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龍帝記  作者: 久万聖
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終戦、そして・・・

 エストレイシア指揮下のデックアールヴたち、その働きは"凄い"の一言だった。


 敵陣の弱いところを知っていたのではないかと、そう思いたくなるほどの指揮ぶりだ。


陳慶之(ちん・けいし)"注1.かよ。」


 思わずリュウヤが声を漏らしたほどである。

 もっとも、陳慶之は個人の武勇はからっきしだったそうだから、エストレイシアとは全然違うだろう。



 残ったエルフたちをあっさりと駆逐すると、エストレイシアはリュウヤのもとにやってくる。

 下馬するとリュウヤに跪く。


「リュウヤ殿。自ら援軍としてお越しいただけたこと、感謝いたします。」


「礼には及ばない。なにせ、リョースアールヴとドワーフからも援軍要請があったのだから。」


 リュウヤの言葉に軽く驚きを示す。


「双方からも、ですか?」


 リュウヤは頷くと、


「同時に三者と戦う。そのありえないことをやらかしているんだよ、今回のエルフは。」


 エストレイシアの困惑を理解しているように、話す。


「ならば、双方の援護に行かねば・・・」


「リョースアールヴのほうは、部下が片付けた。これから、ドワーフを攻撃している部隊の背後に回り、挟撃する。」


 リュウヤのその言葉に、エストレイシアは不敵な笑みを浮かべる。


「その先陣は、私たちにお任せください。」


 リュウヤはその申し出を受けることにした。



 ドワーフたちは坑道という地の利を活かし、鉄壁の防御を見せている。

 縦横に巡らされた、まるで迷宮のような坑道により、エルフは数の有利を活かせず、また、崩落を恐れて魔法を使うことにも躊躇いをみせる。

 そうなると、ますますドワーフの術中にはまることになるのだが、エルフたちにとって他に手段がない。手詰まり状態に陥る。


 そのエルフたちの背後が喧騒に包まれる。

 デックアールヴの襲撃を受けたのだ。それを見たドワーフが、今までの専守防衛から反撃に転じる。

 エルフたちは、ここに来て遂に全面降伏へと至った。



 降伏したエルフたち。

 その主要な者たちは、リュウヤたちの前に引き出される。

 皆、一様に項垂れており、その顔からは精気を感じられない。

 リュウヤとバトゥ、ドゥーマ、エストレイシア、ルーディが並んでいる。


「言いたい事はあるか?」


 リュウヤが言葉を発する。

 それに対し、エルフたちは沈黙している。

 リュウヤたちもまた、エルフたちの言葉を待つように、沈黙する。

 暫しの沈黙。


「話す気にはならんか?エルフたちよ。」


 リュウヤはエルフたちに話すよう促すが、それでも彼らは沈黙している。

 再び、暫しの沈黙。

 リュウヤは軽く頭を振ると、エストレイシアに目配せをする。それを受け、


「"白の教団"なる、光の神と称する神の狂信者どもが暗躍していた、その形跡がございます。」


 デックアールヴは、リョースアールヴとともに調和者フォリアによって生み出された種族である。調和・融合させることをその使命とするリョースアールヴに対し、デックアールヴはそれを邪魔する者、調和のためには過剰な力を減殺させることが使命であり、そのために戦いに適した能力を持っている。その使命を果たすため、デックアールヴは巨大な情報網を構築している。その情報網から導き出されたこと。それが"白の教団"なる狂信者集団の暗躍だった。


 エルフたちに動揺の色がみえる。


 そして諦めたように、


「その通りでございます。」


 エルフたちのリーダーと思しき者が話し始めた。

注1、陳慶之。(ちん・けいし)中国南北朝時代、南朝梁の将軍。

梁の武帝の命令により、亡命してきた北朝の皇族元顥(げんえい)を助けて北伐を行う。

わずか七千の騎兵で、迎撃に現れた北魏軍七万を一日で撃滅する。

次に二万の兵が籠城する城を、こちらも一日で陥落させる。

さらに十五万の北魏軍を二十日間の激闘の末に退ける。

ついでにノコノコと遅れて戦場に到着した敵の援軍二万四千を潰走させる。

北魏の領土に侵攻してから百四十日、四十七戦四十七勝、陥落させた城塞の数は三十二!!


トンデモ戦記のようですが、全て史実です!!

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