表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

我、貞操の危機に乙女の如く震えるばかり。

「うををををぅ八百屋にはしれェええええ!!!」

「うるせぇええええ並びやがれぇええええ!!!!」

「今度こそ俺にニンジッ…!ぐはっっう」

「金を投げ付けて払った気になってんじゃねぇぞおおおお!!釣りと目録受け取らねぇ奴ァ明日のおてんとさん拝めねぇと思ええぇえええ!!!!」

「ワタクシに大こっ…んんんっぐふうう!!」

「そこの貴族の使いっぽい奴ぅ!テメェ子供押し退けやがったな天誅ううううう!!」



阿鼻叫喚阿鼻叫喚阿鼻叫喚…、市場の出入り口で立ち尽くす我の脳裏はその言葉しか出てこぬ。…あ、また一人爆風魔法で吹っ飛ばされた。


何が起きているのか。

まるで国獲り合戦かの如く客側と秩序隊がぶつかっている、野菜に群がり掴み獲ろうとする客側と荒すぎる客対応。店舗のど真ん中で腕を組み彫像の様に動かぬ女店主…、あれが端に避けたらまだ平和的に商売出来ると思うんだが。ふと気付けば八百屋どころか魚屋も肉屋も…どの店舗も同じ様である。




「なぁ、そこの美丈夫。」




暫く遠い目で逃避している我に八百屋の彫像…、もとい女店主が声を掛けた途端に水の波紋が拡がるが如く収まる阿鼻叫喚。「をい、あの不動の婆さんが動くなんざ…何時以来だ。」「婆さん動かすのはあの娘だけだったのに。」なんて声は聞こえるが。


髄分と年はとっている婆…女性の筈なのだが服に隠しきれないぱっつぱっつな筋肉と…背の高さ、筋骨粒々のギルドマスターと呼ばれる男より頭ひとつ分は余裕でデカイってコレ人間なのか。あの胸筋はオパーイ?雄パーイ?脳内大混乱で固まる我の真正面に金棒片手に煙草をふかしつつ歩み寄って来る。



「あんた見ない顔だね、何処の誰だい?御貴族様ってヤツかい?」

「…いや我は女宮廷魔術師のー」

「あぁ、あの娘っ子の同僚か、差し詰め他の同僚からあの子の世話を押し付けられたって感じかね?」

「………。」


黙る我に「へっ、図星かい」と鼻で笑うが「イイエー昨夜召還されたばかりですぅー、答えたくとも身動ぎしようものなら貴女にヤられると思ってるからですぅー雰囲気が魔王と酷似してて動けませーん☆」などとは言えぬ、存在が消滅させられても言えぬ。


「あの娘っ子、自分じゃもう値引きもオマケもしてもらえないからって…まぁ今回はあの娘の策略にのってやろうか。さぁ何が欲しいんだいアタシが直々にお相手してやるさね。来な」


店側に踵を返す女店主、「あんな態度で気に入られるたぁ…お前大物だな。」とギルドマスターが汗を拭うのを横目で見つつローブで隠れた足ガクブルを隠す為にもゆったりと着いていく。


「で、何が欲しいんだい。あたしの八百屋はどれも味は保証するさね。」

「確か馬鈴薯人参玉葱とー」

「馬鈴薯ならコレさ、煮込むよし蒸かすもよし用途で選らばにゃならんが何も聞いてないなら万能タイプがいいだろうね。ーで、玉葱ならコレか。この表面の茶色い皮だってお茶になるんだって聖女様が言ってたねぇ、面倒なんでやらないがね。」


案外普通の会話をしつつヒョイヒョイと我に持たした紙袋に注文した品を放り込んでいく。見た目と違ってわりかし普通の人間だったかー?


「人参なら大きさも甘さもダントツなコレだね」と選ぶ女店主が急に何かを思い付いたかの様に此方を向いたかと思うと急に顎を掴まれて目線を合わせられる、女店主コワイ目がコワイ肉食獣の目ェしてて超コワイ。




「そう言えば…、アンタみたいな美丈夫の()()はどんなに美味なんだろうかねぇ。試してみるかい。」




ッッギャーーーーーーーー!!!!!!母なる混沌ンンンン母なる混沌ンンンン子である我貞操の危機いぃいいい!!!!今なら帰る気満々ンンンン刺激が欲しいとか退屈とか言って出奔してごめんなさいいいいぃその微睡みで我を包んで隠して溶け込ませてぇええええええ!!!!


「早朝から破廉恥発言な八百屋の婆ァに教育的指導の火球攻撃ぃー☆」


「来たね娘っ子、相変わらずの育たない外見さねっ!」


火球にしては威力の大きい火炎魔法を金棒で空高くへ打ち返す女店主。手が離れ、これぞ幸いと馬鹿女の後ろへ転移する我。よーしよしこの距離なら触られないヤられない、「2対1か…ちと分が悪いかね。」なんて女店主が勘違いしてるので黙って澄ましておこうそうしよう。


「婆ァ、好みのオトコ接客出来て寿命も延びたろ?感謝の印に割り引いた挙げ句にオマケ山盛り寄越せ。」

と、下から蔑むかの笑顔で馬鹿女。


「ふん、問題行動だらけで出禁寸前の小娘が何言ってんのさ。野菜が傷むだろう市場で火球維持して威嚇すんじゃないよ、お代はキッチリ払いなオマケなんて勿体無い真似誰がするかね。」

世紀末覇王が如き威圧感で捩じ伏せる様に見下し、けんもほろろな女店主。



それらに圧倒され、咳きのひとつもしない朝市の静寂を破ったのは馬鹿女の方からだった。


「なら熱々な銀貨でお支払いだ!有り難う御座いますと額を地に擦り付けておー言いっ☆」

「貨幣を熱すると屑になるから支払った事にはならんと何回言やぁわかるんだいこの魔術馬鹿が!」


ー母なる混沌よ、そして我が一族を率いし魔王よ。

暫し見ない間にあの脆弱だった人類は恐るべき進化を遂げつつあるので、そちらに帰還の折りには何処かの片田舎の古城でのんびりと過ごしたいと思います☆的な事を考えつつ強力な結界を張ろうと思う、我だけ守るヤツ。有象無象を守るのは朝市秩序順守隊の奴等の仕事なんで知らぬ。


それにしても打ち返された銀貨が粉々になり、周辺の人間に降りかかる様は天界との最終戦争の時に見た焔の雨の様で少し追憶に浸ってしまうなーあははははははー☆






あ、間に入ったギルドマスターが(以下自粛)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ