神に近い男、地区大会に出る
「俺がこの大会を制して、世界を征服してやる。」
嫁と一度会話したきり、何も接点がなく、焦った俺は彼女を手に入れるために世界を征服すれば彼女と釣り合いがとれるようになるのではないかと思った。
「いやいや、海堂くん、それは無理でしょ。君、ボッチじゃん。」
痛いところを突いてくるが、俺には一応ライバル(名前を知らない)がいるわけだし、彼も広義では友達に分類されるはずだ。俺は転生してからナナリーというメインヒロインを得て、スーパーリア充に生まれ変わったのだ。世界征服をすることはリア充になることよりも俺には簡単なことである。
「海堂くんは色々と女の子に幻想を抱いているけど、ちゃんと彼女たちと関わってみたらどうかな?」
それができたら苦労しない。俺はあれ以来ナナリーに視線を送ったり、スカートをめくったり、小突いたりしてきたが、彼女は俺から逃げてしまう。そんな恥ずかしがり屋な彼女のために俺ができるのは地区大会という晴れ舞台で優勝し、全国を制覇し、箔をつけることだけである。
「俺には大会での勝利しか残されていない。ようやく漫画の主人公の気持ちが分かった。」
自分に自信がなく、魅力を感じないのであれば、勝利することによって手に入れるだけである。俺は必ず戦いに勝利してやる。
「せいぜい頑張ってね。応援してるよ。」
神さんの口調がだいぶ軽い気がする。まあ、どうでもいいか。
「地区大会の目的は優勝だけではない。俺には真の目的がある。」
俺はこの大会で新たなヒロインを探すことも怠らない。少女漫画でも一人の男を巡って女の子が争うが、ナナリーは危機感がないし、他の二人のヒロインはクラスが違うので、ほとんど接点がなくなってしまった。そのため、彼女らには俺を巡って戦うという気概がない。そこで、新たなライバルキャラを見つけて、彼女らに発破をかけてやる必要がある。目標がなければ、おそらく彼女たちはいつまでもぬるま湯につかったままであろう。そんな覚悟では俺の嫁が将来務まるかどうかがわからない。世界最強の妻になるのだから、言葉は当然話してほしいし、できれば甘えてきて欲しい。
「ま、神さんには俺の真意は分かるまい。」
「まったく興味がない。どうせ、スケベなことしか考えてないだろ。」
こうして、日々訓練を積んでいるうちに、地区大会当日となった。
大会会場は俺の町から馬車で数日のところにある。この世界では言葉が使えなくとも、相手の目を見て、ジェスチャーや仕草でコミュニケーションが取られる。だから、話せなくとも目的地にたどり着くことはできるのだ。
俺はこの日のために馬車のなかでテストの採点表を作成して来たのだ。楽しみである。
「s,a,b,b,b,c,f,e,d,d,d,d,d,d,d,d,d,d,……レベルの低い大会だ。がっかりだ。」
体格が良く、ムキムキな奴らが多かった。そして、彼らは大体小学校5年や6年であり、成長の余地はもうないであろうと思った。この中に俺の嫁のライバル候補になる人材はほとんど存在しないであろう。嫁たちが同じくらいの年齢になったら必ず彼女たちの見た目はもちろん、強さにおいても超えているだろう。
ただ、一人だけすさまじいポテンシャルを感じる。Sランクでかつ嫁と同じくらいの年の子供が一人いた。大したものである。その若さで小学校の戦いを制するというのはなかなかできることではない。ざっと、小学校3年生か4年生であろうか。彼女であれば俺の嫁になっても不思議ではないだろう。
見た目は俺よりも10cmほど背が高く、年の割には胸も大きい。ぜひとも拝んでみたいものだ。そして、顔も西洋人形のように整っていて、整っている。髪は艶やかな黒髪で、前世の世界であればぶっちぎりでNo.1の容姿であるといえる。
今回の剣術大会は全国大会以外はバトルロイヤルである。
だから、俺は試合開始の合図と同時に本命から攻撃することにした。
試合開始までの間、綿密なプランニングをし、俺は大会に臨む。