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龍帝記  作者: 久万聖
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エルフたち

 エルフは、光の神ユリシーズを父神とし、森の神ツアラを母神とする。両神が交わった結果、生まれたのがエルフなのだという。


 それがゆえに、エルフたちの信仰する神は光の神ユリシーズと森の神ツアラとに二分される。


 そのこと自体には、なんら問題はない。ただ、エルフたちの中に人間と交流の深い者たちがいる。その交流相手に光の(ユリシーズ)の狂信者がおり、それに引き摺られた結果なのだという。


「ただ、引き摺られたのか?」


 リュウヤが問う。


 相対的少数派に引き摺られ、判断を誤ることはあり得ない話ではない。戦前の日本などはその典型だろう。相対的少数派のはずの軍部に引き摺られ、それをマスコミが煽り、その結果として理性的な判断がくだせなくなる。大雑把に言えば、それが大日本帝国が対米戦争に突入していった姿だ。


 ならばエルフたちは?


 白の教団とかいう狂信者集団に毒された、一部のエルフにより引き摺られた。そこまではいい。そこから先は?戦前の日本の場合、それなりに発達したマスメディアの存在があるが、エルフたちにそれがあるとは思えない。


 狂信者の狂熱が伝染する要素が見られないのだ。


 ならば考えられることはなにか?エルフたちの弱味を握られた、そう考えるのが妥当だろう。その弱味とはなにか?

 エルフたちが戦わざるを得ない状況に追い込むほどの弱味。おおよその見当はつく。エルフたちにとって重要な秘宝か、それとも・・・。

 そこへスティールとイコマが入ってくる。

 そして、スティールがエストレイシアになにやら耳打ちをする。

 エストレイシアはスティールになにやら指示を出す。そしてリュウヤに向けて発言する。


「リュウヤ殿。幾人か龍人族の方々をお貸し願いたい。」


 その言葉でリュウヤは全てを理解した。


「イコマ、アカギとミカサを呼べ。」


 イコマはリュウヤに一礼すると、部屋を飛び出す。

 数分後、アカギとミカサを伴いイコマが戻ってくる。


「アカギ、ミカサ。お前たちの班はこれよりエストレイシア殿の指揮下に入り、出撃せよ。」


 そして、リュウヤはエストレイシアに声をかける。


「10人いるが、まだ不足かな?」


「いえ、十分すぎる戦力です。」


 エストレイシアはリュウヤに一礼する。

 アカギとミカサは、事情がつかめていないようだ。

 "出撃理由と内容は、エストレイシア殿より説明があるだろう。"

 そう判断すると、


「リュウヤ陛下。勅命承りました。」


 そしてエストレイシアに向け


「我らの力、存分にお使いください。」


 それぞれに返答する。

 その言葉にエストレイシアは満足し、出撃命令を出した。



 エストレイシアらが出撃した後も、リュウヤらはエルフたちに向き合っていた。


「お前たちが戦うに至った理由、話す気はないか?」


 リュウヤが再び問いかける。

 だが、返答はない。

 リュウヤは注意深くエルフたちを探る。なにか呪いのようなものをかけられているのか?それとも、内通者でもいて、そこから自分たちが話したことが暴露ることを恐れているのか?

 呪いのような魔力反応はない。ならば後者か。

 そして、確信する。


「人質でも取られたか。」


 エルフたちがビクッと反応する。

 やはり人質か。


「その話はしたくなさそうだな。」


 そう言うと、ホッとしたように安堵の溜息が漏れる。

 次の瞬間、再びエルフたちは凍りつく。


「白の教団とはなんだ?」


 友好関係にあるイストール、現在のところ支配下にあるパドヴァ。そのどちらからもその名を聞いたことが無い。無論、この世界に来てわずか半年あまりだから聞いたことが無い、その可能性もある。

 今後、敵対する可能性がある、いや極めて高い連中のことを知る必要がある。

 エルフたちは互いの顔を見合わせるだけで、話そうとはしない。

 その状態が10分ほど続く。

 苛立ちを隠せなくなったバトゥが立ち上がってなにかを言おうとした時、リュウヤが右手を挙げて制する。


「あれも話したくない、これも話したくないでは、なにも進まないな。お前たちの言い分を聞こうと、この機会を作ったのだがそれも無駄なことだったようだ。」


 エルフたちの顔は青ざめている。だが、それでもなにも話そうとはしない。


「捕らえた者たちは全員殺す。お前たちを含めて、な。ああ、お前たちは一番最後だ。ひとりひとり引き出して、順番に殺すとしよう。ゆっくりと、時間をかけて。その様子を存分に楽しむといい。」


 リュウヤは、言葉に圧を込めて宣告した。

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