この世界での名前
つもりに積もった雪が溶け始める頃。
この日の会議は、リュウヤのこの言葉から始まった。
「君たちの7日は随分と長いんだな。」
この世界での名を提案してくれ、そう言ったのはジゼルが帰った直後だから、もう2ヶ月以上経っている。なのになんら音沙汰がない。
さあ、どうなっているんだ?
そんなリュウヤに対し、周囲は"そんなことあったっけ"といった様子である。
「そんなことを言われてもなぁ。」
ギイが言う。
「すでに"リュウヤ"という名が浸透しておりますから。」
グィードがギイの言葉を継ぐ。
「それを今更変えると言われましても。」
テオダートがさらに継ぎ、それを皆んなが"うん、うん"と頷いている。
「名を変える意義は理解しております。ですが、名を変えても、それが浸透しなければ同じことではないでしょうか?」
ラムスンドの言葉だが、これが一番の真実を含んでいるだろう。たとえどんなに良い名前だろうと、浸透しなければ意味がないのだ。
「ですが、陛下の御意志もありますし、なにか良き名はありませんか?名でなくても、姓の方でも。」
サクヤがリュウヤをフォローする。
「なにか、陛下の御意志を象徴するようなものを。」
リュウヤの意志。
それをどこに置くか。
「リュシウ。」
エストレイシアが呟く。
「リュシウ?」
「古き言葉で、"集める"や"合わせる"、"纏める"といった意味になります。」
種族の宥和。その象徴としては良い名に思える。
「リュウヤ・リュシウ、か。悪くはないな。」
"リュシウ"では短くないか、そんな意見も聞かれ、最終的に"リューシウス"と決まる。人間族の"呼びやすさ"が優先されることになった。
"リュウヤ・リューシウス"、この名が翌日、布告されることになった。
結局、大して変わってないですね。
夕方の更新、都合により遅くなります。
申し訳ありません。