プロローグ
ある日、学校の教室が爆発し、中にいた生徒が肉片となった。彼らは死んだという自覚はなく、その魂は無傷のまま空間を漂い続けた。だから、意識のある状態で数千年の間、漂い続けた。
そして、彼らの魂は偶然にも異世界に流れ着いたのであった。そこで彼らは異世界で転生することになると異世界の神様から言われた。記憶も人格も引き継いだ状態での新しい人生。肉体を失った彼らは受肉できることを知り、歓喜した。
「お前たちの魂は長きにわたる旅を経て、神に近づいたと言っても過言ではない。お前らには神の加護を付与しよう。」
学校の生徒たちは歓喜した。剣の加護、弓の加護、槍の加護といった戦闘用の加護が多かったが、中にはモテ男の加護といった変わった加護もあった。
神によると新しい世界は魔法と剣の世界であるという。平均寿命も日本人に比べたら短い。
戸惑う人もいたが、喜ぶ人の方が多かった。彼らは誰かと関わりたかった。それだけだ。
すぐさま加護を選択し、彼らは転生した。彼らの多くは転生の際に魂を磨耗し、自分の名前を忘れていた。そんな中で前世の記憶を完全に継承したまま、転生した男がいる。
そして、転生から5年が経過した……
「言語の加護を選ぶとは、流石は神に最も近い魂を有するもの、天晴れだ、って君が言葉の加護を選んだとき私は思ったよ」
「え、そうなんですか。前世だとコミュ障だったので現世では友達と彼女を作るためにその加護を選びました。まあ、現世でもまだどちらもいませんけどね。」
「私は君に感謝しているよ。いつも私の話し相手になってくれてありがとう、海堂翔太くん。実は私もボッチだから安心してくれ。」
「知ってますよ。はあ、どうせなら神が美少女なら良かったのに、残念だ。」
海堂翔太、現世での名前はケルビン・ブライアンと名前こそ変わったが、今日も一人でぶつぶつと神と交信している。