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綾瀬はオタクであった

お互いの間に少しの静寂が訪れる。綾瀬はさっきの「え?」を言ったっきりで動く気配がない。

うん、きっとこれは俺の見間違いなんだろう。俺はそっとドアを閉めようとするとーー。


「ちょっと!?お願いだから無言で立ち去ろうとしないでー!」


綾瀬が凄いスピードでドアを掴んで俺にそう言ってきた。綾瀬の顔を見ると興奮と羞恥のせいなのか顔がすごく真っ赤になっていた。てか、顔近!


「逃げない!逃げないから少し落ち着いて!」


女子とここまで密着する事など今まで無かった俺には逆に辛いんだよ!嬉しいけど!

俺の言葉を聞いた綾瀬も平常心を取り戻したのか一歩下がって"俺の手を掴む"。


「え?」


「とりあえずさっさと中に入りなさい!」


そう声を掛けられて、俺は部屋の中に引っ張られるのだった。






「それで?何か言うことはない?」


そう俺を見下ろしながら綾瀬は聞いてくる。

何故こんなことになってるかというと、部屋に連れ込まれるなり有無も言わさぬ勢いで「座って」と言われ、そんな綾瀬から謎の圧力を感じた俺は何故か正座をして今に至る。

にしても、何か言うこと......。とりあえずこの空気をなんとかしなければ......。


「綾瀬ってオタクだったの?」


「ちがーう!確かに違わないけど......。違うの!私が言ってるのはもっと別のことよ」


案の定怒られた。うん、やっぱり素直に謝るのが一番だよな。


「勝手に部屋に入ろうとしてすみません」


そう言うと何故か綾瀬は表情を浮かべていた。まさか俺がかなり言い訳をすると思ったのだろうか?まぁ、うん。俺も言い訳したいけど、謝ったほうが早く終わりそうだしな。


「そう、分かればいいの。それで、何の用で来たの?」


「えーっと......これこれ。このプリントを渡せって言われて来たんだよね。後は個人的にも少し心配だったから」


そう言いつつカバンからプリントを取り出して綾瀬の方を見ると何故かポカーンって顔をしていた。なんでだ?


「心配してたの?」


「え?まぁ、会話が無かったとはいえ隣の席になった転校生が1週間ぐらい経って学校休んだら心配するよ」


「......それは、私がオタクって知った後でも?」


俯き、何かを押し殺したように綾瀬がそう聞いてくる。

何故ただお見舞いに来ただけなのにこんな事聞かれるのだろうか?まぁ、1つ言えるのはーー。


「当たり前だよ」


そう言うと俯いたまま「そう」とだけ呟いた。それから1分ぐらい沈黙がこの場を支配する。あれ?俺もしかしてヤバいこと言っちゃったかな? そんな事を考えていた時未だ手に持っていたプリントをひったくるように奪い取られた。


「受け取ったから今日はもう帰っていいよ。てか、私も早く着替えたいから帰ってくれる?」


未だ俯きながら綾瀬はそう言った。そう言えばさっきから綾瀬はコスプレ(だよな)をしてるんだった。


「え?あぁ、うん。分かった」


俺は立ち上がり部屋から出るためにドアに手を掛ける。その時、背後で綾瀬が「あ」と言ったので思わず足を止めて振り向く。


「言い忘れてたけど、もし私がオタクだってことを誰かに話したら貴方が私の部屋に無断で入ってあられもない姿を見たっていうから」


ちょ!?何言ってるの!?


「まぁまぁ、言わなかったら私も言わないから。それに......強ち間違いでもないでしょ?」


そう言われて綾瀬の今の服装を見る。......うん。強ち間違いでもないなこれ!


「はぁ、分かったよ。誰にも言わないよ」


そう言うと綾瀬は満足そうにうなづく。


「そう、それは安心ね。それじゃあまた明日ね」


「あぁ、また明日な」


そう言って俺は綾瀬の家を後にした。






この時の俺は明日の波乱を知る由もなかった。

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