表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍帝記  作者: 久万聖
54/463

愚者?

 ドワーフの救援要請、「敵がエルフだったら笑うぞ」と思っていたら、やはりエルフだった。


 正直、乾いた笑いしか出ない。


 二正面作戦なら、まだわかる。なのに三正面?


 旧日本軍参謀かヒトラー並みの軍事音痴。いや、エルフってそんなに馬鹿だったのか?あちらの世界では、もっと理知的で思慮深い種族として描かれていたはずだぞ?


 なんか、あれだけ両アールヴから話を聞き、悩みながらも検討していたのが、馬鹿馬鹿しくなる。


 ドワーフを攻めるにしても、両アールヴを殲滅し、ある程度の休息をとって体力を回復させてからだろう、普通なら。ドワーフを攻撃するとなれば、坑道での戦いになるし、いわば一種の攻城戦だ。攻城戦の場合、攻める側は防衛側の兵力の3倍は最低でも必要とされる。


 まあ、そもそもエルフがドワーフを攻撃するメリットが思い浮かばない。住むエリアが完全に違うのだから。もっとも、メリットが無くてもやるのが狂信者というものではあるが。


 だが、本当にそうなのか?そういう疑問も残る。集団洗脳されていたとしたら?もしくは魔法的な力で精神支配をされている可能性は?


「みんなに確認したいんだが、エルフっていうのは馬鹿な集まりなのか?」


 刺激的な物言いではあるが、その言葉に皆が考えこむ。


「ヴィティージェ、お前の持つエルフの印象は?」


「はい、他を低くみる傾向が強く傲慢ではありますが、理知的であり、また他を干渉せず、干渉させず。そういったところでしょうか。」


「ジゼル、君は?」


「ヴィティージェ師が仰られたことに加えるなら、精霊を扱うことに長けた種族でしょうか。」


 他の者たち全員に聞くが、みんなの持つエルフの印象は似たり寄ったりだ。そして、それが今回のことにどう結びつくのか?それが知りたそうである。


「理知的な者たちが、リョースアールヴ、デックアールヴ、ドワーフの三者に同時に仕掛けるのか?」


 言われてみればそうだ。本当に理知的であるならば、各個撃破するはずだ。

 リュウヤはドワーフの使者ー名はラダというーに質問する。


「あの山岳地帯のドワーフ、その戦士はどれだけいる?」


 ラダは少し考え


「ざっと3万はいますな。」


 そう答える。

 ドワーフの住む街、それは地下要塞とでもいうべきものだろう。その地下要塞に屈強なドワーフの戦士。


「あくまでも目安だが、兵学の基本として城塞を攻める場合、攻め手側は守る側の最低3倍の兵が必要だという。そうなると、ドワーフの相手だけで9万の兵が必要になる。そんなに押し寄せてきたのか?」


 みんながそれぞれの顔を見合わせる。両アールヴへの侵攻を含めれば、10万は超えなければならなくなる。


「いや、そんなにはいなかったな。」


 ラダの発言に、アールヴたちも頷く。

 そんなに集めていたら、奇襲などできるわけがない。


「他に、なにか気づいたことはないか?」


 リュウヤはさらに問いかける。


「そういえば・・・」


 スティールが思い出したかのように発言する。


「やけに鬼気迫るというか、強引な攻撃の仕方だったというか・・・。」


「言われてみれば、そうだったな。」


 ラダが肯定する。


「あまりの凄まじさに、援軍を要請しなければならんと、そう思うほどだった。」


 ラダの感想を聞きながら、リュウヤはその脳をフル回転させる。そして、立ち上がると窓際に向けて歩きだす。


「少し窓を開けさせてもらう。頭を冷やしたい。」


 開けた窓から、冷気が部屋に流れ込む。

 20数えるほどの時間、リュウヤは窓を閉じ振り返る。


「エルフたちは攻撃を仕掛けたというより、攻撃をせざるを得なかったんじゃないのか?」


「それはどういうことでしょうか?」


 フェミリンスが興味深そうにリュウヤに問う。


「幾つかのケースを考えてみたんだが・・・」


 集団洗脳。集団洗脳されたからといって、元の理知的なところまで無くすことができるのか?中には、そういうことに陥る者がいるかもしれないが、全てがそうなることはあり得ない。

 魔力等による精神支配。それだけの膨大な魔力を扱える者がいるのか?しかも、エルフは抵抗力が強いという。魔力の宿る道具を使うにしても、それだけの数を集められるのか?

 そうなるとなんらかの手段によって、エルフたちを戦闘に追い込んだものがあるのではないか?


「どうかな?」


 かなりざっくりと説明し、みんなに意見を求める。


「たしかに、一理あるとは思いますが・・・」


「なんらかの手段というのがわからないことには・・・」


「手段、例えばだが・・・」


 エルフたちにとってとても大切なものであったり、または家族や子供を人質にとられるというのもあるかもしれない。


「人質・・・」


 フェミリンスが呟く。

 無論、可能性でしかない。


「まずは向こうに行って、エルフを何人か捕らえ、尋問するとしよう。」


 まずはドワーフの拠点に合流する。

 あとは、エルフを何人か捕らえて尋問する。その尋問内容によって方針を調整する。

 そんなところでいいだろう、今は。


「では、行くとしようか。」


 リュウヤはゆっくりと歩きだす。

 リョースアールヴの救援に、デックアールヴへの応援。ドワーフからの援軍要請に応え、出撃が決定された。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ