両アールヴ、そして・・・
デックアールヴが会議室に現れたのは、10分ほど経ってからだった。
ミカサに連れられてやってきたデックアールヴの戦士は、リュウヤとシヴァの前に来るとひざまづき、
「私はスティールと申します。我らの族長より、龍人族の庇護下に入らせていただきたい、と。」
単刀直入だな、と苦笑する。
「その判断は尊重したいが、そう判断するに至った理由をお聞かせ願いたい。」
「庇護下にはいらせろ」とは、それを受け入れた場合には援軍を派遣する必要がでてくる。
なにも知らない状況で援軍を派遣するのは危険だ。単に敵を増やすことになりかねないし、敵の規模を知らなければ兵力の逐次投入という、最もやってはならないことをしてしまいかねない。また、リョースアールヴとの兼ね合いもある。どちらを優先するか、それも決めなければならない。
「わかりました。では、我々の状況をお話しいたします。」
スティールは話始めた。
大まかな流れは、リョースアールヴと変わらない。
ただ、デックアールヴはエルフの動きを掴み、迎撃準備を整えていたこと。ドワーフと同盟を結び、非戦闘員をいち早く避難させていたこと。それらが違っていた。
龍人族との接触が遅れたのも、ドワーフとの同盟締結と非戦闘員の避難を優先していたためであるという。
いくつかの疑問がこれで解けた。
「最悪を想定して、それに対処するための準備をする。見事なものだ。」
言うは易く、行うは難い。リュウヤは素直に称賛する。
「ありがとうございます。エストレイシア様も、そのお言葉を聞けば喜ばれるでしょう。」
エストレイシアというのは、"戦巫女"とも呼ばれるほどの存在なのだという。デックアールヴの兵権を握り、戦いの指揮を執る。自ら武器をとり、最前線で戦うこともあるというのだから、恐れ入る。
「そのエストレイシア殿は、エルフの動きに関してはなにも言っていなかったのか?」
エルフの戦い方というのがよくわからない。両アールヴに同時に攻撃を仕掛ける。それが悪いとは言わない。それができるだけの兵力があるのならば。同時に攻撃することで、連携を取らせないというメリットがある。ただし、圧倒的な兵力差があるならば、だが。
圧倒的な兵力差があったとしても、自分ならそういう戦い方はしない。一方に対しては牽制程度にして、一方に圧倒的な兵力を叩きつける。その後に、残った敵を潰せばいい。
エルフのことはエルフでどうでもいい。こちらとしては、リョースアールヴ、デックアールヴのどちらが緊急性が高いか。それを検討する必要がある。
フェミリンス、スティールの双方から話を聞き確認する。
そして、リョースアールヴの救援を優先し、その後にデックアールヴを救援に向かう。
そう決定を下そうとした時、この日3度目の緊急報告がはいる。
「ドワーフより援軍要請です!!」