少女の想い
夜も更けて、宴も終わる。
龍弥もあてがわれた部屋で、ベッドに倒れこんでいた。
ギイにしこたま酒を飲まされたためだ。
「魂は四十代でも、身体は少女(年齢はいくつだ?)なんだから、考えてくれよな。」
と、痛む頭でぼやく。見かねた巫女姫が止めなければ、もっと酷いことになっていたかもしれない。
「これで名前を考えろって、どんな罰ゲームだよ。」
そんなことを考えながらも、少しずつ微睡みの中に落ちていく。
ここはどこだろう。
木々があるが、生い茂っているわけではない。
木々の反対側を見ると、砂漠のような風景が広がっている。
"ああ、大扉の前から見たオアシスのひとつか"
そう理解する。
その一方で、理解の外にある出来事も起きている。
木が燃える匂い。そして煙。
何が起きているのか、すぐにわかった。
目の前を逃げ惑う人々がいる。そして、その人々を追い立てる武装した人間たち。
馬に跨り、剣や槍をふるって人々を追い立てていく。
"奴隷狩り、か?"
母親らしき女性に手を引かれて逃げている少女を見つける。
少女の顔に見覚えがある。自分の依代となった少女だ。
これはこの少女の記憶か?
泣きながら母親の手を握りしめている少女。
必死に、女子供を逃がそうと戦っている男たち。
多勢に無勢、ひとり、またひとりと倒されていく男たち。
人間たちに追いつかれていく。
少女を守るため、母親は落ちていた剣を手に取り人間に向かっていく。少女の目の前で、母親は・・・
場面が変わる。
少女は座り込んでいる。
さっきの場面の最後、はっきりとは見ていないが、どうなったのかは想像できる。
ふさぎ込む少女の前にいるのは巫女姫。なにか少女に話しかけている。
少女が巫女姫に抱きつき、号泣しているところで、再び場面が変わる。
さっきまでとは違い、少女は明るく笑っている。
少女の周りにいるのは巫女姫と、あの従者の二人。ドヴェルグのギイもいる。
他の龍人族やドヴェルグたちと遊んでいる。どうやら可愛がられているようだ。
その場から巫女姫と従者、ギイが離れていく。
なかなか戻らない巫女姫たちを探す少女。
あの大扉の前に四人はいた。
なにかを深刻な表情で話している。
"始源の龍を復活させる話、なんだろうな"
少女が巫女姫たちの前に出る。
なにかを少女が言い、皆んなが驚いている。
何かを巫女姫が言っている。
"ああ、そうか。この少女は自分から依代になると、そう言い出したんだ"
なおも巫女姫は少女に話している。内容はわからないが、思い留まらせようとしているのだろう。それでも、少女は翻意することはなかった。巫女姫は少女を抱きしめて泣いていた。
少女が自分に向かって何かを言っている。
内容はわからない。
ただその表情は、期待のこもっているようにも、申し訳なさそうにしているようにも見えた。
そこで龍弥は目を覚ました。