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龍帝記  作者: 久万聖
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雪解け、仕事。

 リュウヤの肝いりで、新しいリュウヤの名、「リュウヤ・リューシウス」を発表した。


 ただし、その名はこの地の雪が消える頃、春の陽気に消え去る雪のように人々の記憶から溶けてなくなり、公文書の中でのみ知られる名前となった。


 その悲惨な有様にリュウヤは頭を抱え、サクヤが必死に慰めていた。


「それだけリュウヤという名が、この地の民の統合の象徴として浸透しているということではありませんか。」


 いや、たしかにそうなんだろうと思う。だからこそ、「リューシウス」なる名前があっさり忘れられるのだろう。


 ただ、「リューシウス」という姓が生まれたことを喜ぶ部署もある。サクヤを中心とする宰相府の、特に外交に関わる者たちだ。外交文書に名前だけで、姓が無いと「野蛮な蛮族」と看做されかねない。


 些細なことではあるが、外交としては重要なことなのだ。


 サクヤの慰めもあり、立ち直ったリュウヤは住宅建設の陣頭指揮を執る。冬の豪雪にも耐えられる強度を持つ家。リュウヤが参考にしたのは、飛騨高山の白川郷。合掌作りの家と、北欧のログハウス。


 それをエルフたちと協議して設計し、建設する。


 雪の降っている間に木材を加工してきたこともあり、建設は急ピッチで進んでいく。


 リュウヤが住宅建設の陣頭指揮を執る一方で、サクヤを中心とする宰相府は、イストール王国の使節団を迎える準備を進める。それだけでなく、宰相府はもうひとつの式典を企んでいるのだが、そのことをリュウヤは知らない。


 トール族もサギリの指揮のもと、道路整備にあたっている。整地した後、冬の間に大量に準備した煉瓦を敷き詰めて舗装する。


 トール族いるところにリュウネあり。


 リュウネも一生懸命、お手伝いをしている。煉瓦をひとつずつ「うんしょ、うんしょ」と運んでいる。


 彼女も、学校が設立されれば、通わせる予定になっている。


 森の外周部の集落は、エストレイシアの指示のもとに集落外周部に柵や土塁、堀が作られている。それだけでなく、所々に櫓が作られ砦化している。それだけでなく、それぞれの集落がが補完し合い、難攻不落の要塞のようでもある。この複雑な設計を行ったのは、もちろんエストレイシアである。"戦巫女"の二つ名に恥じぬ、その軍才を発揮している。


 それだけでなく、もしもの時の避難場所を森の中に用意しており、万一の備えにも怠りはない。常に最悪を想定して対処する。それこそが軍を預かる者の役目だと、そう考えているエストレイシアらしいとも言えるだろう。



 食料増産を図るルドラたちも忙しく動き回っている。


 周辺集落の編入と作付け。


 森の中にある、開墾地を使用しての作物の栽培実験。


 さらに現在飼育されている馬の放牧地の確保。有角馬(ナルダ)はデックアールヴしか飼育できないため、そちらに関与することはないが、将来的には牛や羊、山羊や豚の飼育も視野に入れているため、その用地の確保も必要になる。

 そのため、ルドラたちエルフも多忙な日々を過ごしていた。



 そして、イストール王国より先ぶれの使者が到着する。


 三日後に出発。七日の旅程にて到着予定である、と。


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