肉体言語で?


「…ここ担当女神よく生きていられたな。」

「なー。」

「聖女半端無いな。」

「なー。」





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