始源の龍
始源の龍との対面です。
巫女姫に促され、扉の中へ踏み出す。
強烈な異臭。
なにかが腐ったような、そんな腐臭だ。
扉が閉まり、明かりが灯される。
そして、そこに居たのは巨大な生物。
「お連れしました。」
巫女姫がその巨大な生物に話しかける。
その巨大な生物は頭をもたげ、こちらを見たようにみえる。みえるというのは、どうも焦点が合っていないようだからだ。そして、もたげた頭も力なく落ちる。
相当に衰えているようだが、自分に何かできるとは到底思えない。
"見苦しいところを見せたな、異界の者よ"
声ではなく、直接、脳に届いているようだ。一種のテレパシーというやつなのだろう。
"突然、このような世界に召喚され、さぞや戸惑っていよう"
戸惑っているのは事実だが、その前に聞きたいことがある。
「この娘はどうなる?」
なにを言っているのかわからない。そんな反応が返ってくる。なので、もう一度、はっきりと質問をする。
「俺の魂の依代となった娘は、どうなるんだ?」
始源の龍は、自分をじっと見ているように見える。
この中の明かりに目が慣れて来たからか、その目が白く濁っているのがわかる。人間でいうならば、白内障というやつだろう。そして、自分の視界の隅に捉えている巫女姫は、驚いた顔をしている。そんなに驚くことだろうか?
"自分のことよりも、依代の娘のことか"
始源の龍も、驚いていたようである。
"その娘、長くてあと3日。あと3日でその娘の魂は滅する"
それまでに決断をしなければ、この依代の少女は本当の意味で生贄になる。
「巫女姫、申し訳ないけど、二人にさせてもらえないかな?」
まだ依代の少女が死んだわけではない、そう知ってホッとしているように見える。
「わかりました。」
巫女姫は、扉の外へと出て行った。