訓練
訓練場には、話を聞きつけた者たちが集まっていた。
「リュウヤ陛下、直々に稽古をつけられるそうだ。」
そのことに興味津々なのだろう。
実のところ、龍人族のなかでさえ、リュウヤが実際に戦っているところを見た者は少ない。
見た者たちから聞いた話で、強いことは理解してはいる。だが、どれほどの強さを持っているのかは知らない。
タカオら6人は、それぞれ得物を選び待機している。
タカオは両手持ちの剣。イコマは剣と盾。イブキとトウウが短槍。シュウウとカスミは弓を持ち、腰に小剣をさげている。
そこへ、リュウヤが入ってくる。剣を二本。それが得物だ。
そして遅れてサクヤがトモエとシズカを伴い、入ってくる。立会人という立場になる。
「双方に確認します。魔法及び龍化の禁止。そして、6人のうち誰かが陛下に一撃を与えることができれば、そこで終了。それで良いですね?」
全員が頷くが、見学人は皆どよめく。そんなどよめきの中、サクヤは右手を挙げ、号令する。
「はじめ!!」
場を離れたサクヤたちに、エストレイシアが近づく。
「6人同時、なのか?」
「はい。」
いくらなんでも無謀ではないのか?あの6人のうちの何人かは、人質救出作戦で戦闘力は知っている。相当な実力者であり、全員が同等だとすれば、それこそ一軍に匹敵する。それをひとりで相手をする、と?
「サクヤ様、本当に1対6なのですか?」
トモエもサクヤに確認する。
トモエとシズカは、イストール戦においてリュウヤの戦いを目撃している。
まだ覚醒直後であったが、その戦いは凄まじいものがあった。だが、龍人族の戦士6人同時というのは・・・。
しかも、リュウヤの側付きということで、優秀な者をつけているのだ。その6人相手は、さすがにリュウヤに分が悪いのではないか。それがトモエの見解だ。
そして、闘いが始まる。
6人はリュウヤを中心にして散開する。
シュウウとカスミのふたりは、リュウヤを挟むようにしてやや距離をとっている。そして同時に矢をつがえ、放つ。
それを合図に他の4人も動き出す。
矢はそれぞれ頭部と胴体を狙って飛んでくる。そこに四方から4人が間合いを詰めてくる。
これで終了。
誰もがそう思っただろう。次に現れた光景に、皆が目を疑う。イコマが弾き飛ばされ、タカオは地に這い蹲り、イブキとトウウの短槍は空を貫き、リュウヤはその上に立っている。
一番驚いているのは、闘っている当の6人だろう。だが、驚愕している間にイブキとトウウは一撃を受け、跪く。
「なにが起きたんだ?」
トモエが唖然として呟く。
「まず、イコマのところに自分から飛び込み、受け止めようとした盾ごと吹き飛ばした。そして、突っ込んできたタカオを一撃を与えて昏倒させる。そこまでだな。私に見えたのは。」
エストレイシアが言う。
「まだ終わるには早すぎるぞ?」
そう、手合わせはまだまだ始まったばかり。リュウヤが
浮かべた笑みに、6人は自分たちの目論見の甘さを痛感した。
1対6。
人数としては圧倒的に不利。だが、その間の実力差はとてつもなく大きかった。
一時間後、6人はボロボロになって倒れこんでいた。
そこでやっと、サクヤから終了宣言が出されたのだった。
夜の更新、今日はできないかも、です