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龍帝記  作者: 久万聖
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 潰されたリュウヤは、自身の居室に運ばれていた。


 深夜、リュウヤは自身の顔に触れる手の感触に目を覚ます。この手は・・・


「サクヤ、か?」


「はい、リュウヤ様。」


 穏やかなサクヤの声。昼間の険はない。そのことにホッとする。

 身体を起こし、サクヤを隣に座らせる。


「すまなかった、サクヤ。」



 何に対して謝っているのだろう?だけど、サクヤと話をするには謝罪から始めなければならない、そんな気がする。


「いえ、私の方こそ申し訳ございませんでした。」


 リュウヤに頭を下げるサクヤ。


「つまらないヤキモチから、あのような態度をとってしまいました。」


「いや、ミーティアに関しては、サクヤに相談してから決めるべきだった。エストレイシアの発言は、自分にしても予想外だったよ。」


 帰還前に似た発言があったが、冗談としか受け止めていなかった。今でも、どこまで本気なのかわからない。


 "王ならば妃がひとりだけなどという法はない"とは、かつてエストレイシアが言った言葉だ。たしかに現代の地球の王制の残る国では、一夫一妻制を規定している国のほうが多いだろう。ただし、近世以前であれば、その限りではない。側室を設けて子孫を残すよう、求められていた時代もある。この世界は、後者の方なのだろう。だが、それでも問題はある。それは、リュウヤに生殖能力があるのか?また、異種間での交配が可能なのか?である。


 前者についてなら、性欲はあるし反応もあるから、使用はできるだろう。後者になると、リュウヤにもわからない。そもそもが、リュウヤ自身がどういう種族になるのかが不明なのだ。


 本来の肉体を失って、魂のみが召喚された。シヴァに名をつけたことで復活し、肉体を得たが、この場合はどういう位置付けの種族になるのか?シヴァと融合したことで得た"魂の記憶"を辿っても、名をつけて生き残った2人が子を成したという記憶はない。


 そこまで考えて思わず苦笑する。子を成せるかどうかよりも、今はサクヤの気持ちにどう応えるのか、それが問題だろう。以前は、もう少しこの国作りが落ち着いたらと、そう話した。いや、違うかな。国作りを理由に先延ばしにした、それが正解だ。


「サクヤ。」


 リュウヤはサクヤに向き直る。


「はい。」


 サクヤもまた、リュウヤに向き直る。


「結婚しよう、サクヤ。」


 サクヤは何を言われたのか、理解できていないかのように、ポカンと口を開けている。


「すぐに、というわけにはいかないけど、まずは婚約をはっきりとみんなに宣言しよう。」


 続く言葉に、ようやく理解してきたのかサクヤの表情が喜びに満ちていき、リュウヤに抱きつく。


「嬉しいです、リュウヤ様。どう言っていいのかわからないくらい。」


 リュウヤもまた、サクヤを抱きしめる。

 そういえば、サクヤをこんな風に抱きしめるのは初めてだ。サクヤから立ち昇る香りが心地良い。


「サクヤ。」


「はい、リュウヤ様。」


 互いの名を呼び、見つめる。

 リュウヤの左手の指がサクヤの顎に触れ、少し上を向かせる。そして、互いの唇が触れる。

 唇が離れると、サクヤの瞳が潤んでいる。

 リュウヤはサクヤを抱きしめたまま、ベッドに倒れこむ。


「リュ、リュウヤ様!?」


 サクヤの慌てたような声。


「このまま、抱きしめていたい。」


「は、はい。」


 サクヤは目を閉じて覚悟する。ここで"初めて"を迎えることを。

 が、サクヤにとって意外なほどの時が過ぎても、リュウヤはなにもしない。恐る恐る目を開くと・・・。


 リュウヤは眠っていた、サクヤを抱きしめたまま。

 残念なような、ホッとしたような気持ちになる。

 リュウヤの頰を抓るが、リュウヤは目覚めない。

 クスっと笑うとリュウヤの唇に自分の唇を押し当てる。


「おやすみなさい、リュウヤ様。」


 サクヤは、リュウヤの腕の中で眠りに落ちた。


ふたりの関係、一歩前進。

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